子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

子育て女性が「夫から望まれる年収」と「現実の年収」の差はどのくらい?もちろん稼ぎたいけど…

共働き家庭の割合が増加し、日本では多くの女性が子育てをしながら仕事をしています。

ところが、世界経済フォーラム(WEF)が発表した最新の「ジェンダーギャップ指数」では、日本は153か国中121位。120位のアラブ首長国連邦と122位のクウェートの間にランクづけされ、近年、顕著な下落傾向が続いています。

このような状況はどうして起こるのでしょうか?

「配偶者に望む年収」と「現実の年収」の差が男女間で5倍!その理由は…

null

日本のジェンダーギャップ指数を下げている原因の一つが「経済参画とその機会」です。もう少しデータを見てみると、男女の収入格差が大きく、女性の専門職や管理職の割合の低さが目立ちます。

6歳以下の子どもがいる男女1,100人に対して行われた明治安田生命の「子育てに関するアンケート調査」(2019年10月発表)においては、子育て中の男女の収入の考え方にも大きな格差が見られます。

調査の中で、男性の現実の年収(平均)は626万円だったのに対し、妻側が夫に望む年収は658万円。その差は32万円です。一方で、妻の現実の年収は129万円に対し、夫側が妻に望む年収は288万円と、159万円もの差が開いています。

配偶者に望む理想と、現実の年収は、男女間で5倍の差が開いている、というわけです。

同時に81.3%の女性が「自身の収入がもっと必要」と回答しており、「もっと稼ぎたいけど、稼げない」と感じている女性が多いと推測できます。

また、専業主婦の53.6%は「働きたい」と回答し、「働きたいけど、働けていない」理由としては「周りに助けてもらえる環境でない」「保育園がない」「子どもとずっと一緒にいたい」といった理由をあげています。

共働きでも「キャリアアップ」ができない就業形態

null

共働き家庭が増加していますが、実際に働く女性からは、“キャリアアップ”や“やりがい”という言葉への違和感も聞かれます。職種や就業形態によっては、キャリアアップとは縁遠い状況にある女性が多いからです。

平成22年に生まれた子どもとその家族の状況を継続して調査している厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)」を参照すると、小学校2年生の子どもを持つ母親の就業状況は以下のようになっています。

勤め(常勤)・・・26.2%
勤め(パート・アルバイト)・・・38.7%
自営業・内職・・・7.2%
無職・・・26.4%
不詳・・・1.5%

注視すべきが、”常勤”と“パート・アルバイト”の割合の推移です。出産後半年から子どもが小学校2年生になるまで、常勤(正社員)の割合はずっと4人に1人。対して、パート・アルバイトの割合は子どもの成長とともに激増していく傾向が見られます。

子どもとの時間を増やすために女性がパートやアルバイト、内職などを積極的に選択している家庭もあれば、「正社員になりたいけど無理」とあきらめている家庭もあるでしょう。

その逆で、「もっとフレキシブルな働き方をしたいけど、収入を下げられないから正社員をやめられない」という女性もいるかもしれません。

一方で、「自分が正社員になってしまったら、家族がまわらない」という声も聞かれます。

その背後にあるのが、家事・育児・介護の分担が女性に多くのしかかる現状です。

『kufura』では「『家事時間ゼロ』の共働きパパは、育児時間もほぼゼロだった!? …その意外な相関関係とは」

「子どもが発熱…パパが看病する割合は?【育児分担vol.2 健康管理編】」など、男女の育児・家事分担のアンケートを多数行っていますが、家事や子どものケア、発熱時の看病などは、女性側の負担が圧倒的に大きくなっています。

管理職になって「家族との時間が持てない」と悩む男性も…

null

「稼ぎたいのに思うように稼げない」と多くの女性が感じている一方で、男性は家族からは「稼ぎ」を、会社からは「会社への忠誠心をもって責任ある役職に就くこと」を期待されながら、育児を妻に任せざるを得ない状況に置かれる男性は少なくありません。

2004年に大手企業に入社し、現在は管理職に就く男性は以下のように語ります。

「以前は、子どもを産んだら辞めていく女性が多かったけど、在籍する部署にはこの10年で子育て中の女子社員がすごく増えました。自分が家族との時間を削る中、子育て中の女子社員は残業をせずに帰っていく実情もあります。会社の上層部は、子育て中の社員を管理してきた経験がないから、女性のスキルを育てていくための正解もモデルケースもありません。忘年会ひとつとっても、参加率は低いし、どうやってチームの一体感を維持すれば……」

『ワンオペ育児』で悲鳴を上げる妻、仕事で疲れた夫…どう分かち合う?」という記事でそれぞれ違うつらさを抱えた夫婦のすれ違いについて考察しましたが、企業においても家庭においても男女平等の建前の下、性別ごとの役割が固定化されているケースは少なくないようです。

世界的にも充実しているのになかなか使うことができない男性の育児休業制度、長時間労働、参加者は女性が圧倒的に多い学校や幼稚園のPTA活動、子育て家庭にのしかかる教育費の負担、地域のつながりが薄れて家族に集約されていく子育ての負担、上の世代から踏襲する“幸せ”な家族像と現実のギャップ……。

20年前のワーキングマザー向けの本を読むと、女性の悩みの質は全く変わっていません。変わらない国が、変わっていく国にジェンダーギャップ指数で追い抜かれていく状況は、多様な背景を持った男女が企業や政治のルール作りに携わらない限り、難しいのかもしれません。

【参考】

GENDER GAP REPORT 2020 – WORLD ECONOMIC FORUM

子育てに関するアンケート調査 – 明治安田生命

第8回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況 – 厚生労働省

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載