『大人の語彙力 使い分け辞典』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに、間違いやすい敬語表現や、知っておくと役立つステップアップ敬語についてお話をうかがいました。
「ご容赦ください」にはどんな意味がある?どんな時に使うと便利?
null“容赦”というのは、相手を許すことを意味します。ビジネスシーンでは“ご容赦ください”という形で使われますが、許しを請うというより、迷惑をかけるかもしれないときや、相手の期待に添えないかもしれないとき、あらかじめ断っておくために使います。主にメールや書類の中で書き言葉として使われています。
【「ご容赦ください」の例文】
・当ご報告が遅くなりましたこと、何卒ご容赦くださいませ。
・行き違いですでにお手続きを完了されている場合は何卒ご容赦ください。
「ご容赦ください」のNG使用例は?
null自分に確実に非があり、心から謝罪しなければならない場合には最初の言葉が、“許して”を意味する“ご容赦ください”では、不適切です。例えば、企業の謝罪会見などで、仮に第一声が“ご容赦ください”だったら、炎上案件となる可能性もあります。
【「ご容赦ください」NG使用例】
・弊社の事情により、納品が1週間遅れる予定です。何卒ご容赦くださいませ。
→この場合、自分が所属する会社に非があるので、潔く非を認め、謝罪の言葉を述べる。
「ご容赦ください」の言い換え表現は?
null相手にかけるかもしれない迷惑や手間をあらかじめ詫びるとき、“ご容赦ください”がよく使われていますが、さらに丁寧な言い方もあります。相手や場面に応じて使い分けると良いでしょう。
メールや書類では、以下のような言葉に言い換えることができます。
御寛恕/ご海容・・・寛大な心で許す
あしからず・・・悪く思わないで欲しい
【「ご容赦ください」の言い換え表現例】
(取引先へのアナウンス)
・弊社の新年の営業開始は1月5日からとなります。あしからずご了承ください。
(取引先や上司に対し)
・休日にメールを送る失礼をお許しください。
(目上の相手への書き言葉)
・何卒御寛恕賜りますよう、お願い申し上げます。
・失礼の段、ご海容ください。
いずれも、こちらに大きな非があるわけでなく、こちらからの申し出を相手が受け入れてくれるであろうときに使います。
【正しく使えてる?これまでの「今さら聞けない大人の敬語講座」】
「幸いです」は目上に失礼!?「ありがたい」「助かります」は…【今さら聞けない大人の敬語講座vol.6】
「恐れ入ります」は万能に使える?「恐縮です」「痛み入ります」「かたじけない」の使い分け【今さら聞けない大人の敬語講座vol.7】
ステップアップ編!大人女性が知っておきたい表現「できません」の使い方
null依頼を断るとき、相手の気分を害さないよう、角の立たない言い方を選ぶのは意外と難しいものです。はっきりと“できません”と明言するよりも柔らかい印象を作りたいですよね。
その場合、“~しようとしてもできない”という意味がある“
【「できません」の言い換え表現例】
・営業時間外のお問い合わせにはお答え致しかねますので、ご了承ください。
・ご希望に添えず申し訳ありませんが、難しいかと存じます。
さらに、相手がねばり強く要求してきた場合には、「かえってご迷惑をおかけすることになっても申し訳ないので」といった断り方もあります。
今回は、“ご容赦ください”の意味やNG使用例を掘り下げました。
“許して”という意味に少し甘えがあり、
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。