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【防災士に聞きました】「防災グッズ」の理想的な置き場所は?いま一度、備えの見直しを

/ [最終更新日] 2024.01.09

9月1日は「防災の日」。これを機にご家庭にある防災グッズを見直すという方もいらっしゃるのではないでしょうか。意外とかさばる防災グッズ、みなさんはどこに収納していますか?
そこで『kufura』では、20〜50代の女性にアンケートを実施し、「防災用具をどこに置いているか」について聞いてみました。その声から見えてきた防災の備えへのもやもやについて、防災士の資格をもつ金子志緒さんからのアドバイスをお届けします!

防災の備えをしている人は半数未満!

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まず、「防災グッズを備えていますか?」と聞いてみました。

はい・・・157人(42.1%)

いいえ・・・216人(57.9%)

すると、残念ながら過半数に満たないという結果に。

「どこに置いたらいいか迷うし、玄関や部屋にそのまま置いとくのも邪魔なので困っています」(52歳/主婦)

「置き場所がないので、防災グッズを持っていません。なるべくコンパクトなものがあったら良いなと思います」

理由を聞いてみると、上記のように「置き場所がわからない」「収納スペースがない」という声が多数……。では、防災グッズを備えている157人の方は、普段どこに保管しているのでしょうか?

防災グッズ、何をおうちのどこに保管していますか?

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玄関付近

「非常時にすぐ持ち出すために食品とお水をリュックに入れて玄関近くの収納棚に入れています」(35歳/総務・人事・事務)

「カートに水、食糧、電池、ラジオ、懐中電灯、カッパ、アルミシート、携帯トイレなど入れて、玄関においてある」(51歳/主婦)

寝室

「大きめのバッグに入れ、ベッドの下に置いている」(48歳/その他)

「大きな缶箱に入れて寝室に置いている」(59歳/主婦)

「リュックに懐中電灯、水、缶詰めなどをいれて寝室の隅に置いてあります」(38歳/主婦)

リビング

「すぐに持っていけるように、リュックに入れてリビングに置いてある」(46歳/その他)

「リュックにいれてリビングの収納スペースにいれている」(30歳/総務・人事・事務)

キッチン

「リュックに入れてキッチンに置いてある。非常用のお米と缶詰、お水、非常用パンツなど生理用品。ライターやローソク、懐中電灯など」(27歳/主婦)

「非常食を入れて、キッチンの棚に入れている」(34歳/主婦)

押し入れ・クローゼット

「リュックの中に必要なものを詰めて押し入れの中にしまっている」(42歳/主婦)

「リュックに水や懐中電灯、食料など入れて押し入れのすぐ出せる場所にある」(48歳/主婦)

ベランダ

「ベランダに最低限の着替えと小銭とティッシュなどの日配品を、建物に入らなくても外から取り出せるようにしてあること」(47歳/主婦)

「ベランダの倉庫に水や食料を入れている」(47歳/主婦)

家のさまざまな場所に

「非常時にすぐに持ち出す物は非常用リュックに入れ玄関収納に、水や食糧はキッチン収納に、懐中電灯とスリッパは各個人のベッド脇に置いてある」(47歳/総務・人事・事務)

「防災リュックは寝る場に。食品などの備蓄はいくつかに分散しておいている。車の中にも防災道具を入れている」(48歳/主婦)

「衣装用のプラスチックケースに入れて、二階の部屋に。また、靴やヘルメットなどが各自の部屋に」(42歳/その他)

すぐ持ち出せるように玄関先に置いたり、夜間の災害を想定して寝室に備える方が多いことがわかりました。押し入れなどの収納スペースと答えた方も多かったのですが、中には「押し入れの奥にしまっているので、いざという時取り出すのが大変」という声も……。また、1箇所にかためず寝室やキッチンなど家のさまざまなところに分けている方もいました。

アンケートでは、すぐ持ち出せる“非常用持ち出しグッズ”と、在宅避難を想定した“備蓄品”のどちらかのみを用意しているという方が多く見受けられました。まずは、前段として「備えておくといいもの」を、次にオススメの収納場所について、防災士の金子志緒さんにうかがいました。

用意すべきは、“緊急避難グッズ”と“備蓄品”の2タイプ!

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金子:備えとしては、緊急時にすぐ持って避難できる数日分の生活の「非常用持ち出し袋」と、1週間〜長期的な生活のための「備蓄品」を分けて用意しておきましょう。

「非常用持ち出し袋」例

□水 □食品(最低3日分) □防災用ヘルメット・防災ずきん
□衣類・下着 □レインウェア □紐なしズック靴
□懐中電灯

(手動充電式が便利)

□携帯ラジオ

(手動充電式が便利)

□予備電池・携帯充電器
□マッチ・ろうそく □救急用品 □使い捨てカイロ
□ブランケット □軍手 □洗面用具
□歯ブラシ・歯磨き粉 □タオル □ペン・ノート

※このほか、感染症対策としてマスクや手指消毒用アルコールや、貴重品(通帳、パスポート、運転免許証、診察券、マイナンバーカードなど)も一緒に。

子どもがいる家庭の備え

□ミルク(キューブタイプ) □子ども用紙オムツ □抱っこひも
□使い捨て哺乳瓶 □お尻ふき □子どもの靴
□離乳食 □携帯用お尻洗浄機
□携帯カトラリー □ネックライト

女性の備え

□生理用品 □サニタリーショーツ □防犯ブザー/ホイッスル
□おりものシート □中身の見えないごみ袋

高齢者がいる家庭の備え

□大人用紙パンツ □入れ歯 □デリケートゾーンの洗浄剤
□杖 □入れ歯用洗浄剤 □持病の薬
□補聴器 □男性用給水パッド □お薬手帳のコピー

備蓄品

□食料や水(最低3日分。できれば1週間分)×家族分
□生活用品(ティッシュ、トイレットペーパー、ラップ、ゴミ袋、ポリタンク、携帯トイレなど)

