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「山芋」がスタミナ食材といわれるワケは?長芋のとの違いは?山芋の栄養情報、上手な保存方法をじっくり解説【管理栄養士監修】

白くてネバネバした食感が特徴の山芋。しかし実際には山芋という種類の芋はなく、山芋という名称は長芋、いちょういも、大和芋、自然薯などの総称として使われています。今回はその中でも粘りが強く平たい形が特徴のいちょういも(関東では大和芋とも呼ばれる)の栄養に注目します。同じくスーパーでよく見かける長芋との違い・使い分けや、上手な保存方法について、管理栄養士がじっくり解説します!

疲労回復の救世主!山芋の栄養情報

疲労回復の救世主!山芋の栄養情報

※実は山芋という種類の芋はありません。ここでは主に関東で大和芋とも呼ばれる「いちょういも」について解説します。山芋の分類や呼び名については次章で詳しく触れます。

山芋(いちょういも)に含まれる主な栄養素(100gあたり)

  • エネルギー:108kcal
  • 糖質:21.2g
  • 食物繊維:1.4g
  • カリウム:590mg
  • ビタミンB1:0.15mg
  • パントテン酸:0.85mg

お腹すっきり食物繊維&元気な毎日に欠かせない糖質

ネバネバの山芋にも実は食物繊維がしっかり含まれています。食物繊維は腸内環境を整え、腸のぜんどう運動を促す働きがあり、便秘予防をはじめ腸の健康を保つのに役立つ成分です。

芋類である山芋には糖質も含まれますが、糖質は人が生きていく上で重要なエネルギー源。エネルギッシュに活動するためには極端な制限はせず、バランスよく栄養を摂るようにしましょう。

むくみが気になるときはカリウム

カリウムには体内の水分量を調整する働きがあり、むくみ予防に役立ちます。また過剰なナトリウムを排出する作用もあるため、塩分のとりすぎが気になるときに積極的に摂りたい栄養素です。

エネルギー作りに必要不可欠!ビタミン類

山芋にはいくつものビタミンが含まれていますが、その中でもビタミンB1やパントテン酸は栄養からエネルギーを生み出すのに欠かせない栄養素です。エネルギーのもとになる糖質とビタミン類を一緒に含む山芋は疲労回復の味方になってくれます。だから、山芋はスタミナ食材と呼ばれるのですね。

山芋はダイエット中に食べてもOK?

ダイエットを意識している人は芋というとエネルギーや糖質量が気になるかもしれません。同じ芋類のさつまいもと山芋を比較してみましょう。

(すべて100gあたり)

  • 山芋(いちょういも):エネルギー108kcal/糖質21.2g
  • さつまいも:エネルギー127kcal/糖質30.3g

ほかの野菜と比べるとエネルギーや糖質量が多いイメージのある山芋ですが、さつまいもと比較するとそれほど値が高くないことが分かります。上で見たようにカリウムや食物繊維も摂取できる山芋は、エネルギー量や糖質量だけで敬遠するにはもったいないかもしれません! 量を調整しながら上手に取り入れてみてくださいね。

山芋?長芋?違いと特徴

山芋?長芋?違いと特徴

「山芋」という芋はない!?

“とろろの芋”として「山芋」という名称を使うことがよくあるのですが、実は「山芋」という名前の芋はありません。

左が「ながいも」、中央と右は関東で「大和芋」として販売されている「いちょういも」。

一般的に山芋とはヤマノイモ科ヤマノイモ属の芋の総称として使われている名称です。芋の形により円筒形の「ながいも」、平たい形の「いちょういも」、ボール型の「やまといも」の大きく3種類に分けられます。

関西で「大和芋」として販売されているのはこの「やまといも」。

さらに、大和芋というと関東では「いちょういも」のことを、関西では「やまといも」のことを指すことが多いです。

スーパーなどでは品名が混同していることもあるので、形で見分けるといいでしょう。また、「いちょういも」とはその名の通りいちょうの葉のような平たい形のものが基本ですが、最近では長芋のような細長い形のものも増えています。

