菜箸ですら凶器になりうる!
nullキッチンの地震対策。ここまでは食器棚について見てきました。
キッチンにたくさん存在する「調理器具」も、地震の際には危険がいっぱい。
「災害の現場では、揺れで飛んできた菜箸が身体に刺さったという方の救助要請を受けたことがあります。しかし助けることはできませんでした。強い地震では、出しっぱなしになっているものは全て凶器になるかもしれないと考えて対策をしましょう」と、辻さん(以下「」内 辻さん)。
その1:細かな調理器具は引き出しへ
調理のときに手に取りやすいからと、コンロ周りにお玉などを吊り下げ収納。よく見かけますが……。
「これらが地震の際に外れて飛んで来たらケガの原因に! できるだけ引き出しや扉の中に収納するのが基本です」
その2:包丁の扱いには特に注意!
このような包丁・まな板スタンドも便利なアイテムですが、倒れやすく安全とは言えません。包丁がこちらに向かって動いたり、床に落ちて足をケガしたら大変!
「収納庫の扉の裏についていることが多い包丁ケースや、こういった包丁専用の収納スペースにきちんとしまいましょう。マグネットで壁に貼り付けるタイプの包丁収納も、機能的で見た目も素敵ですが、安全面からはおすすめしません」
その3:棚に物を置く時は「重い物を下に」
台所のオープンラックに鍋などを収納するときに気を付けたいのが、置く位置。
「重いものは下に、軽いものは上に置くのが基本。使う頻度が低いものを高い場所に置くというのはよくあること。しかし、重い鍋が揺れで落ちてきたら……?と想像してみてください」
鍋やびん類、ストックの水などは棚の下、ペーパー類などの軽いストック品を棚の上へ。鍋などを置くときは、下に滑り止めシートを敷くことを忘れずに。
鍋や調味料をケースに入れて収納するときは、ケースの中と下の面に滑り止めシートを敷き、さらに周囲をロープなどで囲っておくとより安心。
滑り止めシートは、手前側を少し長く切って折り返してから両面テープで貼り付けます。矢印の方向により動きにくくなります。
鍋類やボウルなども、可能であれば引き出しにまとめると安心です。その際も、中に滑り止めシートを敷いてから収納しましょう。
キッチンに立って周りを見回して、「これは地震のときどう動くかな?」と想像してみましょう。
出しっぱなしにせずにしまっておくことで、油ハネで調理器具が汚れることもなくなるし、掃除もしやすくなるので、一石二鳥! すっきりとしたキッチンは、防災対策としてだけでなく、日常生活でもメリットがたくさんあるんです。
できることからひとつひとつ。安全なキッチンづくりを進めていきましょう。
国際災害レスキューナース、一般社団法人育母塾代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。
帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。実家が全壊したのを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。
現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育をメインに行い、要請があれば被災地で活動を行っている。
「地震・台風時に動けるガイド: 大事な人を護る災害対策」(発行:メディカル・ケア・サービス/発売:Gakken)、「レスキューナースが教えるプチプラ防災」「プチプラで『地震に強い部屋づくり』」(ともに扶桑社)など著書多数。