解説して頂いたのは、『品良く美しく伝わる「大和言葉」たしなみ帖』(永岡書店)などの著書を持つ国語講師の吉田裕子さんです。
「おいとまする」の意味とは?
null“お暇する”は“おいとまする”と読みます。“いとま”は古くから使われており、休暇や辞職、離婚など、様々な意味がある言葉です。
“いとま”を動詞化した“おいとまする”は、“立ち去る”“辞去する”という意味で使われています。
現代日本語では、目上の相手に対して、辞去のあいさつを告げる際に使います。
「おいとまする」はビジネスシーンやプライベートでどんな時に使うといい?
nullビジネスシーンにおいては、取引先や上司など、目上の相手の前から立ち去るときに使われています。以下のようなシーンで使うことができます。
【「おいとまする」を使う場面の例】
・訪問先での打ち合わせが終わり、帰り支度をするきっかけとして「そろそろおいとま致します」と告げる。
・懇親会や打ち合わせで、目上の相手より先に帰らせてもらうときに「おいとましてもよろしいでしょうか」と許可を得る。
プライベートでは使う相手との関係性にもよりますが、子どもが通う学校の先生や義実家の家族など、ある程度気を遣う相手のもとを辞去するとき、“おいとまする”という言葉を使うことがあります。
「おいとまする」の使い方の注意点やNG使用例は?
null【「おいとまする」のNG使用例】
・私は本日16時に弊社をおいとまする予定です。
→この場合、自分の会社に敬意を表しているので間違い。正しくは、「本日16時に退勤の予定です」など。
「おいとまする」の例文は?
null続いて、“おいとまする”の例文をご紹介します。
【「おいとまする」の例文】
・(訪問先の相手対して)本日はお時間頂きありがとうございました。これでおいとまします。
・(お見舞いの最後に)そろそろおいとま致します。お大事になさってください。
「おいとまする」を言い換えると?
null最後に“おいとまする”の言い換え表現をご紹介します。
(1)「失礼します」
訪問先から帰るときや、人と別れる際によく使われている言葉です。“おいとまする”より気軽に使うことができます。
【「失礼します」を使った例文】
・本日はありがとうございました。こちらで失礼致します。
・これから用事がありまして、申し訳ありませんがお先に失礼します。
(2)「退出する」
その場から退き、外に出ることを意味します。あらたまった場所から出るときに使われています。
【「退出する」を使った例文】
・社長室での用事が済んだらすみやかに退出するように。
(3)「いとまごい」
“いとまごい”の漢字表記は“暇乞い”。“別れをつげること”を意味する名詞です。訪問先の相手を前に、同僚の相手に対して使ったりします。
【「いとまごい」を使った例文】
・(取引先から帰る際の同僚同士の会話で)長々と居座ってしまったので、そろそろいとまごいをしましょうか。
今回は、吉田先生に“おいとまする”の使い方をレクチャーして頂きました。
“おいとまする”は、相手の都合を考えてそろそろ立ち去る……という配慮を込めて使うことができる言葉です。大切な取引先を訪問したときのために、“おいとまする”という表現を覚えておくと役立つかもしれません。
【取材協力・監修】
吉田裕子
国語講師。塾やカルチャースクールなどで教える。NHK Eテレ「ニューベンゼミ」に国語の専門家として出演するなど、日本語・言葉遣いに関わる仕事多数。著著『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)は10万部を突破。他に『正しい日本語の使い方』『大人の文章術』(枻出版社)、『英語にできない日本の美しい言葉』(青春出版社)など。東京大学教養学部卒。