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「お名前を頂戴する」はNG!?「頂く」「賜る」の使い分け【今さら聞けない大人の敬語講座vol.5】

目上の人に何かをお願いするとき、何かをもらうとき、どんな敬語を使ったらいいのでしょうか? 例えば、電話などでよく聞かれるNG例が「お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」というもの。

『大人の語彙力 使い分け辞典』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに、“もらう”“あげる”の敬語表現や、知っておくと役立つステップアップ敬語についてお話をうかがいました。

「お名前頂戴してもよろしいでしょうか」は間違い?正しい言い方は?

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職場で同僚宛ての電話を受け、最後に相手の名前を聞くときに「お名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」と言ってしまった経験はありませんか? “頂戴する”は、“もらう”の謙譲語です。相手の名前をもらうわけではありませんので、“お名前を頂戴する”は、間違いです。相手の名前を聞くときには、以下のように“聞く”の謙譲語を使います。

【目上の相手に名前を聞くときの表現】

・お名前を伺ってもよろしいでしょうか。

・お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか。

“お名前を頂戴”は間違いですが、「お名刺を頂戴してもよろしいでしょうか」という言い方は間違いではありません。

「させて頂く」の多用にご用心!本来の意味は?

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近年、“させて頂きます”という言葉がよく使われるようになりましたが、本来は、相手に許可を得て、何かをするときに使う言葉です。例えば「もし差し支えなければ、身分証明書を確認させて頂けますか」といったケースに用います。

【「させて頂きます」NG使用例】

・先日、資格試験に合格させて頂きました

・(プレゼンなどで)次のページに進ませて頂きます

・おかげ様で、重要な役を務めさせて頂いておりまして……。

“させて頂きます”を聞き手への丁重さを示す言葉として使われるケースがありますが、仰々しい印象を与えることがあるので、使用の際には注意が必要です。

「頂く」「賜る」の使い方は?例文は?

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“頂く”“賜る”は、どちらも“もらう”の謙譲語。

“頂く”は、もともと、位の高い相手に敬意を表し、頭上高くにささげ持つという意味がありましたが、今では幅広く使われています。

【「頂く」を使用した例文】

・別途、送料を頂きます

・明日、休暇を頂きたいのですが。

・ご理解頂き、ありがとうございます。

“賜る”は、古文の中でもよく登場しますが、会話の中に織り交ぜることで、より奥ゆかしく古風な印象を与えることができます。今の時代ではあまり使われなくなりましたが、“頂く”同様、“もらう”の謙譲語です。

【「賜る」を使用した例文】

・結構なお品を賜り、ありがとうございます。

・平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

【ステップアップ編】大人女性が知っておきたい敬語表現「あげる」は何て言う?

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目上の相手に何か物を贈るとき、“あげる”の謙譲語として、“差し上げる”“お渡しする”といった表現を使います。

【「あげる」の謙譲語を使用した例文】

・このサンプルは無料で差し上げております。

・記念品をお渡しします。

ただし、“あげる”という言葉は、相手に押し付けがましい印象を与えてしまう可能性があるので、「どうぞお受け取りください」といった、相手を主語とする言葉に置き換えて“あげる”に当たる表現を避ける場合もあります。

【相手を主語に置き換えた例文】

・心ばかりの品ですが、どうぞお受け取りください。

・お口に合うかわかりませんが、皆さんで召しあがってください。

 

以上、“もらう”と“あげる”の敬語表現について国語講師の吉田裕子さんに解説して頂きました。相手への思いやりを“言葉”という美しい包み紙でラッピングして相手に投げかけるのが、尊敬語や謙譲語。上手に使い分けて、人間関係の潤滑油としたいものです。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「Rの法則」「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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