解説して頂いたのは、『
「痛み入ります」の意味とは?
null“痛み入る”は、相手の手厚い配慮、好意、親切などに対して恐縮することを意味します。
「ありがとうございます!」
「痛み入ります」はどんなときに使うといい?
nullビジネスシーンにおいて、“痛み入ります”は普通に行われる以上の細やかな心配りをしてもらったとき、こちらが恐縮するほどのありがたい気持ちを表すために使います。
例えば、取引先にこちらが求めた以上の対応をしてもらったときなど、相手に負担がかかっているのではないかと思うほどに親切な対応や心配りを受けたときに、感謝と恐縮の気持ちをこめて使うことができます。
話し言葉の中ではあまり聞かれることはなく、主にメールや手紙など書き言葉の中で使われています。
私生活においては、地域活動や、親戚づきあいにおいて、たくさん協力をしてもらったときや、高価な贈り物・お祝いを頂いたときなど、深い感謝の気持ちを表すために書き言葉の中で使うことがあります。
「痛み入ります」の例文は?
null続いて、“痛み入ります”の例文を通じて使い方をチェックしていきましょう。
【「痛み入ります」の使用例】
・お心遣い痛み入ります。
・本日は足元の悪い中、重いサンプルを持参いただき、まことに痛み入ります。
・勝手を申し上げたにもかかわらず、社内で調整をしてくださったようで、痛み入ります。
このように、感謝と申し訳ない気持ちが入り混じったような気持ちを文章で伝えるときに適した言葉です。
「痛み入ります」の使い方の注意点は?
null「痛み入ります」は、少し古風な表現なので、相手によっては通じない可能性があります。また、恐れ多いほどの感謝を表す言葉なので、「ありがとう」
【NG例文(1)】
・おみやげのクッキーを頂きました。お気遣い痛み入ります。
→恐縮するほどの高価な物品でなければ、「ごちそうさまでした」や「ありがとうございました」でOK。
“恐れ入りますが”“恐縮ですが”
【NG例文(2)】
・痛み入りますが、納期を2日早めることは可能でしょうか。
→この場合、「恐れ入りますが」「申し訳ありませんが」を使う。
「痛み入ります」を言い換えると?
null続いて、「痛み入ります」の言い換え表現をご紹介します。
(1)「恐れ入ります」
相手にかける迷惑や手間を申し訳なく思う気持ちや、相手の好意をありがたく思う気持ちを表す言葉です。話し言葉、書き言葉において高い頻度で使われています。相手に依頼したり、声をかけたりするとき、“恐れ入りますが”と前置きをすることで、与える印象を和らげることもできます。このような言葉は“クッション言葉”と呼ばれています。
【例文】
・本日は御足労いただき、恐れ入ります。
・恐れ入りますが、もう一度お名前をうかがってもよろしいでしょうか。
(2)「かたじけなく存じます」
“かたじけない”は、分を超えた好意に対する感謝を表す言葉で、“身に染みてありがたい”“恐れ多い”といった意味があります。
【例文】
・お心遣い、かたじけなく存じます。
(3)「恐縮です」
申し訳なく感じて、恐れ入ることを意味します。“恐縮ですが”というように、依頼をするときのクッション言葉としてもよく使われています。
【例文】
・お忙しいところ大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
「痛み入ります」と言われたらどう返す?
null「痛み入ります」は多くの場合、メールや手紙の中で使われています。相手が恐縮の気持ちを表しているため、相手との関係性によって「お気になさらず」「お役にたてていれば光栄です」「こちらこそお気遣いいただきありがとうございます」などと返信します。
今回は、国語講師の吉田裕子さんに「痛み入ります」の意味や使い方について解説頂きました。
感謝の気持ちや、申し訳ない気持ちを表す言葉の引き出しを多く用意しておくと、人間関係の構築にも役立ちます。普段使うことはなくても、「痛み入ります」と言われることがあるかもしれないので、覚えておくといいでしょう。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。