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「お体をご自愛」は間違い!「ご自愛ください」の意味と使い方【あらためて知りたい頻出ビジネス用語#3】

ビジネスメールの締めの言葉として頻繁に使われている“ご自愛ください”という言葉。中には間違って使われている例が少なくありません。今回は、“ご自愛”の意味や、NG使用例についてお届けします。

解説して頂いたのは、『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「ご自愛ください」の意味とは?

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“自愛”は、自分の体を大切にすること。「ご自愛ください」は、「お体を大切になさってください」という意味です。

風邪が流行している時期、暑さ・寒さが体にこたえる時期など、体調を崩しやすい季節には使用頻度が高くなる言葉です。

「ご自愛ください」はどんな時に使うといい?

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ビジネスシーンにおいて、「ご自愛ください」は、打ち合わせの別れ際のあいさつや、メールのやり取りがひと段落するときの締めの言葉としてよく使われています。

お礼状、寒中見舞い、暑中見舞いなどの手紙の中でも使われています。

先述したように「お体を大切に」という意味があるので、意味の上では軽く体調を崩している相手に対しても使うことはできます。ただ、症状が重い風邪などの場合は、「どうぞお大事になさってください」といった表現のほうが適しているのではないでしょうか。

私生活においては、手紙の中や、メールのやりとりの最後など、主に書き言葉で使われています。敬語を使う相手に対しては、話し言葉の中で使うこともあります。とはいえ、多くの場合は「お体を大切になさってください」など、もう少し簡単な表現に言い換えて使うケースが多いと思います。

「ご自愛ください」の例文は?

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続いて、「ご自愛ください」の例文を通じて、使い方をイメージしてみましょう。

【「ご自愛」の使用例】

・寒さ厳しい折、どうぞご自愛ください。

・体調を崩されませんようご自愛ください。

・ご多忙の折ではありますが、くれぐれもご自愛ください。

・ご自愛専一にお過ごしくださいませ。

“ご自愛専一”は、“ご自愛”をさらに強調し「くれぐれも自分の体を大切に」というニュアンスがあります。多忙で自分のケアの時間が難しい相手、自分のことを後回しにしてしまう相手を思いやって、メールの文中などで使います。

「ご自愛ください」の注意点は?

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“ご自愛”は、“自分自身の体を大切にする”という意味で、最初から目的語が含まれている単語です。そのため、「お体をご自愛ください」という使い方だと重複になってしまいます。

【NG例】

まだまだ寒さが続きますので、お体をご自愛ください。

→“お体を”は不要。「ご自愛ください」だけでOK

「ご自愛ください」を言い換えると?

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続いて、“ご自愛ください”の言い換え表現をご紹介しましょう。

(1)「お労わりください」

“労わる”(いたわる)は、優しく大切に扱ったり、ねぎらったりすることを意味します。多忙な相手や疲れている相手を思いやって使います。

【例文】

・本日はお疲れだと思いますので、どうぞお体をお労わりください

(2)「お大事になさってください」

“お大事に”は、体調を崩している相手に対して使います。

【例文】

・まずはお体をお大事になさってください

(3)「お体をおいといください」

“厭う”(いとう)“は、“嫌って避ける”という意味がよく知られていますが、“体をいたわる”という意味もあります。しばしば手紙の中で使われています。

【例文】
・暑さが続いておりますので、お体をおいといください

 

今回は、国語講師の吉田裕子さんに「ご自愛ください」の意味や使い方について解説頂きました。

「ご自愛ください」は、相手の健康状態を気遣っていることを伝えることができる言葉です。ビジネスメールのやり取りがひと段落するときに、文末に一言添えてみてはいかがでしょうか。

 

取材・文/北川和子

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吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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