お話をうかがったのは『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。“鑑みる”の意味や使い方、よくある間違い例についてお話をうかがいました。
「鑑みる」の意味とは?
null“鑑みる”(かんがみる)は、“鏡”が動詞に転じた言葉だと言われています。現代の日本語においては、先例や手本に照らして考えると言う意味で使われています。
「鑑みる」はどんな時に使うといい?
null「鑑みる」の例文は?
null続いて、“鑑みる”を使った例文をいくつかご紹介します。
【例文1】プロジェクトのミーティングにて
・前例に鑑みると、今回のプロジェクトはやや改善の余地があるように思います。
【例文2】会議にて
・現在、当社の業績は好調ではありますが、不安定な世界経済に鑑みると、決して楽観視することはできません。
【例文3】同僚同士の会話で
・新しく配属されたA部長はまだ部内の事情をよくわかっていない。問題の件については過去の事例に鑑みるべきだと思う。
「鑑みる」のよくあるNG使用例や注意点は?
null前述したように、“鑑みる”は“○○に照らし合わせてじっくりと考える”という意味があります。意味が似ているので、“考える”と同様の使い方をしている方がよく見受けられます。
“考える”の場合、「前例を考えると」というように、格助詞“を”を使います。
一方で“鑑みる”の場合は、「前例に鑑みると」。格助詞は“に”なので、注意が必要です。
【「鑑みる」NG使用例】
・先例を鑑みると、今期の売り上げ減少は一時的なものだと思われます。
→この場合、“先例に鑑みる”が正解
「鑑みる」を言い換えると?
null“鑑みる”の言い換え表現は、以下のようなものがあげられます。
・踏まえて
・~に基づいて考える
・熟考する
・慎重に検討する
今回は、“鑑みる”の使用例やNG使用例ご紹介しました。
“鑑みる”はきちんと考えたことをアピールする言葉です。使いこなすことができるようになれば、前例やルールが重視される職場で役立つ場面が訪れると思います。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。