話をうかがったのは、キャリア形成やビジネスマナーを専門とするライフスタイリストの北條久美子さんです。名刺交換の基本から、複数人同士の名刺交換のマナーや注意点についてお話をうかがいました。
まずは「基本の名刺交換」の流れをおさらい!
nullまずは、名刺交換の基本的な流れをおさらいしましょう。
STEP1:名刺を手に正面に立つ。机やテーブル、物を越えた名刺交換はNG。
STEP2:目を見て社名と名前を言い、自分の名刺を右手で持って差し出す。
STEP3:相手の名刺の余白を持って「お名刺頂戴します」と言う。
STEP4:名前を口に出して確認。顔を見て「○○さまでいらっしゃいますね。よろしくお願いします」。
STEP5:着席後は相手の名刺を名刺入れの上に。
名刺は訪問者から出すのが基本とされていますが、訪問先の相手から先に出されることもあるでしょう。もし、順番が逆になってしまっても焦ることはありません。
複数の相手と名刺交換する場合の順番
null自分の側と相手の側が複数人同士で名刺交換をする場合は、役職が上の人同士から順に名刺交換をしていくのが基本です。
例えば、部長と部下の2人で相手の会社に訪問し、訪問先の同席者も部長と部下だった場合。まず、部長同士が名刺を交換し、部長と部下がそれぞれ交換。最後に部下同士が交換するのが基本的な流れ。
しかし、例えば自社7人、相手の会社が8人で新規プロジェクトの顔合わせというような場合では、マナー通りにいかないこともあります。
もちろん、役職者同士の名刺交換を待って順番に交換していく場合もありますが、時間短縮のために順不同に名刺交換を進めていくシーンもよく見受けられます。
名刺交換の場では、“イレギュラー”な事態がよく起こります。型を守るのがマナーではなく、その場にふさわしい行動をとることが望ましいと言えるでしょう。
複数人同士の名刺交換で「受け取った名刺」はどうする?
複数人同士の名刺交換では、名刺を受け取った後の振る舞い方も大切です。目の前の相手と名刺交換した後は、名刺入れの上に名刺が乗っている状態。その名刺を名刺入れの下にまわし、また次の相手から名刺を受けとります。
役職順に名刺を交換して、その都度順番に下に重ねていくと、着席した後に名刺を順番通りに並べることができます。
交換した名刺の置き方・しまうタイミング
nullひとつ覚えておきたいのが、名刺を交換するということは、相手の大切な情報をお預かりするということ。“名刺は相手の分身”とも言われていますから、相手の名刺は大切に扱います。
頂いた名刺をていねいに扱っていることを態度でも示します。名刺を机の上に並べるときには、役職が一番上の方の名刺を自分の名刺入れの上に置きます。
相手の人数が多かったら、横一列に並べることもあります。名刺を並べる位置は、机の端に置くと落としてしまう可能性がありますので、落としにくい場所に並べましょう。
名刺をしまうタイミングは?
会社の案内を広げたり、商品を並べたりするときには、「お名刺、汚れるといけないのでしまわせて頂きますね」と一言ことわってから丁寧にしまいます。20分~30分程度のあいさつであれば、終始並べたままでも問題ありません。
繰り返しになりますが、名刺の取り扱いは丁寧に、そして臨機応変に行動するようにしましょう。
意外と知らない「名刺の扱い方」の注意点・NG例
null最後に、名刺交換にまつわる注意点をご紹介します。
(1)相手の名刺の会社のロゴを持たないようにする
名刺を受け取る際には、相手の名前や会社のロゴが隠れないように余白を持ちます。
(2)名刺と定期入れを兼用しないようにする
相手の大切な名刺を、自分の日用品と一緒にするのは避けます。頻繁に出し入れする定期入れから名刺を落としてしまうことがあるかもしれません。
(3)もらった名刺を名刺入れにためないようにする
頂いた名刺がたくさんたまっていると、その厚みで油断し、自分の名刺を入れ忘れてしまうことがあります。こまめに名刺ホルダーに移しかえましょう。
(4)名刺交換の際「相手よりも名刺の位置を下げる」マナーは気にしすぎなくてOK
少し前には、目上の相手には自分の名刺を出す位置を下げるというマナーが流行している時期もありましたが、最近ではこのようなマナーが使われる機会は少しずつ減っています。
(5)「折れていたり、汚れていたりする名刺を渡さない
相手から頂いた名刺を丁重に使うのは大切なビジネスマナーですが、きれいな名刺を渡すことも大切です。ビジネス界では、「名刺はその人の分身」などと言われることがありますから、名刺が折れ曲がったり汚れがついたりしないよう、名刺入れにきちんと収納しておきましょう。
その他の覚えておきたい細かい名刺マナー
名刺を忘れたときは…
名刺はビジネスパーソンにとって必携アイテムのひとつですから、忘れることは避けたいのですが、万が一切らしてしまったときには「申し訳ありませんが、名刺を切らしておりまして」と伝えましょう。
いただいた名刺のメールアドレスに名刺をお渡しできず失礼しました、とメールを入れておくと相手に必要な情報が届いて良い印象を与えることができます。もちろん次回お会いした際にお渡しすることも忘れずに!
「訪問者から出す」のがマナー?
名刺は「訪問者から出す」とは言われていますが、その場の雰囲気に応じて対応します。若いうちにはいつでも自分から出すつもりでOKです。
今回は、名刺交換の基本や注意点についてご紹介しました。
名刺交換は、マナーを意識しながら、応用力を身に着けていくことが大切です。また、名刺は個人情報が詰まっているもの。大切に扱っていることを態度でも示しましょう。
【取材協力】
北條 久美子
東京外国語大学を卒業し、ウェディング司会・研修講師を経て、2007年 エイベックスグループホールディングス株式会社人事部にて教育担当に。2010年にキャリアカウンセラー・研修講師として独立。全国の企業や大学などで年間 約2,500人へビジネスマナーやコミュニケーション、キャリアの研修・セミナ―を行い、顧問として企業の人財育成や教育体系の構築にも携わる。現在はライフスタイリストとしてワーク(仕事)寄りだった人生を、生きること=ライフにシフト。睡眠マネジメントやマインドフルネスなどをワークに取り入れ、自分らしく、かつ生き方(ライフスタイル)を美しくすることを自らも目指し、それを広める場作りに力を入れる。著書に『ビジネスマナーの解剖図鑑』(エクスナレッジ)、『働き方のセブンマナー』(講談社)ほか。