「水がしみている?」と感じる原因と解決方法
nullゴアテックスは、雨は通さず汗による内側からのムレは逃すという「防水透湿性」をもち、軽量で防風性も高い、とても優秀なファブリック素材。多くのアウトドアブランドのウェアに採用されています。
機能素材なので、お値段はそれなりにします。でも、一着あると登山やキャンプなど外遊びのアウターから日々のレインウェアまで、幅広いシーンで活躍。中に着込めば、季節を問わず着られるのも便利なところです。
長く愛用するコツは、まめな洗濯
防水性のゴアテックスウェアのはずが、着たときに水がしみているような感じがしたり、冷んやりすることがあります。雨を通しているわけじゃないのに、なぜ? ゴアテックス素材を扱う『日本ゴア』マーケティングの伊藤由里子さんに聞きました。
「ゴアテックスの表面には、水を弾く撥水加工が施されているのですが、泥や雨などの表面汚れにより機能性が落ちてしまいます。水をコロコロ弾かなくなり、しみるような感じがするのは、このせいです」(以下「」内、『日本ゴア』マーケティング 伊藤由里子さん)
「汗をかいても湿度が抜けず、冷んやりする場合は、汚れがたまってしまっている場合が多いです。とくに首元、手首は皮脂がつきやすく、脇も汗が抜けるときに汚れがどんどん蓄積します。汚れをそのままにしていると、内側に水を通さないため縫い目に貼ってあるシームテープの接着剤に汚れがたまり、剥がれにつながります」
だからこういう時は、まず洗濯してみましょうと伊藤さん。
「洗うと、本来の機能性が復活するかもしれません!」
「洗うと機能性が落ちる」は思い込み
いくつかのコツさえ押さえれば、洗い方は簡単。家庭用の洗濯機と洗剤でお手入れできます。ここからは伊藤さんにアドバイスをもらい、編集部スタッフが8年愛用しているウェアを筆者が洗ってみます。
洗濯すると機能性が落ちるかと思い、滅多に洗っていなかった編集部スタッフ。伊藤さんは「残念ながらそう思っている方がとても多いのですが、洗わない方が、汚れによりウェアが傷んでしまいます」とずばり。
ゴアテックスウェアは、登山やアイスクライミングなど、過酷な環境で体を守るために開発された素材を使っています。だから、洗濯機でグルグル回すぐらい、へっちゃらと言っても過言ではありません。
「他の衣類と同じように、洗濯頻度は“着たら洗う”が正解です。ただし、生地を強くひねるなど、通常の動きにはない方法は避けたほうがいいです。だから、手洗いなら押し洗い。水気を切る際は、ギュッと絞るのではなく、振ってはらうようにして水を落とします。そもそもゴアテックスウェアはほとんど保水しないので、絞ってもそれほど脱水にはならないんですよ」
家庭用の洗濯機で洗う方法
null【用意するもの】
家庭用洗剤
「汚れと同じく洗剤の成分や香りも残っていると、ゴアテックスの撥水性が落ちる原因になります。水に溶けにくい粉末洗剤ではなく、衣類用の液体洗剤を、少なめに使ってください。漂白剤、柔軟剤、しみ抜き剤の使用は避けましょう」
【洗い方】
(1)製品についている洗濯表示を確認する。
「ゴアテックスウェアとひと口に言っても、タウンユースできるものから山などで着るハイスペックなもの、いろいろな素材を組み合わせたものなどさまざまあります。必ず、ブランドや製品ごとの洗い方をチェックして、それに従ってください」
(2)すべてのファスナーとポケットは完全に閉じ、緩んだフラップやストラップはしっかり留める。
「生地に引っかかったり、付属品が傷むのを避けるため、ファスナーや面ファスナーは完全に閉じます」
ポケットの中に何か入っていないかもチェック。うっかり入れたままにしがちな、小銭や鍵をはじめ、付属している収納袋なども入っている場合があります。
