子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

「見る」の尊敬語は?「ご覧になられる」が二重敬語でNGな理由【今さら聞けない大人の敬語講座vol.3】

敬語の使い方の間違いで特に多いのが、“二重敬語”。大切な相手に対して心をこめて使ったその敬語、間違っていませんか? 今回は、『大人の語彙力 使い分け辞典』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに、よくある二重敬語の使用例や、知っておくと必ず役立つステップアップ敬語について解説して頂きました。

これで二重敬語を防ぐ!敬語ルールをおさらい

null

敬語の間違いでよく聞かれるのが、尊敬語の“二重敬語”です。二重敬語とは、1つの動詞に対して、尊敬語、もしくは謙譲語を2つ重ねたもの。

一部例外もありますが、1つの動詞を敬語化する場合、同じ種類の敬語を2つ以上使わないのが基本です。

「ご覧になられる」は二重敬語?よくある間違いは?

null

1つ例をあげると「ご覧になられますか?」というのは、よくある二重敬語です。

“見る”を尊敬語化した“ご覧になる”と、尊敬語の“れる・られる”が重なっています。

【よくある二重敬語】

・「ご覧になられる」×/「ご覧になる」○

・「召し上がられる」×/「召し上がる」○

・「おっしゃられる」×/「おっしゃる」○

・「おいでになられる」×/「おいでになる」○

「お~になる」+「れる・られる」の二重敬語NG例

null

“お帰りになられる”のように、“お~になる”と“れる・られる”の二重敬語もよく聞かれます。「お帰りになる」だけで敬語として成立します。

【よくある二重敬語】

・「お話しになられる」×/「お話しになる」○

・「お見えになられる」×/「お見えになる」○

「お召しあがりになる」は二重敬語でもOK?

null

言葉というのは、たとえ文法が間違っていても、世の中で広く使われることで、定着してしまうことがあります。

“召し上がる”と“お~になる”の2つの尊敬語がミックスした“お召し上がりになる”という言葉が、その例。二重敬語ですが、かしこまった場面でもよく使われています。

【ステップアップ編】「拝見致します」は間違い?二重敬語だけど使える?

null

ここまで尊敬語の二重敬語について説明してきましたが、“拝見する”+“致す”の「拝見致します」は、2つの謙譲語が使われていますが、必ずしも間違いではありません。

先ほど、1つの動詞を敬語化する場合、同じ種類の敬語を2つ以上使わないと説明しましたが、謙譲語は2種類に分類することができます。その、種類の違う2つの謙譲語を使うぶんには許容されるわけです。

謙譲語1・・・「伺う」「拝見する」「頂く」「差し上げる」「お~申し上げる」など、目的語を高める

謙譲語2(丁重語)・・・「参る」「おる」「申す」「いたす」など、聞き手への丁重さを示す

“拝見します”でも十分に気遣った話し方ですが、謙譲語1と、謙譲語2、丁寧語をミックスした“拝見する+致す+ます”の、“拝見致します”は、より丁重な表現です。

今回は、国語講師の吉田裕子さんに、よくある二重敬語の例について解説して頂きました。

敬語表現は時代とともに変わっていきます。業種、職種によっては、過剰な敬語が使われている場合があり、吉田さんはこの現象を“敬語のインフレーション”と呼んでいました。相手に敬意を表す心はとても大切ですが、二重敬語は仰々しい印象を与える場合がありますので、注意が必要です。

 

取材・文/北川和子

※この人の記事をもっと読む

吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載