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コーヒードリッパー大活躍! これなら苦じゃなく続く「だし」のとり方集

旨みがしっかりと効いただしを使うと、味付けがシンプルになるので、料理時間がグッと時短に。減塩につながるので健康にもよく、ぜひ毎日の料理に使いたいものです。でも「自分でだしをとるのは面倒で続かない……」という人も多いのでは? 

そこで、『もっとおいしい、だし生活。』(祥伝社)の著者である梅津有希子さんが、驚くほど簡単なだしのとり方を教えてくれました!

自分にとって負担にならない「だしのとり方」を知ろう!

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以前は顆粒だしやだしパックを使用していたという梅津さんが、だしの魅力に気付き、和食の料理人や料理研究家、だしメーカーなど、多数のプロに取材してわかったのは、だしのとり方は十人十色だということ。

「数学のように正しい解答があるわけではなく、みなさん独自の方法でおいしいだしを抽出していました。そこで気付いたのは、“だしは自由でいい”ということ。おいしかったら自分のとり方で問題なし。それよりも大切なのは、続けられるかどうか。負担にならない方法じゃないと続きませんよね」

そこで、どうしたら毎日続けられるかを追求した梅津さん。挫折しない方法を模索した末、とっても簡単なだしのとり方を考案しました!

家庭でよく使う、かつお節、昆布、干し椎茸の3つを紹介します。

1:かつおだしのとり方・・・コーヒードリッパーで超簡単

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まずはだしの基本である、かつお節。高温の湯で抽出することで、香りや風味のよいだしをとれるのが特長です。

1人分をパパっととりたい時は「コーヒードリッパー」が重宝

梅津さんがかつお節のだしをとるのに使うのは、なんとコーヒーのドリッパー!

コーヒードリッパーにコーヒーを淹れる時に使うフィルターをセットして、小分けになったかつお節1パック(約5g)を投入。そしてコーヒーをドリップするのと同じ要領で、150〜180ccの熱湯をかつお節の上からゆっくりと注ぐだけ。とっても簡単です!

「1人分のだしをパッととりたい時は、この方法がものすごく便利! 汁物をササッと作りたい時、だし茶漬けを作る時、お鍋のだしが減ってきて少し足したい時などに重宝します。この方法で、私はだしをとるハードルが一気に下がりました」

ポイントは新品のコーヒードリッパーを使うこと。普段コーヒーを淹れているドリッパーにはコーヒーの香りが染み付いているので、だし用のドリッパーを1つ用意しましょう。

たくさんだしをとる時は鍋で!「キッチンペーペー」で濾せばらくちん

大量にだしが必要な時は鍋を使います。

まず鍋に水1Lを入れ、沸騰したら火を止めてかつお節30gを投入。かつお節が沈むまで1分ほど待ち、キッチンペーパーをのせたざるで漉します。冷蔵庫で2日ほど保存できますが、梅津さんはだしの風味を存分に味わうべく、一度に使い切ることが多いそうです。

「持ち手のついたざるを使えば、漉す時に熱くありません。ガーゼなどふきんで漉すと洗うのも干すのも面倒なので、私はキッチンペーパーを使いますが、最近はそれすら使わないことも多いです。ボウルの底にかつお節の粉が溜まりますが、食べられるものですし、特に気になりません。

“えぐみ”や“にごり”が出るので搾るのはNGと言いますが、そんなに味は変わらないので、家庭で使うなら搾っても大丈夫。私はもったいないので、思いっきり搾っちゃいます」

かつお節の種類で迷ったら…値段もお手頃な「花かつお」を

かつお節の種類は大きくわけて2つ。

1つは、かつおの頭と内臓を処理し、煮て燻しながら乾燥させた“荒節”。いわゆるスーパーでよく売っている「花かつお」です。

もう1つは、荒節の表面を削り、無害なカビを付けて熟成乾燥させた“枯れ節”。カビ付けには発酵・熟成の効果があり、旨味と香りがさらに増すため、料亭などで使われることが多く、手間がかかるので値段も割高に。

「私は普段使いには、値段も手頃な荒節の花かつおを惜しみなく使います。値段が高いと毎日続きませんし、分量をケチるとおいしいだしがとれないので、たっぷり使える花かつおがベスト。

枯れ節はちょっと特別な晴レの日に。お客様のおもてなしやお正月などのお祝い事、茶碗蒸しやだし巻き卵など、だしの旨味を存分に味わいたい時に使います」

おいしいだしをとるコツは、開封したてのかつお節を使うこと。開封直後から酸化が始まり、香りや風味が落ちていくので、開封後は常温ではなく冷蔵庫で保存するのがおすすめです。

2:昆布だしのとり方・・・麦茶ポットに入れて冷蔵庫で1〜2晩置くだけ

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特に関西で古くから愛されているのが昆布だし。昆布は80℃以上で煮出すと雑味やぬめりが出てしまうので、注意が必要です。

