ライフラインの復旧にかかる時間は?
null地震や水害などの災害時は、まず避難所へ行きます。しかし避難所は、あくまでも自宅に住めなくなった人たちの一時的な生活場所。居住可能であれば、慣れ親しんだ自宅で生活を続ける「在宅避難」に切り替えます。
「在宅避難で重要なのが、ライフラインに代わる手段の確保です。
ライフラインの復旧は、2011年の東日本大震災では、電気が1週間、水道は3週間、ガスは1番遅く5週間ほどかかりました。2016年の熊本地震では、電気と水道は1週間、ガスは2週間程度と、どちらも電気がいちばん早く復旧しています。
しかし、2024年能登半島地震は違いました。現在、電気とガスはほぼ復旧していますが、水道が一部復旧していません。主要な道路が寸断されてなかなか復旧作業が進まず、現地の皆さんは苦労されています」(以下「」内、旭化成ホームズ・山田恭司さん)
「食料」「水」「エネルギー」「トイレ」在宅避難の必需品
null避難生活では、飲料水の不足やトイレ数の不足から、水分摂取を控えがちに。すると、疲れやすさ、便秘、食欲低下、体温の低下などの健康被害も起きやすくなるそう。
「災害時も“食べる・飲む→排泄する、清潔に保つ”ことがとても大事です。そのためにも、最低3日分、+αで1週間分の食料、水を備えるよう国も推奨しています。エネルギー、簡易トイレも同様に考えられているようです。
なぜ最低3日分かといえば、72時間が生命確保の分岐点と言われ、災害発生後3日間は人命救助が優先されるからです。支援物資が届いたり、仮設トイレが設置されていったりするのは、それ以降と考えておきましょう」
「食料」と「水」はローリングストックで備蓄
「食べる・飲む」に欠かせない「食料」と「水」は、ローリングストックで備えます。
「ローリングストックについてはご存知の方も多いかと思いますが、農林水産省のホームページにある『家庭備蓄ポータル』には、1週間分の具体的なメニュー例も紹介されています。また、単身者向けや、幼児・お年寄り・疾患やアレルギーをもつ人など、要配慮者向けの食品ストックガイドもあるので活用してみてください」
「ローリングストックで大量の食料、水を収納するコツは、奥行きは浅く、重ね置きをしないこと。そして、全体が見えるようにして、賞味期限順に並べることです。
扉にも収納でき、中身が一目瞭然でわかるパントリーは、近年人気です。扉付きにすると、災害時に中身が飛び出ることも防ぎますし、パントリーに集約することで、災害時に部屋にものが散乱せず、災害後の復旧もスムーズです」
「乳幼児のいるご家庭の場合は、粉ミルクやレトルトの離乳食のほかに、日頃から好きなおやつも用意しておくとよいです。また、幼稚園や小学校に通うようになったお子さんの場合は、普段からレトルト食品を食べ慣れておくことも大切と言われています。
災害時は、大人だけでなく子どもも不安になるものです。好きな嗜好品や食べ慣れた食事がとれることで、心が落ち着く場合もあるでしょう」
電気は「ポータブル電源+ソーラーバッテリー」の併用
過去の震災を振り返ると3日間は停電する可能性がありますが、山田さん曰く「必要な情報を入手したり、連絡をとったりするためにも、スマホの充電は欠かせません。また、冷蔵庫も動いていると在宅避難しやすいです」。
では、どのように備えればよいのでしょうか?
「おすすめは、ポータブル電源とソーラーバッテリーの併用です。
スマホの充電には1時間あたり約15W、冷蔵庫を動かすには1時間あたり約50Wの電力が必要です。たとえば、バッテリー容量が約700Whのポータブル電源があったとして、スマホは3日間の電力をまかなえますが、冷蔵庫だけでも14時間ほどしか動かせません。
そこにソーラーバッテリーも加えると、晴天なら昼間に蓄電できるので、冷蔵庫も必要なときに一定時間点けて、消してと工夫する“間欠運転”なら使用可能になります。このほか、1時間あたり約100Wの電力が必要なテレビやライトなどの灯りも必要に応じて短時間なら点けられるので、在宅避難がしやすくなるでしょう。
ただしお湯は沸かせないので、カセットコンロも準備します。大人2人で1週間、在宅避難をする場合は、1人あたり6本使用として、ガス缶は12本ほど備えておくとよいと思います」
また、2024年能登半島地震では、真冬の避難生活での厳しい寒さも被災地を襲いました。
「避難生活では、エアコンやストーブなどの暖房器具が使えない可能性もあります。寒い時期の在宅避難では、衣類とカイロなどでできるだけ体を温め、家族がいる部屋を一部屋に限定して、人の発する熱が逃げないようにしましょう」
こうした在宅避難を想定して、あらかじめ集まる部屋を決め、一次的に断熱材を窓に張るのも有効。
「断熱材は、ホームセンターなどで手に入ります。カーテンを吊るすだけでも冷気の侵入を和らげることができますが、+αの備えができるとより安心です」
トイレは「携帯トイレ」を1人あたり1日5個×日数分
内閣府防災情報(平成28年4月内閣府)の『避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン』によると、東日本大震災では3日以上、仮設トイレがこないという避難所も少なくありませんでした。
「仮設トイレができるまで3〜7日間は『簡易トイレ』や『携帯トイレ』で凌ぐ必要があります。また2024年能登半島地震のように道路が寸断されると、それ以上の備えが必要な場合も。
仮設トイレは利用者一人あたり1日5回程度の使用を見込んでいます。ですから『簡易トイレ』や『携帯トイレ』を準備する場合も、1人あたり1日5個×日数分を用意しましょう。もし足りなくなったら、ポリ袋をしいて新聞紙に吸わせるという手もありますが、においの問題もあります」
ちなみに用を足したものはごみ袋に入れ、屋外にまとめて置いておきます。そして、ごみ収集が復旧したら、可燃ごみへ。
このほか、お風呂などに貯めた水で流すという方法も、よく聞きますが……?
「大きな地震の場合は避けたほうがよいです。下水道管がだめになっている場合、下の階や外の破損箇所であふれてしまう可能性もあります」
世界でも地震の多い国、日本。2024年能登半島地震を教訓にするためにも、また万が一の時を健やかに乗り切れるようにするためにも。今回教えていただいた備えから取り入れてみてはいかがでしょうか。
【資料提供】
旭化成リフォーム株式会社:イマドキそなえ
https://www.hebel-haus.com/reform/menu/imadoki.html
【取材協力】
ヘーベルハウス
旭化成ホームズ株式会社の戸建住宅・注文住宅ブランド。地震などの災害に強い構造に定評があり、安心で快適な暮らしを長く続けるための家づくりに取り組む。
公式HP:https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/index.html/
トータルレジリエンス(総合防災力)|ヘーベルハウス:https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/lp/resilience/index.html/
公式Instagram:https://www.instagram.com/hebelhaus_official/
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote