解説して頂いたのは『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。
「所存です」の意味とは?目上の相手に使える?
null“所存”を訓読すると “存ずる所”。“存ずる”は“思う”“考える”の謙譲語で、“所存”は自分の心の中で思っていること、考えていることを意味します。
「所存です」はあらたまった場面で目上の相手に対して「自分はそういうつもりです」と意思表示をするために使います。
「所存です」はどんなときに使うといい?履歴書でも使える?
nullビジネスシーンにおいて「所存です」は今後の意思や抱負を語る文章の文末で用います。話し言葉においてはスピーチなどで今後の意思表明をするときや謝罪時など、あらたまった場面で使われています。
【使用する場面の例】
スピーチ、着任の挨拶のメール、謝罪、クレーム発生後の改善策提示、履歴書の自己PR欄…etc.
私生活においても、地域組織の役員に就任したときのあいさつなど、あらたまった場面で使われることがあります。
少々硬い表現ですので、ビジネスシーンでもプライベートでも、日常会話においてはほとんど使われることはありません。
「所存です」の例文は?
null続いて「所存です」の例文を通じて使い方をチェックしていきましょう。
【社外に向けたスピーチでの意思表明】
・社員一同、一致団結して取り組む所存です。
【履歴書の自己PR欄】
・一日も早く戦力となるよう努力する所存です。
【お詫びのメール】
・今後は不手際のないよう、より一層徹底した社員教育を図っていく所存です。
「所存です」の使い方の注意点は?
nullしばしば「~と考える所存です」という表現が聞かれます。先述したように、“所存”の”存”の字は“考える”という意味なので、「~
文法的には不自然ですが、実際には「~と考える所存です」という言い方に違和感を覚える人はあまりいないかもしれません。なぜなら、最近では所存を単に”心づもり”
【NG例1】
・今後は、細心の注意を払っていこうと考える所存です。
→“考える”と“所存”の意味が重複しているので文法的には「払っていく所存です」でOK。
ちなみに、古語では“所存”は相手の考えに対しても使われていましたが、現代日本語においては相手が思っていることを指して使うことはほとんどありません。
【NG例2】
・これからも資格試験の勉強を続ける所存ですか?
→現代日本語では相手の心づもりをたずねるために使うことはほとんどない。
「所存です」を言い換えると?
null続いて、「所存です」の言い換え表現をチェックしてきましょう
(1)「次第です」
「次第です」は、物事の状況や事情を伝える表現です。ビジネスシーンにおいては「~というわけです」という意味で使われています。
【例文】
・我々は、以上のように考えている次第です。
(2)「つもりです」
“つもり”は、話し手の意志・意向を表す言葉。「所存です」があらたまった表現であるのに対して「つもりです」は柔らかい表現なので、あらゆる場面で使用されています。
【例文】
・私は予定通り計画を実行するつもりです。
・明日はお弁当を持参するつもりです。
(3)「と存じます」
自分の考えを目上の相手に伝えるときに用いる言葉です。
【例文】
・書類の内容を拝見しましたが、特に問題ないかと存じます。
(4)「して参ります」
「して参ります」は「して行きます」の謙譲表現。持続的な意思を表明するためにも使われています。
【例文】
・微力ながらも最善を尽くして参りますのでよろしくお願いします。
今回は、国語講師の吉田裕子さんに「所存です」の意味や言い換え表現を解説して頂きました。
あらたまった場面で決意や抱負を語る時に使える表現なので、使い方を覚えておきましょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。