「のし」「水引」に関する基礎知識
nullQ1.そもそも「のし」の意味とは?
A1.もともとは「のしあわび」。慶事の贈り物につけます
「“のしあわび”とは、あわびをむいて伸ばし、天干しにしたもの。栄養価が高く、長持ちすることから、長生きの印としてお祝い事の高級贈呈品として用いられていました。
それが時を経て、紙で作られた“折りのし”や印刷された“のし紙”に変化していきました」(以下、「」内は岩下さん)
Q2.「水引」の意味・種類は?
A2.大きく分けて「結び切り」と「蝶結び」の2種類があります
「古代の日本では“魂を結び入れる”という結びの信仰がありました。そこに魂を込めるという意味で贈り物に結び目を作ったものが水引です。
水引には、一度結んだらほどけない“結び切り”とほどける“蝶結び”の2種類があります。
結び切りの仲間として、あわび結び(あわじ結び)・輪結び・老いの波があります。
基本的に、“結び切り”は一生に一度の結婚や葬儀、“蝶結び”は何度あってもよい出産祝いやお中元、お歳暮に使われます」
「入学祝い」ののし袋・のし紙の選び方・表書き
nullQ3.入学祝いののし袋・のし紙はどれを選べばいいですか?
A3.基本は「蝶結び」。ただし関西では「あわび結び」を使う地域もあります
「入学祝いは、何度あってもよいお祝い事なのでほどける“蝶結び”を選びます。ただし、関西では“あわび結び”を使うところもあるようです。
慶事の水引は赤白や紅白、金銀、金赤など華やかな色を使います」
Q4.表書き「上の段」の書き方は?
A4.「御入園御祝」「御入学御祝」など。メッセージでも構いません
「上記のほかに“祝御入園”“祝御入学”などでもいいですが、4文字を嫌う方もいらっしゃるので、できましたらその場合は祝の後に1文字分のスペースを入れて、5文字になるようにしてください。
お金を贈る際、“これに使ってほしい”という希望があれば“お洋服料”“バッグ料”などと書いてもいいでしょう。
また、“しあわせがたくさんあつまりますように”など子どもの幸せを願うメッセージを書くのもおすすめです。
実は、上の段は皆さんが思っていらっしゃるよりも割と自由なんです」
Q5.表書き「下の段」の書き方は?
A5.苗字のみでもフルネームでもどちらでも構いません
「贈り物や手紙などで自分の名前を書く際、基本的に目下には“苗字のみ”、目上には連名であっても“フルネーム”という決まりがあります。
入学祝いの場合、対象は親ではなく、その子どもですので、苗字のみ、もしくはフルネームどちらでも大丈夫です」
Q6.表書きは毛筆で書いたほうがいい?
A6.毛筆もしくは筆ペンが好ましいです
「慶事の際は、文字を太く、墨色を濃く書くことが縁起がよいとされていますが、サインペンやボールペンではなかなか難しいですよね。
ですので、毛筆もしくは筆ペンで書くことをおすすめします」
「入学祝い」の中袋の書き方・お金の入れ方
nullQ7.中袋の表面(金額)の書き方は?
A7.大字(だいじ)が正式ですが、普通の漢数字でも構いません
「大字とは、改ざんなどを避けるために漢数字の“一・二・三”を“壱・弐・参”などと表記する文字のこと。しかし現代の、特にお祝い事については、水増しされるなどのリスクはほぼありませんので、普通の漢数字でもまったく問題ありません。
冒頭に“一、”や最後に“也”が書かれているのをよく見かけますが、どちらもいりません。
“一”は贈り物が複数ある場合に使うものですし、“也”は“~である”という意味なので不要です」
Q8.中袋の裏面の書き方は?
A8.封筒の継ぎ目の向かって右下に住所、左下に名前を書き入れます
「封筒の継ぎ目の向かって右下に住所、左下に名前の順で書き入れます。マナーにおいてはさまざまなシーンで上座・下座がありますが、この場合は書き入れづらい継ぎ目が下座になり、そこに自分の住所・名前を書くことでへりくだることになります」
Q9.中袋へのお金の入れ方は?
A9.相手が利き手で紙幣を取った時に、正面を向くように入れてください
「相手が封筒から利き手で紙幣を取ったときに、表側(肖像画が印刷されているほう)で上下が正しい向きになるように入れてください」
Q10.中袋がない場合のお金の包み方は?
A10.着物の合わせと同じ「右前」にして包んでください
「着物でいう右前とは、向かって右の襟が手前になる合わせ方。慶事の時の中包みも、同じ向きで包んでください。基本的な手順としては、紙幣を真ん中に置き、左・右の順に折ってから上下を折ります。
また、お札の向きは表側の“日本銀行券”という文字が上になるようにして入れましょう」
「御祝儀袋」のたたみ方・渡し方
nullQ11.ご祝儀袋の裏側の正しいたたみ方は?
A11.先に上側を折ってから下半分を折ります
「慶事用は“幸せが受け止められますように”という意味を込めて、お金の長さにあわせて、上を折ってから、
反対に不祝儀袋は“不幸が再び来ないように、上から下に流す”という意味で先に下を折ってから、上を折ります」
Q12.ご祝儀袋を渡す時、ふくさは必要ですか?
A12.必要です。袋のままお渡しするのは「はい、これ取って!」と強制的な意味になってしまいます
「神社の奉納品や婚約時の結納品が台に乗せられているように、お金や品物を贈る際は、台の上に乗せて相手にお渡しするのが基本マナーです。袋のまま直接手渡しすることは、相手に対して“受け取って!”と強制的な意味を帯びてしまいます。
ご祝儀袋をふくさで包み、出した時にそれを台代わりにして乗せて差し出すことで、相手に強制することなく、渡すことができます。
ふくさの包み方ですが、ご祝儀袋を中央において左・上・下・右の順で折りたたみます。
色は、慶事には朱色など明るい色を、弔事には黒など地味な色を選んでください。紫は両方に使えるハイブリッドな色です」
いかがでしたか?
お祝い事は相手に喜んでもらうことが何より大切。
ご祝儀袋などの選び方、正しい書き方・折り方など1つひとつのステップを慎重にこなして、贈る人・もらう人みんながハッピーになれる“入学祝い”にしたいですね!
【取材協力・監修】
岩下宣子(いわしたのりこ)
『現代礼法研究所』代表、NPOマナー教育サポート協会理事、マナーデザイナー。1985年の同研究所設立後、ビジネスマナーや生活に密着したマナーについて、企業や団体などを対象に研修、講演、イベントを開催。また、マナー教育の第一人者として、メディア出演や数多くの書籍出版等により、多くの人々にマナーの心や本質を伝えている。
【参考】