「成果を実感できない」「評価されていない」というメンバーの場合
nullこんな理由でメンバーの意欲が落ちているとき、私はそのメンバーが些細なことでも「達成感」を得て、自信を取り戻せるようにしました。
具体的には、その人の「グッド・プラクティス」を探して褒めることを実践していました。グッド・プラクティスとは、優れた取り組みや行動、その成果などです。
ごく些細なことでいいのです。「忙しいときに雑用を引き受け、工夫して短時間で済ませた」「同僚が困っているときに手助けしてあげた」「他の人が気付かなかったことに気付き、指摘・提案をした」など。それを見逃さず、「よくやったね」「ありがとう」「あなたのおかげで助かった」などと言葉に出して褒めます。
しかも、メンバー皆に聞こえるように褒めます。小さなことでも、認められたり、感謝されたりするのは承認欲求が満たされ、心地良いもの。自然と次の努力に向かえるでしょう。
ただし、一人ひとりの行動をずっと見守り続けるのは難しいですよね。そこで、メンバー自身がグッド・プラクティスを「自己申請」する機会を設けるのも有効。
ミーティングや朝礼などで、「意識して頑張ったこと」「お客様に褒められたこと」などを発表してもらうほか、日常的に皆で「褒めあう」ことを習慣化します。本人のモチベーションアップはもちろん、チームの風土の活性化にもつながります。
プライベートで問題を抱えていて、仕事に身が入らない場合
nullやる気がないように見えるのは、例えば「彼・彼女とうまくいってない」というようなプライベートのことで気分がふさぎ込んでいるだけというケースもあります。しかし、多くの若手は、先輩や上司などにわざわざプライベートの話はしません。
このようにプライベートのゴタゴタが仕事に影響してしまう事態を防ぐためには、日頃からメンバーがプライベートな問題も先輩や上司に相談できるような関係を作っておくといいと思います。
私の場合は、まず上司である自分がプライベートな話を積極的に部下にしました。育ってきた環境のこと、夫や子どもの状況などを日頃からオープンに話していました。すると部下も「ここまで話していいんだ」と境界線が取っ払われ、安心し、遠慮せず自分のプライベートの話も気軽にしてくれるようになったのです。
プライベートな問題を解決してあげるのは難しいですが、ただ話を聴いてあげるだけでも、気持ちや考えを整理することができ、オン・オフの切り替えがしやすくなるものです。
もともとどこか「冷めている」「斜にかまえている」場合
null人生に目的や目標を見出せず迷子になり、頑張る気力がどうも表面化してこないタイプ。たまにいますよね。でも、どんな人も「本気スイッチ」を持っているはずです。
たとえ、わかりにくいとしても、きっとどこかにあるはず、もしくはどこにスイッチがあるのか見失った、もしくは押し方を忘れてしまったに過ぎないと感じています。
そこで、とにかく信じて任せる。自信につながるような成功体験や、認められ必要とされている実感を持てる機会を与える。ここぞというタイミングが大事です。
そのためにも、成功体験につながるような、部下一人ひとりの強みや特性をしっかり把握しておくことが重要です。それを探し出すのが先輩・上司の役割だと思います。
相手の「本気スイッチ」の探し方
私は、人の「本気スイッチ」のありかを探るとき、幼少期や学生時代の話題を振ります、どんなことに夢中になっていたか、どんな場面でワクワクしたのかを聞いてみるのです。
「運動会は燃えた」→「運動会の何が楽しかった?」→「応援合戦が面白かった」→「なぜ面白かった?」→「皆でダンスやかけ声の練習をした一体感が心地よかった」など、掘り下げてたずねてみると、その人の価値観や志向などにつながる共通点が見えてくることがあります。
そして、部下の強みのツボを発見したら、それに共通するような業務や役割を与えてみました。すると、「本気スイッチ」がオンになり、みるみる仕事への取り組み姿勢が変わった……ということは何度もありました。
ぜひ、自信をもって取り組める強みや「その人らしさ」を発揮できる機会を提供してあげてみてください。「本気スイッチ」がオンになり、表情が生き生きしてくるのを感じるはずです。それは結果としてチームメンバーなど、周囲にも良い影響として伝搬していくのではないでしょうか。
構成/青木典子