「食べもの」が好きな子に絵本を選ぶなら
nullこんにちは、絵本ナビの磯崎です。子どもにとって、味覚や体をつくる幼少期は、いろんな「食べもの」と近づいたり仲良くなったりすることが、とても重要なことだと思うんです。実際の食事はもちろん、絵本をきっかけに新しい食べものに興味を持つお子さんも多いのでは。
食べもの絵本の絶対条件は、絵が「美味しそうであること」。これは外せません! 年齢によってはまだ食べたことがないものや、初めて見るものもあるかもしれませんが、その美味しさはきっと、絵柄からお子さんに伝わると思います。もちろん食べた経験のあるお子さんなら、より実感を持って楽しめるでしょう。
このように食べもの絵本は、何歳の子が読むかによっても受け取り方がガラッと変わるのもおもしろいところ。ぜひ実体験とも絡めながら、バリエーション豊かな食べもの絵本の世界を楽しんでみてください。
【分類の見かた】
●入門編:もともと「食べもの」が好きな子はもちろん、はじめの1冊としても楽しめる絵本(目安/1歳~)
●発見編:「食べもの」が好き!という子が、どんどん読み進めるのにぴったりな絵本(目安/3歳~)
●探求編:ちょっとディープで、「食べもの」はどこからやってくるの?など、さらに興味が広がるような絵本(目安/5歳~)
【入門編】~新しい「好き」の入り口に~
null●生き生きして美味しそうなおだんごに目が釘付け
『おだんごダイブ』
食べものの中でも「おだんご」を題材にするというのは、ちょっと珍しいですよね。小さいお子さんだと、まだ「おだんご」という食べものを知らないことも多いと思います。
ですが、例えおだんごを食べたことがなくても、生き生きとした可愛いおだんごたちがダイブしていく様子にはきっと興味がわくはず。そこにつやつや、もっちり、パッフンといった、リズミカルな文章が加わることで、より「美味しそう!」という感じが伝わってきます。
絵本を読んでからおだんごに出合い、食べる機会があった時に「あーもっちりしてる!」と答え合わせができれば、それも楽しいですね。
●表紙からは想像できない意外性に驚く
『ゆうちゃんの みきさーしゃ』
こちらは50年以上前に発売された絵本。タイトルと表紙からは、一見「ん? これは車の本じゃないの?」と不思議に思う方もいるかもしれません。
おやつに食べたお菓子の缶がミキサー車に変身し、そこにいろんな材料を入れていくと……一体どんな食べものができあがるの? 実は、こんなストーリーなんです。
遊びの延長線上に食べものが結びつくというその過程は、子どもにとってなんとも嬉しくて魅力的なもの。自然な流れで、未知の味を想像して夢をふくらませるようなストーリーは、今読んでも本当にわくわくします。
【発見編】~もっと「好き」を楽しもう!~
null●くり返し見て確認したくなる写真絵本
『おすしが ふくを かいにきた』
日常にあるものを別のものに見立てたこの写真絵本は、ミニチュアですがとてもリアルに作られていて、その精巧さに思わず見入ってしまいます。
シュウマイの半透明に蒸された皮や、パンのパリッとしたツヤ感は、なんとも美味しそう! そこに加え、おすしの洋服だったり、ケーキのベッドだったりと、大人も憧れるファンタジー要素も満載です。
出てくるさまざまな食べものの味や匂い、食感を思わず想像させる、読む人すべての五感を刺激するような絵本です。本編を堪能したら、ぜひ隠されたサイドストーリー(犬に注目!)にも気づいて欲しいですね。
●想像の斜め上をいく、わくわくの展開
『クリコ』
クリスマスという楽しいイベントを題材にしながら「でも毎日来たら飽きるよね」という部分にスポットを当てるのが、独創的な感覚を持つ著者・シゲタサヤカさんのユーモア溢れるところですね。
クリスマスケーキの「クリコ」が巻き起こすクリスマスの珍事は、ページをめくるごとに良い意味でどんどん裏切られる展開で、結末が想像できないストーリーになっています。
クリスマスシーズンだけでなく、季節を問わず1年中楽しめる愉快な絵本。読み聞かせにもおすすめです。
【探求編】~「好き」が導く!未知の世界~
null●じっくり向き合いたい図鑑のようなみっちり感
『おみせやさんでくださいな!』
お買いものをテーマに、生活に密接したさまざまなお店が繰り返し出てくるところがおもしろいこの絵本は、なんと140ページ越えという大作。食べものには顔や手足がついていて愛嬌があるのに、大事な「美味しそう」という部分は決して外していません。
まるで図鑑のようにボリュームのある絵本なので、好きなページや興味があるページから読むかたちでも良いと思います。「この前お菓子屋さんに行ったね」「〇〇はこういったお店で売ってるんだよ」と、お子さんの経験や生活と照らし合わせながら、親子でお話しするのもいいですね。
各ページに発見がみっちり詰まっていて、登場するお客さんたちの行動にも前後との繋がりが! ゆっくり時間をかけて見てほしい絵本です。
●食育と絵本の楽しさ、いいとこどり!
『おすしのずかん』
子どもにとってはなかなか結びつきづらい「お寿司」と「魚」を、リアルかつかわいいイラストでわかりやすく見せてくれています。
思わず引き込まれるのは、その分類方法! はじめに美味しそうな握り寿司の絵がずらりと並び、「赤いお寿司」→「赤いお寿司になる魚」、「白いお寿司」→「白いお寿司になる魚」のように、寿司目線で魚を種類分けしていきます。
お寿司→魚、という通常とは逆の見せ方が新鮮。それに加え、魚をさばいてお寿司にする過程も可愛いイラストで紹介しています。魚が苦手な子どももきっと「自分の好きなお寿司はどんな魚からできているの?」と興味がわくはず。
絵本の中でも「食べもの」は数多く出てくる題材の1つ。それだけ子どもにとって興味があって、日常生活に密着したテーマなのだと思います。他にもお子さんの好きな食べもの、逆に嫌いだけどできれば好きになってほしい食べものなど、テーマを決めて本を探してみてもおもしろいのではないでしょうか。
次回は「歌」や「楽器」が好きな子に向けた絵本セレクトをご紹介します。
撮影/横田紋子(小学館)
構成/苗代みほ