子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

「ご査収ください」を使ってはいけないシーンは?正しい意味と使い方【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#1】

ビジネスメールの中で頻繁に使われている“ご査収”という単語。皆さんは、正しい使い方をご存じですか? 今回は、“ご査収”の意味やNG使用例についてお届けします。

解説して頂いたのは、たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「ご査収」の意味は?

null

“査収”とは、金銭や書類などを、よく調べて受け取ることを意味します。 “確認する” “受け取る”を一つの単語で表した言葉です。“査収”に尊敬の意を添える接頭語“ご”(御)をつけ、“ご査収”という形で使うのが一般的です。

「ご査収」はどんなシーンで使う?

null

ビジネスシーンにおいて、“ご査収”は、メールの中でよく使われています。

取引先や上司宛てに、メールで、相手の確認を要する請求書や見積書、企画書、人事考課表などを送るときに、「(金額、数字、内容を)確認して受け取ってください」というニュアンスを含めて使います。

メールの文章の中で頻出する言葉ですが、話し言葉ではそれほど頻繁に使われていません。例えば、FAXで請求書を送った後に電話で一報を入れるときなどには、もう少し平易な「ご確認ください」といった言葉を使うのが一般的です。

プライベートにおいては、地域活動やPTA活動など、敬語を使う相手との間で書類のやり取りが発生したときに使うことができます。

「ご査収」の例文は?

null

続いて、“ご査収”を使った例文を通じて使い方をチェックしていきましょう。

【「ご査収」の使用例】

・添付ファイルをご査収のほど、よろしくお願いいたします。

・請求書を送付いたしましたので、ご査収ください

ご査収のうえ、ご対応のほどよろしくお願いいたします。

・修正した見積書を送付いたしますので、再度ご査収のほどお願い申し上げます。

このように、相手の確認を要する書類を送るときに使います。

「ご査収」の使い方の注意点は?

null

先述した通り、“ご査収”は“確認して受け取る”の意味。金額や文言など、相手のチェックが必要な書類を送るときに使います。そのため、相手に参考程度に見て欲しい情報を送るときには“査収”という言葉は適しません。例えば、こちらからプロモーションの目的や好意で送ったカタログやサンプルなどについては“ご査収”という言葉ではなく、「お時間のあるときにご覧ください」「ご笑納ください」といった言い方をしたほうがいいでしょう。

【「ご査収」NG例(1)】

・弊社の新商品のカタログをお送りします。よかったらご査収くださいね。

→売り込みのために送る書類(相手に見る責任がない書類)に関しては、“ご査収ください”は適さない。

この場合「お時間のあるときにご確認いただけますと幸いです」「ご笑納ください」などと言うのがよい。

また、“査収”は、自分を主語にして使うことはほとんどないので、ご注意ください。

【「ご査収」NG例(2)】

・(「ご査収ください」の返信で)私が確かに査収いたしました。

→受け取ったときの連絡は「受領いたしました」などを使う。

「ご査収」を言い換えると?

null

ご査収ください 言い換え

続いて、“ご査収”の言い換え表現をチェックしていきましょう。

(1)「ご確認」

“ご査収”よりも平易な表現なので、日常会話やメールの中でよく使われています。

【例文】

・企画書をお送りいたしましたので、ご確認ください。

(2)「ご高覧」

目上の相手に書類などを“ご覧になっていただく”ことを意味する尊敬語。メールや書類などの書き言葉で使われています。

【例文】

・資料をご高覧いただければ幸いです。

(3)「お目通し」

資料や本に目を通してもらうこと、一通り見ることを意味します。会議に使う資料などを送ったときに使います。

【例文】

・会議資料を送付いたしましたので、事前にお目通しのほどお願い申し上げます。

(4)「ご検収」

納品された成果物に対して使われています。数があっているか、破れているものがないかなど、確かめたうえで受け取ることを意味します。

【例文】

・ご注文の品を納品いたします。間違いがないかご検収ください。

(5)「ご笑納」

相手から頼まれたわけではないけれども、おまけや好意によって贈り物をするときに使います。“よければ”“時間があれば”と謙遜するようなニュアンスが込められています。

【例文】

・お礼の品です。どうぞご笑納ください。

「ご査収ください」というメールが来たらどう返す?

null

取引先の相手から「ご査収ください」という文面で書類が届いた場合、以下のような返信が想定されます。

【返信の例】

・確かに受け取りました。

・受領いたしました。内容を確認次第ご連絡いたします。

相手から書類を確かに受け取り、これから内容を確認するという返信をします。その後、修正点や疑問点があった場合は相手に連絡をする場合もあるでしょう。

以上、国語講師の吉田裕子さんに“ご査収”という言葉の使い方を解説頂きました。

送付物の内容にかかわらず、どんなときでも“ご査収”という言葉を使っているケースもしばしば目にしますので、“確認して、受け取る”という本来の意味を意識して使ってみてくださいね。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載