今回は、『大人の語彙力 使い分け辞典』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに、ややこしい敬語表現や、知っておくと役立つステップアップ敬語についてお話をうかがいました。
「御社」「貴社」の使い分けは?例文は?
相手が一般企業の場合、御社、貴社のどちらを使っても構いません。
ただし、貴社は(キシャ)は、記者、汽車、帰社……と、同音意義語が数多くあるため、口頭では御社を用いた方が相手にとって聞き取りやすくなります。
【まとめ】書き言葉では、“貴社”“御社”どちらを使ってもOK。話し言葉では、“御社”の方が分かりやすい。
「弊社」「当社」「小社」の違いは?使い分けと例文
“弊社”“当社”“小社”は、どれも自分が勤務する会社を示す言葉です。ただし、微妙なニュアンスの違いがあります。
弊社・・・自分が勤務している会社を謙遜して言う言葉。
小社・・・自分が勤務している会社を謙遜して言う言葉。(主に書き言葉)
当社・・・自分が勤務している会社をニュートラルに指す言葉。
【「弊社」を用いた例文】
A社担当:弊社の工場の都合により、納期は1週間後の予定です。
【「小社」を用いた例文】
(書籍の文末に):落丁・乱丁本はお手数ですが小社営業局宛にお送りください。
【「当社」を用いた例文】
社員:(社内の会議にて)当社営業部の上半期の売り上げは前年比105%でした。
【ステップアップ編】「学校」「幼稚園・保育園」「病院」「銀行」「団体」の敬称は?
続いて、相手が所属する組織が一般企業ではない場合の敬称を確認しておきましょう。
書き言葉であれば、相手の組織に接頭語の“貴”をつけることで、敬意を表すことができます。
学校・・・貴校、御校
幼稚園・保育園・・・貴園
病院・・・貴院
銀行・・・貴行、御行
財団法人など・・・貴法人
団体・・・貴団体
これらの言葉はメールや手紙、連絡帳など、文章でやりとりする際に覚えておくと役立ちます。ただし、話し言葉では音の響きによって少々伝わりにくいという場合があります。
会話の中では、“私ども”“弊社”
日常会話においては、文法的な正しさも大切ですが、同時に伝わりやすさも大切です。相手の立場に立って、わかりやすく、礼儀正しく、優しい言葉づかいを心がけたいものです。

【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「Rの法則」「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。