『大人の語彙力 使い分け辞典』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに、間違いやすい敬語表現や、知っておくと必ず役立つステップアップ敬語についてお話をうかがいました。
「幸いです」は目上に使ってもいい?なんて言い換える?例文は?
null相手に依頼をするとき、“~して下さい”“お願いします”という表現を多用すると、押し付けがましい印象を与えてしまう可能性があります。語尾に“○○していただけると幸いです”をつけることで、より柔らかな印象になります。
【「幸いです」使用例】
・来週までにご返信いただけると幸いです。
・お手すきの際に御確認いただけると幸いです。
“幸いです”は、上司や取引先の相手など、目上の相手にも使うことができますが、よりあらたまった場面では、“幸いに存じます”“幸甚に存じます”といった表現を用いると良いでしょう。
【「幸いです」の言い換え表現】
・明日、お願いしていた見積書をご持参いただけると幸いに存じます。
・息子の体調にご配慮いただき、幸甚に存じます。
“幸甚”という言葉は、話し言葉では意味が伝わりにくいので、主にメールや手紙の中で使います。
【正しく使えてる?これまでの「今さら聞けない大人の敬語講座」】
「ありがたいです」は上司や取引先にも使える?例文は?
null頼みごとをするとき、相手の好意に感謝するニュアンスを含めて「来週までにご返信いただけると非常にありがたいです」という表現が使われることがあります。
「助かります」は上司や取引先の相手にも使える?例文は?
null相手に頼みごとをしたり、何らかのアクションを促したいとき、「できるだけ早くお返事をいただけると助かります」という表現を用いることがあります。この表現もまた、使う相手を選んだ方がいいでしょう。
この場合の“助かる”は、負担・労力・苦痛・費用などが少なく済んでありがたいという意味であって、自分側の都合を押し付けてしまうような印象を与える可能性があるからです。できれば顧客や取引先に対して使うのは避けた方がいいでしょう。
【「助かります」NG使用例】
・(目上の相手に対して)本日お話した件につきまして、できるだけ早く返事を頂けると弊社的にも助かります。
→自分主体で相手に押し付けがましい印象を与える可能性があるので、目上の相手にはNG。
ステップアップ編!大人女性なら知っておきたい「ありがとう」の言い換え
nullギブ&テイクで成り立つビジネスの現場では、感謝の気持ちを伝える場面が数多く訪れますよね。“ありがとうございます”以外にも、場面に応じたバリエーションを用意しておくと、とても役立ちます。
【メールや文章で感謝の意を伝える場合】
・ご連絡いただき、厚く御礼申し上げます。
・ご厚情に深く御礼申し上げます。
【口頭でも使える感謝の表現】
・感謝致しております。
・かたじけなく存じます。
相手への感謝を丁寧に伝えていくことで、少しずつ信頼関係が築かれていきます。感謝の言葉のバリエーションをいくつか持っておくと様々なシーンで役立つのではないでしょうか。
【取材協力・監修】
吉田裕子・・・国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。