お話をうかがったのは『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。“おこがましい”の意味や使い方、避けた方がよい使い方についてお話をうかがいました。
「おこがましい」の意味は?
null“おこがましい”は、古く使われている大和言葉です。本来の語形は“をこがまし”。“ばかげている”という意味のある“をこ”に、接尾語の“がまし”がついた形容詞で、平安時代に書かれた『源氏物語』の中でも使われています。
古文では“ばかばかしい”“みっともない”
「おこがましい」はどんな時に使うといい?話し言葉でも使える?
nullビジネス会話では、“おこがましい”は主に“
・相手に依頼をするとき
・目上の相手に指摘や意見をするときの「クッション言葉」として
・目下の相手に対して態度を改めるよう、注意するとき
基本的には自分を下げる言葉です。相手に対して「
続いて、それぞれのシーンに応じた使用例をご紹介していきます。
【例文1】依頼をするとき
・おこがましいお願いをして申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします。
【例文2】目上の相手に指摘をするとき
・私の立場で意見を申し上げるのはおこがましいのですが、やはり、今回の件は再考が必要だと思われます。
【例文3】上司が部下に態度を改めるよう注意するとき
・お客さんに対しておこがましいことを言ってはいけないよ。
話し言葉でも書き言葉でもどちらでも使うことができます。
「おこがましい」の使い方の注意点は?
null“おこがましい”は、先ほど申し上げたように、“身の程知らずにも、差し出がましい態度を取る自分が恥ずかしい”という謙遜の意味をこめて使われています。
しかし、自分の方が相手よりも立場や年齢が上で、経験が豊富なことが明らかな場合、“おこがましい”を使うことで嫌みっぽく威圧的に聞こえてしまう可能性があります。
【「おこがましい」のNG使用例】
・(先輩が後輩に対して)私が言うのもおこがましいんだけど、
→この場合は、ストレートに「
「おこがましい」を言い換えると?
null“おこがましい”の言い換え表現としては、以下のようなものがあげられます。
・厚かましい
・差し出がましい
・ぶしつけ
いずれも、“厚かましいお願いで恐縮ですが……”というように、依頼の際のクッション言葉として使うことができます。
今回は、“おこがましい”の意味や使い方をご紹介しました。
相手に言いにくいことを伝えなければならないとき、“おこがましいのですが”というクッション言葉を用いることで、与える印象を和らげることができます。いざという時に備えて覚えておくと役立つ言葉だと言えるでしょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。