「本を買うだけ」で、どこかの誰かに気持ちが届く
null募金や献血、チャリティーのような「自分のちょっとした行動が、誰かの役に立てること」って、素敵なことだなと思います。
けれど正直、参加したい気持ちはあっても、いろんな選択肢がありすぎて……何をしたらいいのか悩んだまま、結局何もしていない自分に気づいたり。
そこで「今年こそは、気になっていたブックサンタにチャレンジしよう!」と、書店に行ってきました。
どうやって参加するの?
「ブックサンタ」は、NPO法人チャリティーサンタが全国の書店やNPOと連携して行っている社会貢献プロジェクトの名称。毎年、秋分の日からクリスマスイブまで(今年は9月23日〜12月24日)の期間に開催しています。
あるお母さんから寄せられた「クリスマスに子どもへのプレゼントを準備できそうにない。クリスマスなんて来なければいいのに」という声をきっかけに始まったブックサンタ。届ける先は、経済的困窮を抱えている家庭、病気により大変な家庭、被災家庭の子どもたちや、施設で養育されている子どもたちなどです。
2017年のスタートから、途中、赤字続きで資金が尽きそうになりつつも、なんとか継続して今に至るそう。過去6年間で寄付された本の数は、なんと累計14万冊以上というから驚きです。
参加方法は、いたって簡単!
1:参加書店に行き、贈りたい本を選ぶ
2:レジで「ブックサンタに参加したい」と伝え、本を購入
3:預けた本と引き換えに、参加賞のステッカーを受け取る
これだけです。
参加書店は全国にあり、その数1,700店舗近く! 「ブックサンタ」公式サイトで地図から簡単に店舗を検索できるほか、オンライン書店も用意されています。
預けた本は各店舗で取りまとめたうえ、約300もの子ども支援団体と連携して日本中の子どもたちに届けられます。クリスマスプレゼントのほか、誕生日プレゼントなどとしても活用されるとのこと。
また、本を買う以外に「運営費の寄付」「サンタに扮して届けるボランティア(※本以外を届ける可能性もあり)」といった貢献のしかたもあります。
どんな本を選んだらいいの?書店員さんに聞きました
nullでも、“会ったことのない子どもたちに本を選ぶ”って、何を選んだらいいか、悩んでしまいます。
そこで、本を選ぶにあたって、筆者がブックサンタを実践した「丸善 丸広百貨店飯能店」(埼玉県飯能市)の書店員さんにアドバイスをいただきました。
児童書担当の福島亮子さんは、ご自身も毎年ブックサンタに参加して、3~5冊ほどを寄付しているそう。今回も参加するとのことで、福島さんが選んだ本も教えていただきました。
「選ぶときは、届ける相手の顔を想像しながら、
“私はこの本が好きで、いい本だなぁと思うの。あなたはいかがですか?”
と問いかけるような気持ちで選んでいます」(以下「」内、福島さん)
書店員さんがおすすめする「本の選び方」
「ブックサンタの対象は0~18歳の子どもたちなので、絵本だけでなく、小学生向けの読みものや、中高生に向けたものなど、幅広い本が必要になります。
おすすめは、例えば『想像がふくらむ本』や、『世代を超えて愛されるような普遍的な本』。ご自身が子どものころに夢中になって読んだものを選ぶのもいいかもしれません。
一方で、今の子どもたちが欲しい!と思っているものを想像して、『人気の本』や『誰もが楽しめるような本』を選ぶのもいいですね。せっかくプレゼントするなら、受け取った相手に笑顔になってほしいなと思います。
決められない!という場合は、その書店の『おすすめコーナーに並んでいる本』を選んだり、書店員さんにアドバイスをもらうのも立派な選び方。大事なのは、“相手に喜んでほしいという気持ち”ですから」
なお、以下のように、推奨されていない本もあるのでご注意を。
【注意が必要】
●上下巻に分かれたもの(合わせて届けるようにしているが、運営上の観点からは1冊で物語が完結している本を推奨) ●複数巻のつづきもの(続きを読みたくても、対象家庭では準備が難しい場合があるため)
【対象外】
●コミック(学習まんが等は可) ●雑誌(特に〇月号などの表記があるもの) ●学習参考書 ●古本や、本以外のもの
実際に選んだのはこの本!
