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「お含みおきください」はどんなシーンで使う?意味と使い方【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#8】

「お含みおきください」というのは、含みのある遠回しな表現ですよね。いったい、相手にどんなことを望んで使うのでしょうか。今回は「お含みおきください」の意味や使い方、NG使用例について解説します。

解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「お含みおきください」の意味とは?

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“含む”という言葉はいくつかの意味を持っていますが、「心にとめる」「事情を納得して心に留めておく」という意味もあります。

お含みおきください」と言ったときには「心にとめておいて欲しい」という意味になります。これからひょっとしたら起きるかもしれないトラブル、不都合、マイナスなことを相手にあらかじめ知っておいて欲しいときに使う婉曲的な表現です。

「お含みおきください」はどんな時に使うといい?目上の相手にも使える?

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お含みおきください」は、主にあらたまった場面で使われる言葉。

ビジネスシーンにおいては、取引先や顧客に対して念のため把握をしておいて欲しいことを伝えるために用います。

今すぐに事態が変わるわけではないものの、今後何かが起きるかもしれないことを心にとめておいて欲しい(トラブルが生じた場合の対処を少しだけ準備し始めて欲しい)ということを、柔らかい表現で伝えることができます。しばしば文章の最後の注意書きの部分でも見受けられます。

目上の相手に対して「覚えておいてください」と直接的な表現で伝えるのがはばかられるときにも使うことができます。「おそらく杞憂で済むだろうが、トラブルになる恐れが少しある」という場合に、「余裕があれば対応の準備をしておくとよいかもしれない」というニュアンスをにおわせるのにも使えます。

あらたまった表現なので、プライベートで使うことはほとんどありません。あえて例をあげるとすれば、地域のイベント案内で、中止や変更に関する記述の中では使うことができるのではないでしょうか。

「お含みおきください」の例文は?

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続いて、「お含みおきください」の例文を通じて使い方をマスターしていきましょう。

・悪天候の場合は遅延することもありますのでお含みおきください

・概ね問題ないかと存じますが、社内での検討結果次第では、ご期待に添えない可能性もあることもお含みおきください

・明日の会議の内容は、自由闊達な意見交換を目的としたブレインストーミングであることをお含みおきください

「お含みおきください」の使い方の注意点は?目上の人にも使える?

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「お含みおきください」は、念のため心にとめておいて欲しいことを伝えるときに使う表現です。今の段階で、実際に相手にとっての不都合が生じることがわかっている場合は「ご了承ください」「ご容赦ください」「ご理解ください」など、別の表現を使います。

【NG例文】

・在庫不足につき、次回の入荷の予定の目途がたっておりませんので、お含みおきください

→現在すでに起こっていることに対しては「お含みおきください」は使わない。この場合は「ご了承ください」など。

「お含みおきください」を言い換えると?

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続いて「お含みおきください」の言い換え表現をチェックしていきましょう。

(1)「ご了承ください」

「お含みおきください」は今後の不確定なリスクについて心に留めておくようにお願いするのに対し、「ご了承ください」は、事情を理解して不都合を受け入れてもらうようお願いするニュアンスがあります。

【例文】

・お返事に少々お時間を頂くこともございますので、ご了承ください

(2)「ご容赦ください」

“容赦”は“許す”の意味。実際に起こるかもしれない不都合について、あらかじめことわっておくために使われることがあります。

【例文】

・売れ切れの際はご容赦ください

(3)「ご理解を賜れれば幸いです」

こちらががんばって対応していても、相手に何らかの不都合を生じることがあるかもしれないとき、状況を察して理解して欲しいと伝えるときに使います。

【例文】

・需要が高まっており、品切れの状態が続いております。時節柄、ご理解を賜れれば幸いです

 

今回は「お含みおきください」の使い方についてお届けしました。

相手の心にとめて欲しいとお願いするときに使う表現です。ちょっと言いにくいことであっても、柔らかく伝えられるので、覚えておくと役立つのではないでしょうか。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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