コツは「分量をちゃんと量る」こと

梅津さんが実践している方法はとっても簡単。麦茶ポットに水1Lとだし用の昆布20gを入れて、冷蔵庫で1〜2晩置いておくだけ。保存期間は冷蔵庫で1週間が目安。

水の硬度によって抽出時間が変わるので、軟水の関西は1晩、関東以北は2晩置いたほうがしっかり旨味の効いただしがとれます。鍋や火を使って煮出す必要がなく手軽にできるため、昆布だしが冷蔵庫にある生活が当たり前になったと梅津さんは話します。

「ポイントはひとつ、分量をちゃんと量ることだけ。

昆布の大きさ、厚さはさまざまなので、10cm四方やひとつかみといっても量はまちまち。そのため、おいしいだしをとるには、分量をしっかり量ることが大切です。

10gでも充分だしは出ますが、最初はちょっと濃いめのだしのほうが旨味を実感しやすいので、ぜひ20gで昆布だし本来のおいしさを味わってみて。濃い場合は水で薄めて使えばOKですよ」

昆布の種類に迷ったら…「真昆布」が味も濃くコスパよし!

だし用昆布の産地は、梅津さんの出身地でもある北海道。冷たい北の海が旨味をしっかり蓄えた昆布を育てます。

9割以上が北海道産で、知床半島の南・羅臼(らうす)が産地の“羅臼昆布”、北海道の最北端・利尻島を中心に収穫される“利尻昆布”、函館を中心に道南で採れる“真昆布”、襟裳岬など日高地方沿岸が産地である“日高昆布”の主に4種類。

「同じ条件でそれぞれの昆布だしをとって飲み比べたところ、明らかに産地によって味が全然違いました。羅臼昆布は旨味が濃くて、利尻昆布は上品なコクがあるのにスッキリ。この2つがブランド昆布として京都の料亭などで愛される理由にも納得です。

でもそれに負けず劣らず、真昆布もしっかり濃いだしが出ておいしい。日高昆布はだしとして使うとやや薄め。だしよりも煮昆布によく使われています。

私のおすすめは“真昆布”。羅臼や利尻は確かにおいしいのですが、そのぶん値も張るので普段使いには正直厳しい……。日高はスーパーで安く売られていますが、だしに使うと薄味でやや物足りない。

その点、真昆布はしっかり旨味の効いただしがとれて満足度もあり、価格も手頃です」

3:干し椎茸だしのとり方・・・保存容器に入れて冷蔵庫で1晩

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旨味成分が強く、あると便利なのが干し椎茸のだし。でも、味が強いため、入れ過ぎると干し椎茸の風味が立ち過ぎてしまうので、入れ過ぎには気をつけて下さい。

スープにスプーン1杯の干し椎茸だしを足すと、旨味とコクがグンとアップ

梅津さんは保存容器に干し椎茸2〜3個を入れ、水をひたひたに浸し、冷蔵庫で1晩置いて保存。“旨味の素”のような感覚でティースプーン1杯を隠し味に使っているそうです。

「スープ1杯に、ティースプーン1杯の干し椎茸のだしを入れるだけで、旨味とコクがグンと増します。他にもかつおだしや昆布だしにちょい足しすると、より深みのある味に。干し椎茸くささが出ず、手軽に使えるのでおすすめですよ」

種類の異なるだしを組み合わせて旨みアップ! 奥深き世界

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さらに、だしを組み合わせることで、旨味が飛躍的に増すと梅津さんは話します。

「かつお節はイノシン酸、昆布だしはグルタミン酸、干し椎茸はグアニル酸と、それぞれ旨味成分が違います。異なるだしを組み合わせることで、旨味がグッと増してよりおいしくなるのです。これぞ、旨味の相乗効果!

他にも煮干しや焼きあご、帆立の貝柱など、ぜひ好みのだしを組み合わせて、奥深いだしの世界を楽しんでみてください」

小さなストレスで、だし=面倒にならないためにも、省ける手間は省き、簡単にだしをとる方法を追求し続けたという梅津さん。この方法のおかげで、だしをとることが面倒ではなくなり、だし生活を続けられるようになったと話します。

本当にどれも簡単な方法ばかりなので、だしをとるのが苦手と思っていた人こそ、ぜひ試してみてください!

次回は、簡単なのに驚くほどおいしい“だしレシピ”を紹介します。


【取材協力】

梅津有希子・・・だし愛好家、ライター。1976年、北海道生まれ。雑誌編集者を経て、2005年に独立。雑誌やWebメディア、書籍を中心に暮らしや食についての執筆や講演を行う。現在は、だし愛好家として食のイベントなども勢力的に行っている。ドラマ化された『終電ごはん』(幻冬舎)など著書多数。公式サイト

 

【参考】

梅津有希子(2017)『もっとおいしい、だし生活。』(祥伝社)

 

取材・文/岸綾香

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