解説して頂いたのは、『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。
「心苦しい」の意味とは?
null“心苦しい”は文字通り、心が苦しいこと。特に、
「心苦しい」はどんな時に使うといい?
nullビジネスシーンにおいては、いずれも「心苦しいのですが」という文章の前置きの“クッション言葉”として、よく使われています。想定される3つの場面を例文とともにチェックしていきましょう。
(1)相手に依頼をする時
【例文】
・大変心苦しいのですが、こちらの書類を修正して再度提出頂くことは可能でしょうか。
(2)相手の依頼や誘いを断る時
【例文】
・せっかくのお誘いなので心苦しいのですが、
(3)自分たちの都合で相手に迷惑をかけているかもしれない時
【例文】
・納期に関しまして、いつも無理ばかり申し上げて心苦しく感じております。
この場合、相手に迷惑をかけたり無理を言ったりしていこと(
私生活でも同様に、相手の誘いを断る時や、依頼を断る時などに使われています。
「心苦しい」の使い方の注意点やNG使用例は?
null相手に対してすまなく思う気持ちを表す“心苦しい”ですが、文脈や話し方、話し方のトーンによっては、相手にとって白々しく聞こえてしまうことがあります。
【「心苦しい」NG使用例】
・(ぶっきらぼうな言い方で)心苦しいのですが、この書類は受理できません。
→“心苦しい”という言葉を使う時には、言葉に似つかわしい表情と態度が必要になることもある。
また、心苦しいと前置きしていれば、どんな要求でも許されるわけではないのでご注意を。
「心苦しい」の言い換え表現は?
null続いて“心苦しい”の言い換え表現をご紹介します。
(1)申し訳ないのですが
“心苦しい”と同様に、依頼や恐縮のクッション言葉として使うことができます。
【「申し訳ないのですが」の例文】
・大変申し訳ないのですが、ご容赦ください。
(2)恐れ入りますが
相手にかける迷惑や手間を思い、遠慮・
【「恐れ入りますが」の例文】
・恐れ入りますが、お先に失礼します。
(3)しのびないのですが
ひょっとしたら身勝手なことを言っているかもしれないと謙遜しながら、使うクッション言葉です。“しのびない”は“我慢できない”の意。
【「しのびないのですが」の例文】
・皆さんが大変な思いをしている中、大変しのびないのですが、子どもが発熱したためお先に失礼します。
(4)勝手を申しますが
自分の側の都合を通さなければならない時に恐縮して使うクッション言葉。
【「勝手を申しますが」の例文】
・勝手を申しますが、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
今回は、国語講師の吉田裕子さんに“心苦しい”という言葉を解説して頂きました。
ビジネスシーンにおいては、仕事が発生する以上、誰かに手間をかけてしまうことを避けては通れません。そんな時、気遣いと感謝の言葉は、気持ちよく仕事を進めることにつながります。“心苦しい”は、言い換え表現も含めていろんな場面で使うことができる言葉ではないでしょうか。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。