「昆虫」や「小さな生きもの」が好きな子に絵本を選ぶなら
nullこんにちは、絵本ナビの磯崎です。「昆虫」や、カエルやザリガニなどの「小さな生きもの」は、いくら子どもが大好きでも、親にとっては「抵抗がある」ということも多いのではないでしょうか。
実は私も昆虫が苦手で、子育てで苦労しました。当時4~5歳の息子はセミ取り名人で、あちこち歩きまわりながらセミ取りの助手をさせられる日々……。でも小学校に入学するころ、電車に興味がうつって昆虫採集の日々はあっさり終わりを告げました。
息子のように数年で離れることもあれば、そのまま「好き!」を極めて昆虫博士になる可能性も。
苦手な親御さんに「好きになって!」とはとても言えません。ですが、親が嫌がると子どももだんだんと影響されて、せっかくの「好き!」という気持ちが途絶えてしまうこともあります。なるべくお子さんの前で否定的な反応をしないように、ぜひできる範囲で努力してみてください。
その心強い味方になるのが絵本(本物と違って動くこともありません!)。もしかしたら一緒に絵本を眺めるうちに、親のほうも「不思議だな」とか「ちょっと可愛いかも?」と思う瞬間があるかもしれませんよ。
【分類の見かた】
●入門編:もともと「昆虫」「小さな生きもの」が好きな子はもちろん、はじめの1冊としても楽しめる絵本(目安/1歳~)
●発見編:「昆虫」「小さな生きもの」が好き!という子が、どんどん読み進めるのにぴったりな絵本(目安/3歳~)
●探求編:ちょっとディープで、「昆虫」「小さな生きもの」以外の分野にも興味が広がっていくような絵本(目安/5歳~)
【入門編】~新しい「好き」の入り口に~
null●道ばたの虫に話しかけるような、優しい語り口
『むしさん どこいくの?』
登場するのは、普段よく目にするテントウムシやアリなどの虫たち。親子でお散歩しながら虫を見つけて、「どこいくの?」と声をかけるような優しい目線の絵本です。
少ない線でシンプルに描かれていますが、描写は正確! 虫好きをわくわくさせるツボをしっかり押さえています。この絶妙なバランスは、1967年刊行のデビュー作『かまきりのちょん』から、何十年にもわたって昆虫を描き続けている著者・得田之久さんだからこそ成せる技。
小さい頃にこの本に出合えたら、きっと“虫嫌い”にならないのでは?と思います。
●読めば元気がわいてくる!
『だっぴ!』
脱皮って、面白いですよね。小さくなった皮を脱ぎ捨てた生きものは、ツルツルした姿になって、元気いっぱい。でも、実際に脱皮の瞬間を目にする機会はなかなかありません。
この絵本に出てくる生きものたちは、脱皮したあとの表情がなんだか気持ちよさそう。絵や書き文字もとってものびのびしていて、読んでいると、自分もだんだんと楽しい気持ちに!
ダンゴムシ、ヘビ、イモリ……と続いて、最後は人間の子どもが洋服を脱ぎ捨てているシーンで終わるので、小さな子でも感覚的に脱皮を理解できますよ。
【発見編】~もっと「好き」を楽しもう!~
null●虫と友達になる、ってこういうこと!
『むしのもり』
捕まえて飼ったり、種類を覚えたりと虫好きにもいろんなタイプがいますが、この本は「虫と友達になりたい!」と願っている子にこそぴったり。
主人公の「さっちん」と、ほぼ同じ背丈で描かれたオオクワガタの「オオクワくん」。一緒に遊び、ごはんを食べ、冬には枯れ葉のベッドで眠って……、虫好きの夢が本の中で叶います!
アリたちに運ばれる場面も、虫が好きな子にとってはあこがれですが、苦手な人はちょっとびっくりしちゃうかも。これがもし、たくさんのリスだったら、可愛いく感じるのになぁ。不思議です。
●カエルへの愛情×科学×ファンタジー
『あまがえるの たんじょう』
たまごからオタマジャクシになり、足が生え、敵から逃げのびて、陸にあがる……。そんなカエルの一生を、ここまでつぶさに見られるのは、まさに絵本ならでは。
特に初めて水から出たときの、水面の景色がたまりません。学びに溢れた科学絵本であり、カエルたちに感情移入して読むファンタジーでもある。それらに境目はないんだなと気づかされます。
リアルなのにとっても愛くるしい絵からは、描いた人の「カエルを好きでたまらない!」という気持ちが伝わってくるようです。
【探求編】~「好き」が導く!未知の世界~
null●「疑問を持つ」→「調べて驚く」の繰り返し
『昆虫の体重測定』
テントウムシの体重は、たった切手1枚分(=0.05g)しかないって知っていましたか?
オオカマキリはメスの方が4倍も重かったり、カブトムシは(人間とは逆に)成長するにつれて軽くなったり……。ここに書かれているのは、大人も知らないようなことばかり。
疑問に思ったことを調べ、得られた結果に驚く。その思考の過程が面白くて、読めば読むほど引き込まれます。作者をまねて、親子で新しい疑問を見つけ、探求する体験ができたら素敵ですね。
●生きるってなんだろう?
『つちはんみょう』
この本の主役・ヒメツチハンミョウは、たまごからかえると、コハナバチというハチの体にしがみつきます。そしてコハナバチによって運ばれた花の上で、今度はヒメハナバチが来るのを待ち、ヒメハナバチの巣に寄生して成虫になります。
4000匹いた幼虫のうち、数匹だけがヒメハナバチの巣にたどりつき、子孫を残す……。知らない虫の、知らない一生を全部見せられ、そのあまりの濃さに圧倒される、そんな絵本です。
思わず「私たち人間は、何のために生きているんだっけ」なんて考え始める自分がいたり。この無垢で懸命な生き様こそ、人が虫たちに心惹かれる理由なのかもしれません。
すぐそこにいるのに、知らないことばかりの「昆虫」や「小さな生きもの」の世界。他にも好奇心を刺激する絵本がたくさんあるので、親子で探してみてくださいね。
次回は「食べもの」が好きな子に向けた絵本セレクトをご紹介します。
撮影/横田紋子(小学館)
構成/kufura編集部