『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに“お目にかかる”の使い方についてうかがいました。
「お目にかかる」の意味は?
null“お目にかかる”は、相手の視界に入ることを謙遜した表現であり、“会う”の謙譲語です。自分を主語として、目上の相手に会うときに使います。
ビジネスシーンでは「お目にかかる」はどんな時に使うといい?
nullビジネスシーンにおいては、顧客や取引先など、おもに目上の相手に対して使います。
例えば、アポイントの前には「お目にかかるのを楽しみにしています」という表現を、アポイント後には「お目にかかることができて光栄です」といった表現がよく使われています。
「お目にかかる」の例文は?
null続いて、“お目にかかる”を用いた例文をご紹介します。
・近いうちにお目にかかりたいのですが、いつ頃ご都合がつきますか。
・社員一同、◯◯様にお目にかかれることを楽しみにしています。
・お目にかかることができて、大変光栄です。
このように、謙虚にアポイントを取る時や、相手に会うこと、
「お目にかかる」の使い方の注意点は?「お目にかかりましたか?」はなぜNG?
nullちょっとややこしいのですが、“お目にかかる”は、相手の視界のことを指す“お目”という尊敬語が入っていますが、“会う”の謙譲語です。そのため、主語は基本的に自分や自分が所属する組織となります。
【「お目にかかる」のNG使用例】
・A部長は、Bさんにお目にかかりましたか?
→“お目にかかる”は謙譲語なので、目上の相手を主語として使うことはできない。「A部長は、Bさんに会われましたか?」「A部長は、
また、“~のお目にかかる”ではなく、“~にお目にかかる”となりますので、助詞の間違いにも注意しましょう。
「お目にかかる」と「お目にかける」の違いは?
nullしばしば、“お目にかかる”と“お目にかける”を混同している誤用が見受けられます。“お目にかける”は、“お見せする”と同義で、目上の相手に自分たちの商品を見せたり、新しいメンバーを会わせたりする時などに使います。
【「お目にかける」の例文】
・(営業担当が顧客に対して)新商品をお目にかけたいと思いまして、本日持って参りました。
“お目にかかる”=会う、“お目にかける”=見せる、と覚えておきましょう。
「お目にかかる」を言い換えると?
null続いて、“お目にかかる”の言い換え表現をご紹介します。
(1)お会いする
“お目にかかる”と同様に、“会う”の謙譲語です。わかりやすい表現なので、口語でもビジネスメールの中でも使うことができます。
【例文】
・本日は○○さんとお会いする予定です。
・一度、直接お会いして、詳しいお話ができれば幸いです。
(2)御目文字(おめもじ)
日常会話ではあまり聞かれることのない言葉ですが、まれに書き言葉の中で“御目文字(おめもじ)がかなう”という表現が見受けられます。覚えておくといいでしょう。他にも、“拝顔”(はいがん)、“拝眉”(はいび)といった表現が使われることがあります。
【例文】
・御目文字の上、ご相談できればと存じます。
→会って相談したいという意味。多くの場合、手紙の中で使われています。
今回は、“お目にかかる”の使い方を解説しました。
ビジネスシーンだけでなく、日常生活においても幅広く使うことができる表現です。大切な人と会う時に使ってみてはいかがでしょうか?
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。