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「あやかる」の意味と使い方…「令和にあやかる」はNG?

【仕事も人間関係も円滑にする大和言葉#18】

“あやかる”という言葉はどんなときに使うことができるのでしょうか。もしかしたら、間違った使い方をしている方も多いかもしれません。そこで今回は、意外と難しい“あやかる”の使い方を掘り下げていきます。

解説して頂いたのは、『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。

「あやかる」の意味は?どんな時に使うといい?

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“あやかる”は、幸せな人の影響を受け、自分も良い状態になること、なりたいと願うことを意味します。ビジネスシーンにおいては、相手の成功を祝福するときに相手をたてるような気持ちをこめて使うことがあります。

また、人だけでなく、力があるもの、世の中で脚光を浴びているものから良い影響を受けたいと願って使われることもあります。

プライベートにおいては、長寿、結婚、出産、受験の合格など、相手の“おめでたいこと”をお祝いしたり、自分も幸福を得たいと願う気持ちをこめて使われています。

「あやかる」の例文は?

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続いて“あやかる”の例文を通じて、使い方をマスターしていきましょう。

【「あやかる」を使った例文】

・(取引先に)業績が良くてうらやましいですよ。我々もあやかりたいものです。

・(同僚に)営業成績トップのAさんにあやかって、私もAさんと同じ手帳を買ってみました。

また、前述したように、人以外のものを対象として使うこともあります。

・新元号の「令和」にあやかり、「令」の字を使った商品を発売します。

「あやかる」の使い方の注意点は?

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しばしば、“あやかる”と“ちなむ”を混同している例が見受けられます。

【「あやかる」のNG使用例1】

・誕生日が2月2日だったことにあやかって、“二郎”と名づけた。

→2月2日が話し手にとって特別な日である場合を除き、通常は“ちなんで”を使います。

また、“あやかる”は、基本的には縁起の良い言葉ではあるのですが、相手との関係性や場面によっては皮肉・ひがみのように受け取られることもあるので注意が必要です。

【「あやかる」のNG使用例2】

・私は運が悪いから、幸せそうなあなたに心からあやかりたいものだ。

→幸せを祝う心よりも、話し手の不遇が強調されています。受け手によってはどうリアクションしたらよいのか、困ってしまう場合があると想定されます。

「あやかる」を言い換えると?

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続いて、“あやかる”の言い換え表現をチェックしていきましょう。

(1)「幸せのお裾分けをいただく(もらう)」

相手の幸せを見聞きして、自分も幸せな気持ちになったことを表現するときなどに使われています。

【「幸せのお裾分けをいただく」を使った例文】

・本当に素晴らしい結婚式でした。幸せのお裾分けをいただき、ありがとうございました。

(2)「おこぼれに預かる」

“おこぼれ”とは、人の得た利益の余りを指します。成功している相手に対して、自分を謙遜しつつ「おこぼれに預かりたい」と冗談交じりに言うこともあります。

【「おこぼれに預かる」を使った例文】

・Bさんの最近のご活躍には目を見張るものがあります。我々もおこぼれに預かりたいほどです。

 

今回は、吉田裕子先生に“あやかる”という言葉の意味や使い方について解説して頂きました。

“あやかる”は、相手の幸せや成功を祝福したり、憧れの気持ちを伝えるときに便利な表現です。「おめでとうございます」に続く言葉に迷ったら、活用してみてはいかがでしょうか。


 

【取材協力・監修】

吉田裕子

国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。

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