※首相官邸ホームページ 災害の「備え」チェックリストより

金子:在宅避難を想定している場合も、家の倒壊や火事などの事態を想定して、「非常用持ち出し袋」は備えておきたいもの。両手があくリュックサックがおすすめです。一般的なリュックサックとアウトドア用を比べてみたところ、アウトドア用のほうが背負いやすく、重さも軽減してくれると思いました。

箱やカートは素早い移動の妨げになるので緊急避難時には不向きです。自動車で避難せざるを得ない場合は積めますが、自動車を動かせなかったり途中で徒歩になったりする場合も想定し、リュックサックも用意しておいたほうが無難です。

ただ、参考リストにあるものをすべて揃えるのは大変だし重くなりがち! コンパクトな防災セットを求める方は、自分が「これだけは用意しておきたい」と思うものを厳選した「防災ベスト」を用意してはいかがでしょうか。津波や土砂災害など、すぐに避難が必要な状況で、羽織るだけの防災ベストは役立ちます。

金子さんが用意した“持ち歩けるコンパクト防災セット”のバッグ。
防災ポーチ

金子:自宅や勤務先に置く備えに加えて、持ち歩く備えもおすすめです。私は、「防災ポーチ」とバッグインバッグにまとめています。バッグインバッグには水や充電器、マスクなど、ポーチには居場所を知らせるための笛やコンパクトライトなどを入れています。

「備蓄品」は、日頃から使っている水や食品、生活用品などがなくなる前に買い足す「ローリングストック」を心がけるだけでも十分。さらに、携帯トイレ、消臭グッズ、防臭袋も備えておくと役立ちます。余裕があれば長期保存可能な水や食品もストックしておくと安心です。

災害が起きて自宅にとどまるのが不安な場合は、「非常用持ち出し袋」を持って一時的に避難し、状況が落ち着いてから「備蓄品」を取りに自宅へ戻るのも一案ですよ。

防災グッズの「理想的な置き場所」は?

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金子:「非常用持ち出し袋」は、玄関、リビング、寝室など、すぐ持ち出せるところに保管しましょう。ただし、夜間の災害時にすぐ使う懐中電灯はベッドの近くへ置くなど、用途に合わせてアレンジしておくと安心です。

「備蓄品」は分散して保管するのが基本。自宅が倒壊したり家具が倒れたりしても、どれかは確実に取り出せるように、玄関、寝室、リビング、キッチン、押入れ、クローゼット、車庫、車内、物置、ベランダなどへ分けて置いておきましょう。

取り出しやすい玄関などを中心に考えるのがおすすめです。ベランダに置く場合は、地震などで落下して階下や周囲に危険が及ばないように対策を。集合住宅の場合、ベランダが避難経路になるので物を置きすぎないように注意しましょう。

水や食品などの重要なものを分散し、カセットコンロなどのたくさん用意しなくてよいものは、取り出せる可能性が最も高い場所にまとめておくといいでしょう。

防災グッズを収納する際のコツは?

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金子:防災グッズの一覧を見ると量が多く見えますが、実は日常的に使っているものばかり。生活用品などがなくなる前に買い足す「ローリングストック」で備えましょう。理想は分散収納ですが、ローリングストックの日用品は管理しやすいように、取り出しやすいところへまとめて収納しておいてもよいと思います。

金子さん宅の玄関に収納された備蓄品。水や野菜ジュース、カレールー、カンパンなどが備えられています。

私はもともと飲料水やレトルト食品を頻繁に買う習慣がないので、長期保存可能な水と食品を玄関のシューズボックスやホームセンターで購入した板で作った棚に置いています(落下を想定して軽量なものを上へ)。ローリングストックは主に日用品のみです。

防災グッズの品数を減らしたい場合は、命に関わらないもの、家族の中で優先順が低いものを省くのも選択肢の一つ。私はカセットコンロの代わりに、水さえあれば食品が加熱できる「モーリアンヒートパック」を用意しています。

古いカセットボンベは劣化やガス漏れの事故が起きているため、定期的に交換が必要。忘れそうで心配、防災セットはコンパクトにしておきたいという方におすすめですよ!

防災グッズは、一度用意すればときどき見直すだけで十分なので、ぜひ少しずつでも日常に防災を取り入れていきましょう。

金子さんの防災グッズ収納ケースは、無印良品のコレ!

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金子さんが使っている無印良品の「ポリプロピレン頑丈収納ボックス・小」。W40×H39×D37cmの大きさで、たくさん収納できます。

金子:デザインにこだわった防災グッズや収納グッズも登場しているので、お気に入りを選んでみるのもいいかも。

我が家ではシンプルな見た目の無印良品「ポリプロピレン頑丈収納ボックス」を複数用意して、乾電池やビニール袋などを入れています。ベンチの代わりにもなり、屋外にも置いておけます(ベランダに置く際は注意)。

出しておいても違和感のないデザインのものを防災に利用するのがコツ。「非常用持ち出し袋」には、お気に入りのデザインのリュックサックを選んでみては? 水や食品を入れるだけで「非常用持ち出し袋」になりますよ。

いかがでしたか?
地震だけでなく、近年は気候変動による災害も増えています。自身や家族を守るためにも、ノーガードな状態で被害に遭うのは避けたいところ。

すべての防災グッズを揃えようと思うと大変なのでまずは最低限必要だと思うものを厳選してみる、1箇所にかためずなるべく分散保管する、といった金子さんのアドバイスをもとに、できることから始めてみませんか?

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