null最後に、福島さんが実際にブックサンタ用に購入した3冊と、アドバイスを聞いて筆者自身が選んだ3冊をご紹介します。
とっても悩みましたが、それは受け取る人のことを考えるからこそ。「選ぶ時間も含めてのブックサンタ」だなぁ、と実感しました。
書店員さんが選んだ3冊
『大ピンチずかん』
「手放しで楽しい絵本、といったらこれ! 生活のなかのいろんな“大ピンチ”がずらりと並んでいて、お客さまにもとても人気があります。11月22日刊行の『大ピンチずかん2』も、なかなか在庫の確保が難しいほど。
話題の本なので、学校の図書室には既にあるかもしれませんが、借りられていて読めない!ということも。“自分だけの1冊”としてプレゼントされるのは、やっぱり特別です」
『夏のサンタクロース』
「フィンランドでながく愛されている童話集です。小学生にもなると、サンタさんなんて本当はいないんじゃ?と思っている子もいるかもしれませんが、この本には“本当にサンタさんはいるんだ!”と信じさせるような説得力があります。
ちょっと怖い挿絵も魅力的。この本に限らず、見たいけど怖い!怖いけど見たい!というような、ちょっと怪しいものに心惹かれる子も多いですよ」
『とびきりすてきなクリスマス』
「子どもが10人いる大家族の5番目の子が、長男の代わりに、家族へのプレゼントを手作りしようとするお話。
この本に書かれた対象年齢は“小学2・3年生から”で、先ほどの『夏のサンタクロース』は“小学3・4年生から”。どちらも同じ『岩波少年文庫』から出ていて、見比べると、こちらの方が挿絵が多めになっています」
「絵や文章の細部まで、対象年齢に合わせて配慮がされていたり、可愛いしおりも入っていたりと、読み手の子どもたちのことを真剣に考えてつくられているのが伝わってくる本です」
筆者が選んだ3冊
『たんぽぽは たんぽぽ』
文章に出てくる「たんぽぽはたんぽぽ! すずめはすずめ! たろうはたろう!」といった言葉を口に出していると、なんだか元気がわいてくるよう。
自分が自分であるってどういうことなんだろう?という一見難しい疑問を、とっても軽やかに描いている、大好きな絵本です。受け取る子も、この本を好きになってくれますように!
『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』
おとなになるなかで、生きるヒントをくれるような「家族でない第3者」の存在って、時にとても大事なもの。
この本に出てくるのは、「ぼく」(いい年をしたおじさん)と、その家にふらりとやってくる「きみ」(小学生の男の子)。2人が交わす、「ことば」や「詩」を通じてのやりとり1つ1つが、自分のなかの凝り固まった思考を解きほぐしてくれるかのよう。
それは例えば「わからないものを、わからないまま楽しむ」というようなこと。子どもにもおとなにも、おすすめです。
『水中の哲学者たち』
ふと立ち止まってまわりを眺めると、世の中には疑問がいっぱい。それをひとつひとつ、じっくり見つめて考えるのが「哲学」です。
学校の授業などで、子どもたちと日々「哲学対話」を行っている著者ならではの、生活に根ざした哲学。それはまったく難しいものではなく、くすりと笑いながら、あっという間に読み終わってしまいます。
進む道に悩んだときには、寄り添って道を照らしてくれるような、無理して進まなくてもいいんだよ?と言ってくれるような、大切な1冊です。
今回取材した福島さんは、「ブックサンタは祈り」だと言っていました。
「ウクライナやパレスチナ、その他の国々にも、世の中には“どんなに子どもを守りたくても守れない親”がたくさんいる。そんな世の中が、ちょっとでも良い方に向かってほしいという祈りを込めて、私はブックサンタに参加しています。
子どもたちに本を届けるという“書店員”の仕事が好きなのも、同じように未来への希望であり、祈りなのかもしれません」と。
この記事を読んで、もしブックサンタに興味を持っていただけたなら、ぜひあなたもチャレンジを。今年の受付は、12月24日(日)までです。
音楽&絵本&甘いものが大好きな、一児の父。文具や猫もとても好き。子育てをするなかで、新しいコトやモノに出会えるのが最近の楽しみ。少女まんがや幼児雑誌の編集を経て、2022年秋から『kufura』に。3歳の息子は、シルバニアファミリーとプラレールを溺愛中。