「電話で好印象を持ってもらうと、その後の関係性の構築にも役立ちます」と話すのは、キャリア形成やビジネスマナーを専門とするライフスタイリストの北條久美子さん。
今回は、北條さんに電話応対の基礎やちょっと困ったケースの対応例についてうかがいました。
電話応対でよく使うフレーズや準備しておくもの
nullまずは、基本的な電話応対の用語をおさらいしておきましょう。
・電話に出たとき・・・「いつもお世話になっております」
・電話を切るとき・・・「失礼いたします」
・同僚宛ての電話で折り返し電話を頼まれたとき・・・「念のため御社の電話番号をうかがってもよろしいでしょうか」
・相手の名前や会社名を聞き逃したとき・・・「申し訳ございません。お名前(御社名)をもう一度お聞かせ願えますでしょうか」
・同僚宛ての用件を聞いたとき・・・「私、○○が承りました」
電話のやりとりで交わされる情報量は、かなりのもの。相手の連絡先や社名を電話メモとして残しておく必要が生じるかもしれないので、かならずメモとペンは手元に用意しておきましょう。
電話を取り次ぐ相手が不在の場合はどうする?
null電話を受けたものの、取り次ぐ社内の相手が不在のときには、「恐れ入りますが、あいにく課長の○○は外出しており、○時頃戻る予定です」などと相手に伝えます。緊急度に応じて、以下のような提案をします。
例1:私でよければ伝言を承りましょうか。
例2:折り返しお電話するよう申し伝えます。
例3:16時ころ戻る予定ですが、いかが致しましょうか。
こちらから質問すると、相手がどのようにしたいか返答が返ってくると思います。
電話を避けたほうがいい時間はある?電話をかける際に気をつけるべきマナー
null続いて、こちらから電話をかけるときのマナーです。
フレックス勤務を導入してランチの時間が定まっていない会社は珍しくないのですが、それでも多くの人がランチ休憩を取る12時~13時に電話をかけるのは避けましょう。
また、月曜の朝はミーティングやメール返信などで忙しい時間を過ごしている人が多いと思いますので、急ぎの場合を除き始業直後の電話は避けた方が無難です。
終業時間を過ぎてからの連絡はメールに切り替えるなどの配慮も必要となります。
ビジネスマナーでは、「電話をかけた方が先に切る」のが基本。相手がお客様の場合は、相手が切るのを待ってから受話器を優しく置きましょう。
「お待たせいたしました」を使う目安は?
null電話を受ける際、「お待たせいたしました」を使う時間を厳密に定義づけるのは難しく、社内でも独自のルールを定めている会社があるかもしれません。
目安としては、電話のコールが3回以上鳴った後は「お待たせいたしました」、5回以上で「大変お待たせいたしました」という一言を添え、待たせてしまったことを軽くお詫びするといいでしょう。
待たせていいのは何秒まで?電話を保留にするときの注意点は?
null電話を保留する際に注意しておきたいのが、相手を待たせる理由をきちんと伝えることです。
【例】
「代わりますので少々お待ちください」「調べますので少々お待ちください」「手元に書類を用意しますので、少々お待ちください」…etc.
相手が保留の時間を「長い」と感じるのは、30秒~1分程度と言われています。もし、保留時間が長くなるようだったら「申し訳ありませんが、折り返しお電話いたします(させます)ので、少々お時間頂いてもよろしいでしょうか」とお詫びし、折り返し電話するようにします。
折り返し電話のマナー
null取引先から電話をもらったことに気づいたら、電話ををもらった理由を推測しながら、資料や該当のメールを用意してからかけ直すと会話がスムーズに進みやすくなります。
また、電話をかけたときには「先ほどはお電話を頂いてありがとうございました」「お電話出られなくてすみませんでした」と一言伝えると誠意が伝わりやすくなるでしょう。
電話応対でよく使うフレーズとNGなフレーズ
null最後にビジネスシーンでの電話応対において使っていいのか悩む人が多い2つの言葉をご紹介します。
(1)第一声の「もしもし」はOK?
“もしもし”は、電話でよく使われる呼びかけの言葉で、“申し申し”が変化した語だと言われています。
電話の声が聞き取りづらくなったときや、聞こえているかどうかの確認などのために使われています。
電話を取ったときの第一声で「『もしもし。○○商事です』という使い方をしてもいいのか」という疑問を持っている方が多いようですが、ビジネスシーンにおいては、電話を受けるときの第一声で「もしもし」を使う場面はほとんどありません。
(2)切るときの「ごめんください」はOK?
「ごめんください」は人の家を訪問したときや、別れ際のあいさつの言葉です。電話を切るときに「ごめんください」と言うのは必ずしも間違いではないのですが、少々古風な印象を与えます。ビジネスシーンにおいては、電話を切るときには「失礼いたします」と言い方がポピュラーです。
社名を名乗らずに電話取り次ぎを要求する相手には?
nullしばしば、社名や名前を名乗らずに特定の社員につなぐように要求する電話が珍しくありません。ホームページに掲載された情報をもとに、営業目的でかけている例もあるようです。
社名を聞いて相手が名乗らない場合は、「お名前を聞いてからでないと、おつなぎすることができないないことになっております」と伝えましょう。
今回は、北條久美子さんに電話応対の基本やよくある困ったケースについて解説していただきました。
電話の応対は、ビジネスマナーの基本です。電話特有の“定型句”がありますから、それらを身に着けておくことで、電話の苦手意識はずいぶん軽減されるのではないでしょうか。
【取材協力】
北條 久美子
東京外国語大学を卒業し、ウェディング司会・研修講師を経て、2007年 エイベックスグループホールディングス株式会社人事部にて教育担当に。2010年にキャリアカウンセラー・研修講師として独立。全国の企業や大学などで年間 約2,500人へビジネスマナーやコミュニケーション、キャリアの研修・セミナ―を行い、顧問として企業の人材育成や教育体系の構築にも携わる。現在はライフスタイリストとしてワーク(仕事)寄りだった人生を、生きること=ライフにシフト。睡眠マネジメントやマインドフルネスなどをワークに取り入れ、自分らしく、かつ生き方(ライフスタイル)を美しくすることを自らも目指し、それを広める場作りに力を入れる。著書に『ビジネスマナーの解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『働き方のセブンマナー』(講談社)ほか。