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「考える」を言い換えるなら?感じよく丁寧に聞こえる言い方は【オトナ女子の言葉選び#14】

“考える”という言葉は、日常会話に頻出する動詞です。大人から子どもまで、さまざまな属性の人が使う言葉ですが、言い換え表現を覚えておくと役に立ちます。

今回は『思いが伝わる語彙学』(KADOKAWA)など、多数の著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに“考える”の言い換え表現について教えていただきました。

「考える」の意味は?言い換えるときの注意点は?

「考える」の意味は?言い換えるときの注意点は?

“考える”は、ある物事や事柄についてあれこれ思考をめぐらすこと。筋道を立てて問題や疑問を解決したり、工夫してアイディアや技術を生み出すことを“考える”という動詞で表すこともあります。

日本語の頻出単語ですが、以下のような場面で言い換えの必要性を実感した方もいると思います。

(1)「考えてほしい」と相手に依頼するとき

目上の相手に何かを考えてほしいときに、「考えてください」とは言いにくい場面があります。「ちゃんと考えてください」などと言うと、「今あまり考えていないのでは?」と責めるようにも聞こえるからです。特に目上の相手に思考を促す際には、別の表現に置き換えます。

(2)「考えます」と自分の意志を示すとき

例えば、硬い文章の中で「ちゃんと考えます」といった表現を使うと、真剣さや具体性を欠くこともあります。場面や相手に合わせて、別の表現に置き換えてみましょう。

「考える」をビジネスシーンで丁寧に言い換えるなら?熟語の言い換え表現

「考える」をビジネスシーンで丁寧に言い換えるなら?熟語の言い換え表現

書き言葉で使える“考える”の言い換え表現をご紹介します。

【検討】

“検討(読み方:けんとう)する”は、よく調べて考えること。目上の相手に依頼する際にも、自分が考えるときにも使える言葉です。相手が考える際は「ご検討」と尊敬語にしてください。

◆例文(1):本件について、ご検討のほどお願い申し上げます。
◆例文(2):社内で検討のうえ、お返事いたします。

【一考】

“一考(読み方:いっこう)”は、一度よく考えてみること。「考えてから返事をしてほしい」というニュアンスで依頼文の中でも使われています。

◆例文:この条件でご一考いただけると幸いです。

【勘案】

“勘案”(読み方:かんあん)は、いろいろと考えること。

◆例文:社内のさまざまな声を勘案して、社内規程を改訂いたしました。

【吟味】

“吟味”(読み方:ぎんみ)は、物事や内容を詳しく調べて選ぶこと。

◆例文:新たな原材料を選ぶ際には、よく吟味する必要がある。

【熟考】

“熟考”(読み方:じゅっこう)は、よく考えること。

◆例文:社内のメンバーと熟考のうえ、お返事いたします。

【思案】

“思案”(読み方:しあん)は、あれこれ考えること。考えにふけっている様子を表します。

◆例文:彼は、この問題をどうやって解決すべきか思案に暮れています。

【考察】

“考察”(読み方:こうさつ)は、物事を明らかにするために、よく調べて考えること。

◆例文:急激な需要の低下について、多表面から考察する必要があります。

【思料】

“思料”(読み方:しりょう)は、あれこれと思いをめぐらすこと。弁護士ら法律関係者、公務員などの中で使われる硬質な表現です。

◆例文:過去の事例を参考にして、対応策について思料いたします。

「考える」を慣用句や和語で言い換えるなら?

「考える」を慣用句や和語で言い換えるなら?

“考える”の慣用句・和語の言い換え表現です。熟語に比べてやや柔らかな印象になります。

【知恵を絞る】

考えを巡らせ、ありったけの知恵を出して対応策などを考案すること

◆例文:みんなで知恵を絞って、いいものを作り上げましょう。

【慮る】

“慮る”(読み方:おももんぱかる)は、よく考えること。

◆例文:彼女の事情を慮ると、強く責めることができない。

【顧みる】

“顧みる”(読み方:かえりみる)は、過ぎたことを思い起こして考えること。特に、自分の過ちなどを振り返るときは“省みる”の字が使われます。

◆例文今回の件を顧みると、改善すべきがいくつかありました。

【鑑みる】

“考える”と語感は似ていますが、ただ考えるのではなく、考える材料があり、それに照らし合わせるときに使います。原則として“~に鑑みる”の形で使います。

◆例文:昨今の情勢に鑑みて、生産量を抑えるべきだ。

信頼感を損なわずに「取り組む姿勢」を示すコツ

信頼感を損なわずに「取り組む姿勢」を示すコツ

何かに取り組む姿勢を示すときに、伝える相手や場面に合わせて言葉の使い方を変えることが求められます。

例えば、顧客からの依頼に返信する際、「ちゃんと考えていきます」と答えるのと「鋭意取り組んでまいります」と答えるのとでは、印象はずいぶん異なります。カジュアルな言葉遣いとあらたまった言葉遣いでは、相手に伝わる真剣度が変わることもあります。

その逆に、親しい相手の質問に対し、難しい熟語を並べて答えることで、煙に巻いたような印象を与えることもあるかもしれません。

相手との関係性や場面に応じて、適した言葉を選び、円満なコミュニケーションにつなげていきたいですね。

 

取材・文/北川和子

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吉田裕子
吉田裕子

国語講師。「大学受験Gnoble」やカルチャースクール、企業研修などで教えるほか、「三鷹古典サロン裕泉堂」を運営。10万部突破の著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)など、言葉や敬語、文章術、古典に関する発信も多い。近著に『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)、『見るだけ・聴くだけで語彙力アップ デキる大人の話し方』(主婦の友インフォス)。東京大学卒業。

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