ちょっとややこしいですが、「山芋」とは一般的に「大和芋」として販売されているものを指すことが多いようです。

山芋と長芋の栄養の違い

山芋(いちょういも)は長芋に比べて水分が少なくねっとり濃厚なのが特徴です。また、たんぱく質や食物繊維、ビタミン、ミネラルを多く含んでいます。

長芋の栄養の特徴や保存方法については『長芋のネバネバに隠された栄養とは?上手な保存方法や手のカユカユ回避の方法も』に詳しいので、参考にしてみてくださいね。

特徴を知って上手に使い分け

長芋は水分の多さとシャキシャキの食感を活かしてカットして食べるのがおすすめです。千切りにして酢醤油をかけたり、おくらや納豆と和えたり、わさび醤油で漬物にしてもおいしいですよ。

山芋の甘みと粘り気の強さはすりおろして食べることで楽しめます。とろろ汁はもちろん、お好み焼きや、のりで挟んで揚げる磯部揚げにするともっちりとした食感が味わえます。

山芋の上手な保存方法

山芋の上手な保存方法

冷蔵保存は光と水をシャットアウト

山芋は光と水に弱く傷みやすいので、カットしたら特に早めに使うようにしましょう。

カットする前の丸ごとの状態であれば常温保存もできます。段ボールに新聞紙を敷き山芋を並べ、さらに新聞紙をかけます。保存期間は冷暗所で2週間くらいです。

丸ごと冷蔵庫で保存するときは、キッチンペーパーで全体を包み保存袋またはポリ袋に入れ、野菜室に入れます。保存目安は1カ月程度です。

カットした山芋は切り口を覆うようにキッチンペーパーで包み、保存袋に入れて野菜室で保存します。傷みやすいのでなるべく早く使うようにしましょう。

生のまま冷凍すると使いやすい!

一度切ってしまうと傷みやすい山芋は冷凍保存がおすすめです。丸ごと、切って、すりおろして、とそれぞれの形で冷凍することができます。いずれも保存目安は1カ月程度です。

皮をむいた山芋をラップで包み、ジッパー付きフリージングバッグに入れ保存します。使うときは凍ったまますりおろすことも可能です。

用途に合わせて切った山芋はさっと酢水に浸けて色止めをし、水気をふき取ってからジッパー付きフリージングバッグに入れ、なるべく平らにして冷凍します。生で食べるときは冷蔵室で自然解凍してから、加熱するときは凍ったまま調理できます。

粘り気が強く甘みのある山芋。エネルギッシュに日々を過ごすのに役立つ栄養も含まれています。長芋とは特徴に合わせて使い分けてみてください。すりおろしてから冷凍したとろろは、そのままはもちろん、そばなどに添えたりお好み焼きに入れたりと便利に使えます。調理の時短にもつながりますから、ぜひ試してみてくださいね。

 

撮影:田中 麻以(小学館)

 

【参考】
・農林水産省:「政策情報」今月の園芸特産物12月 山芋(ながいも・加賀丸いも等)
https://www.maff.go.jp/hokuriku/seisan/engei/tokusan201912.html
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
・厚生労働省「e-ヘルスネット」食物繊維
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html
・厚生労働省「e-ヘルスネット」食物繊維の必要性と健康
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
・厚生労働省「e-ヘルスネット」炭水化物/糖質
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html
・厚生労働省「e-ヘルスネット」カリウム
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-005.html
・「からだにおいしい あたらしい 栄養学」吉田企世子監修 高橋書店 2016年
・「NHK出版からだのための食材大全」池上文雄 NHK出版 2020年
・「花図鑑 野菜」芦澤正和監修 草土出版 2006年
・「ひと目でわかる!食品保存事典」島本美由紀 講談社 2015年
・「もっとおいしく、ながーく安心 食品の保存テク」徳江千代子監修 朝日新聞出版

(最終参照日:すべて2021/6/7)

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