『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんに“おかげさまで”の使い方についてうかがいました。
「おかげさまで」の意味とは?
null“おかげさまで”は、感謝の心を表す言葉。直接的、間接的にお世話になった人に対して幅広く使うことができます。
神仏の加護の意味がある“御蔭”(おかげ)が語源とされていますが、現在では宗教色が薄まり、幅広いシーンで使われています。
「おかげさまで」は仕事ではどんな時に使うといい?例文は?
null“おかげさまで”の使い方は、大きく分けて2パターンに分けることができます。
(1)直接的な感謝
相手の協力や親切、理解に感謝するときに使います。
【例文】
・傘をお返しします。おかげさまで濡れずに済みました。
・おかげさまで商談がまとまりました。ご協力ありがとうございました。
(2)間接的な感謝
相手を含めた世間に対して“いろんなものに助けられて”という感謝の気持ちをこめて使います。例えば、近況をたずねられて「おかげさまで順調です」と答えると、「順調です」と答えるより謙虚な印象となります。
【例文】
・おかげさまで10周年を迎えることができました。
・おかげさまで売り上げが順調に伸びています。
「おかげさまで」の使い方の注意点やよくあるNG例は?
null“○○さん(様)のおかげさまで”
【「おかげさまで」のNG使用例】
・○○さんのおかげさまで、成功することができました。
→この場合は、“○○さんのおかげで”が正解。
「おかげさまで」を言い換えると?
null続いて、“おかげさまで”の言い換え表現をご紹介します。
(1)お力添えがあってこそ
“力添え”は、力を添えて助けるという意味。間接的な感謝、さらには単に謙虚さを表現する意味まで含む“
【例文】
・御社のお力添えがあってこその成果です。
(2)おかげをもちまして
“おかげさまで”とほぼ同じように使うことができます。
【例文】
・皆様のおかげをもちまして、盛況のうちに最終日を迎えることができました。
・おかげをもちまして、このたび退院いたしました。
(3)ご助力を頂き(賜り)
おもに、直接お世話になった相手に対して使われています。
・この度はご助言・ご助力を頂き、感謝申し上げます。
・貴社のご助力を賜りましたことをありがたく存じております。
(4)ありがたいことに
現在の状態がうまくいっていることについて、間接的な感謝の意を表します。
・ありがたいことに、新商品が好評なんですよ。
・ありがたいことに、健康診断の再検査では異常が見つかりませんでした。
今回は、“おかげさまで”の使い方を解説しました。
感謝の気持ちは出し惜しみせずに伝えて、周囲の人たちと円満な関係を維持したいものです。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。