今回も、前回に引き続き『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに“お力添え”の使い方についてうかがいました。
「お力添え」の意味は?
“力添え”とは、力を添えて助けること。つまり、“援助”や“協力”という意味になります。“お力添え”の“お力”は、相手の力のことを指し、”助けてもらうこと”を意味します。
ビジネスシーンでは「お力添え」をどんな時に使うといい?
“お力添え”という言葉は、相手に協力をお願いする時や、相手の協力に対して感謝の気持ちを伝える時に使います。
聞き慣れた「ご協力お願いします」よりも「
「お力添え」の例文は?
続いて、“お力添え”の例文を依頼と感謝のシーンに分けて、ご紹介します。
(1)協力を依頼する時
・本件、主任である私の職務権限を越えています。ぜひB部長のお力添えが必要です。
・今後ともお力添えを頂きますよう、お願いいたします。
(2)相手の協力に対する感謝を伝える時
・このたびは、お力添えを賜りありがとうございました。
・皆様のお力添えがあってこその成果です。
「お力添え」の使い方の注意点やよくあるNG例は?
“お力添え”の“お力”は相手の力に敬意をこめたもの。自分を主語にして使うことはありません。以下の文は、よくあるNG例です。
【「お力添え」NG使用例】
・困っているようでしたら、私がお力添えさせて頂きます。
→“お力添え”は、相手の“お力”を添えてもらうこと。自分を主語にすると、自分の“力”に敬意を表すことになるのでNG。この場合は、相手の“お力”に自分が加勢する「お力になります」などを使いましょう。
また、“させて頂く”は本来は、相手に許可を得て、
「お力添え」を言い換えると?
続いて“お力添え”の言い換え表現をご紹介します。
(1)ご尽力
“力を尽くす”、つまり“全力を出し切る”という意味なので、
【例文】
・ご尽力を賜りまして感謝申し上げます。
・本日はご尽力頂きましてありがとうございました。
(2)ご協力
使用頻度の高い言葉。相手の具体的なサポートを必要とする時や、感謝の気持ちを伝える時など、幅広いシーンで使うことができます。温かく見守って欲しい時には、“ご理解ご協力”という表現をすることもあります。
【例文】
・ご協力頂き、どうもありがとうございました。
・ご理解ご協力頂きますよう、何卒宜しくお願い致します。
(3)ご支援
力を貸して助けることを意味します。遠回しに金銭的なサポートに対しても使われることがあります。
【例文】
・皆様のご支援が必要です。
・今後ともご理解・ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
以上、今回は、“お力添え”の使い方をご紹介しました。
これまでは“ご協力”と言っていたところを、時々“お力添え”という表現に置き換えてみると、しなやかな印象を演出できるのではないでしょうか。

【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。