やっぱり旧札? 新札は?「香典のお札」マナーと注意点
null香典は旧札にこだわらなくてもOK
昔は「急な知らせで新札を用意できなかった」との意味から、香典には旧札を使用するしきたりがありました。
新札の場合はあえて折り目をつけてから包むように、ともいわれていましたが、情報化社会の現代では訃報の連絡も早く届くように。ATMなどでお金の引き出しも手軽にできますし、とくにお札の新旧にこだわらなくても大丈夫です。
香典は管理上、いただいたあとすぐに開封して封筒と現金を分けてしまうことが多く、旧札か新札かまで細かくチェックされることはほとんどありません。
ただし、破れていたりセロテープで補修されているような傷みの激しいお札は、お別れの場にふさわしくないので使うのは避けましょう。
香典にありがち!「お札の入れ忘れ」に注意
香典で意外と多いのが、お札の入れ忘れ。あとから遺族側が気づいた場合でも、参列してくれた方に対して「香典が入っていなかった」とはなかなか言い出せないもの。
必ず中身を確認してから持参しましょう。5,000円札と1万円札も見間違えやすいので、内袋の金額を書き違えないように注意してください。
四十九日に一周忌…「法要」で包むお札と金額
null厳密には「法要では旧札」がマナー、新札でも問題なし
葬儀と同じく法要の際の香典も、新札と旧札のどちらを使っても構いません。ただマナーを細かくいえば、お祝い事と区別するためには旧札がいいとされています。
法要の種類と包む金額
法要は、一般的には四十九日、一周忌、三回忌が行われ、七回忌は行わない場合もあります。このほか、四十九日を過ぎてから初めて迎えるお盆に“初盆”の追加法要があります。
法要では親戚が集まって会食をするので、1万円~3万円を包むのが一般的。ただケースバイケースなので、不明な場合は喪主だった人や近親者に尋ねるといいでしょう。
「薄墨」で書かないとダメ? 香典袋や内袋の文字
null薄墨で悲しみを表すけれど、「普通の墨」や「硬筆」も可
香典袋や内袋の文字は「硯(すずり)に涙が落ちて墨が薄くなってしまった」「墨が涙でにじんでしまった」との意味から、葬儀当日に渡すものはどの宗教でも薄墨を使うことが望ましいとされています。
けれど「御霊前or御仏前?“香典袋の書き方”マナー&金額まで丸わかり」でお伝えしたように、自宅に薄墨がなければ、普通の墨を使ってもOK。
また、香典袋は薄墨の毛筆、住所・氏名などを記す内袋は書きやすい硬筆(黒のボールペンなど)と使い分けても問題ありません。
なお、法要の香典の場合は、「故人を偲び、心を込めて墨をすった」という気持ちを表現する意味で普通の濃い墨を使うのが正式です。
表書きが印刷で薄墨じゃないとき…墨の色は合わせるべき?
表書きが印刷されている市販の香典袋の場合、正式には薄墨を使う「御霊前」などの文字でも墨の色が濃い場合があります。名前は薄墨で書くとなると少しちぐはぐな印象になるのでは……と思う方もいるかもしれませんが、基本的には、墨の色を表書きに合わせても合わせなくてもどちらでもかまいません。
重要なのは見やすくはっきりした文字で、氏名・住所・金額が書かれていることです。
薄すぎる墨を使ったり、達筆すぎて読めなかったりするのは遺族に手間をかけることになるので避けましょう。
表書きも内袋も薄墨で統一したい場合は自分で書く
表書き、名前、内袋もどうしても薄墨で統一して香典袋を書きたいのに、葬儀当日に濃い墨色の香典袋しか売られていない場合は、いっそ表書きを自分で書いてもいいでしょう。
文字の入っていない不祝儀袋を購入し、水引(みずひき)の上に表書きを、下にはやや小さめにフルネームで名前を記しましょう。“のし”はつけないのが決まりです。
金額は、線の付け足しで他の漢数字にならない「旧字体」で
金額は、壱(一)、弐(二)、参(三)、阡(千)、萬(万)というように漢字表記にします。
必ずしも旧字体にする必要はないのですが、いずれも線を付け足すことで他の漢数字になってしまうことから、フォーマルシーンでは旧字体が好まれています。
香典の文字を書き間違えてしまったら…
表書きや名前を書き間違えてしまった場合は、もう一度香典袋を用意して書き直しましょう。
内袋の裏に書く住所を少しだけ間違えた程度であれば、定規で丁寧に二重線を引いて訂正しても構いません。もしくは内袋を使わず、住所、氏名、金額を香典袋の裏側に記してもいいでしょう。
重要なのは「住所や名前をはっきり書く」こと
香典袋で最も重要なのは、故人とどういった関係の人がいくらの香典だったかを遺族にわかるようにすること。
遺族は葬儀のあとに香典返しや挨拶状を送ったりするため、香典袋はいわば“弔問客の名刺”のようなものです。表書きには名字だけではなくフルネームをしっかりと書き、内袋の住所欄には郵便番号も忘れずに記すことが大切です。
いかがでしたか? 昔から伝えられているマナーも、時代にあわせて徐々に変化しているよう。必要なマナーは守り、遺族に負担をかけずに故人を弔いたいですね。
【取材協力・監修】
葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント
吉川 美津子(きっかわ みつこ)
大手葬儀社、大手仏壇・墓石販売店勤務を経て、専門学校にて葬祭マネジメントコース運営に参画。現在は葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントとしての活動に加え、医療・介護と葬送・供養の連携を視野に葬送・終活ソーシャルワーカー(社会福祉士)としても活動している。
共同監修『葬儀・相続 手続きとお金』(扶桑社)、共著『死後離婚』(洋泉社)、著書『お墓の大問題』(小学館)など。