(3)洗濯機に入れて、40℃以下のぬるま湯で洗濯する。
「そもそも生地はタフに出来ているので、ネットには、入れても入れなくても大丈夫です。他の衣類と一緒に洗うときにファスナーなどの引っ掛かりが気になる場合は、ネットに入れると安心でしょう」
(4)すすぎは2回以上、しっかりと。脱水は短時間で軽く行なう。
「ポイントはよくすすぎ、洗剤の成分を生地に残さないようにすることです。何も残っていない状態でこそ、ゴアテックスの機能性が発揮されます」
2回以上すすぎ、2分ほど軽く脱水して洗いあがりました。襟元、袖口などを確認すると、他より色の濃い部分が……。洗濯機で一度回しただけでは、汚れが落ちきっていないのかもしれません。
「シミや頑固な汚れがある場合は、通常のお洗濯と同じく、最初に洗剤を含ませたブラシなどでトントンと叩き洗いをしてみてください。その後で、洗濯機で洗います。もし、それでも落ちない場合は、叩き洗いを繰り返し、しっかりとすすぎます」
【乾かし方】
十分すすいだ後、水をきったら、日陰の吊り干しでしっかり乾かす。
乾燥機を使用する場合は、高温を避け、中温で乾かします。
「他の衣類と同じく、直射日光の当たる日向は、色あせなど、生地の傷みの原因になる場合があります。だからおすすめは、風通しのよい日陰です。
ファスナーはすべて開け、ポケットは表に出しておくとさらに乾きやすいですよ」
干し始めて3時間ほどして確認すると……もう乾いている! この乾きのよさも、ゴアテックス素材の素晴らしいところ。
試しに数か所、水を垂らしてみると、コロコロと水の玉が転がりました! 撥水性も、ちゃんと回復しています。
撥水性が落ちたら「熱処理」→「撥水剤」の出番
きちんと洗濯をしても表生地の撥水性が落ちてきたと感じる場合は、洗濯・乾燥後に熱処理すると、撥水性が回復するかもしれません。
「乾燥機の場合は、中温で、さらに20分間温風乾燥してください。アイロンの場合は、低温、スチームなしの設定で、必ず当て布をしてアイロンをかけます」
熱処理をしてもウェアの表面が水を弾かなくなった場合は、最終手段として撥水剤をスプレー。撥水の再加工を行ないます。実は、こまめにスプレーしていた編集部スタッフ。生地本来の撥水性が発揮されているうちは、必要のないことでした。
「最初は撥水加工で水を弾いていたウェアが、着たり洗濯をするごとに、少しずつ表面の加工が落ちていきます。
まずは、しっかり洗濯をして汚れを取りのぞくこと。そうすれば素材自体の防水透湿性は保たれます。その上で、熱加工をして撥水性を戻すこと。洗っても熱処理しても撥水が戻らない場合は、最終手段としてスプレーを使いましょう。生地本来の機能があるうちは使うほうがもったいないですよ」
保管は、ハンガーにかけて風通しがよい場所で
「ゴアテックスウェアも、他の衣類と同じ。なるべくハンガーにかけて、風通しのよい、湿気がたまらない場所で保管してください」
折り畳み、付属の収納袋でコンパクトに収納していた編集部スタッフ。場合によってはバックパックに入れたままにしていました。
「折りたたむと繊維に負荷がかかります。また、コンパクトになるのもゴアテックスウェアの魅力ではありますが、汚れた状態でギュッと詰め込んでいると、カビの原因にもなります。きちんと洗濯、乾かして、広げておくほうが長持ちしますよ」
お手入れすれば、10年近く愛用している人もいるほど長く活躍するゴアテックスウェア。ブランドによっては、長く大切に使ってほしいとリペア(修理)を受け付けているところもあります。年末の大掃除と合わせて、まずはご自宅でケアしてみませんか?
【取材協力】
GORE-TEXブランド
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote