50年前から同じスタイル。ばぁばの「おけいこの時間」
nullばぁばのお稽古は、一般的な料理教室とは違って生徒さんが包丁を握ることはなく、あらかじめ献立表と作り方が配られ、ばぁばが目の前で調理し、生徒さんはそれをいただくというスタイル。
午前11時、生徒さんはまずお台所に集まり、ばぁばの包丁さばきや下ごしらえのコツ、煮炊きのポイント、そして盛り付けの妙をばぁばの軽妙な解説とともに見学。その後、お膳だてが整ったダイニングテーブルに移動して、会席形式で順に供されるお料理を堪能するのです。
1日につき生徒さんは最大8人。九州や北海道から参加するかたや、10年以上休まず通い続けている生徒さんもいます。ばぁばは2人の助手さんと約3時間立ちっぱなしで、先付けから甘味まで8〜10品の献立を順に、みなさんのお膳に並べていくのです。このスタイルは、約50年前にご近所の主婦の方々に請われて、ばぁばが料理教室を始めた約50年前から変わっていません。
水無月の献立 「つゆの晴れ間に」
null「旬の食材を使ったお料理を、その時期にふさわしい器に、美しく盛り付けてお出しするのが会席料理のしきたりなのです」とばぁば。
水無月(6月)は旧暦では6月下旬〜8月上旬にあたり、この時期はちょうど田植えのシーズン。田に水を引くために他の場所が干上がってしまうことから、「水が無くなる=水無月」と名付けられたという説もあります。新暦では梅雨のまっただ中。ジメジメと蒸し暑いこの時期には、さっぱりと涼やかなお料理で献立を構成します。器もガラスや明るい色味のもので統一し、“涼”を演出、しょうがやにんにく、みょうがといった薬味が登場し始めるのも特徴です。
水無月の献立から。「かつおのたたき ばぁば風」の作り方
null水無月の献立
【先付け】もずくのしょうが酢
【椀もの】えびの白和え
【焼きもの】かつおのたたきばぁば風
【志のぎ】ごま豆腐
【揚げもの】なすの揚げびたし
【酢のもの】和風ピクルス
【食事】きつねご飯、巻き南蛮、あさりのみそ汁
【甘味】富貴豆
今回ご紹介するのは「かつおのたたきばぁば風」。「自宅でたたきにするなんて、ちょっと無理!」と思うかもしれませんが、金串が5本あればOK。脂身が少ないかつおは、血合いを丁寧に取り除き、ガスコンロの直火でさっと炙るだけで、キッチンを汚すことなくおいしいたたきが作れます。
ぜひ動画で、ばぁばのお話も一緒に聞きながら“お稽古”してみてください。
材料(約4人分~)
かつお(刺身用) 2節(背400g〜500gを1節、腹350gを1節)
レモン 1個
にんにく(すり下ろし)4片分
しょうが(すり下ろし)3片分
細ねぎ(小口切り)
わかめ(水で戻す)50g分
きゅうり 1本
みょうが(縦半分に切ってせん切り)2個分
にんじん(せん切り)4cm長さのものを縦半分
ねぎ(芯を取り、4cm長さのせん切り)8cm分
青じそ・溶きからし・しょうゆ 各適量
作り方
(1)わかめは筋を除いて2cm幅に切り、熱湯にくぐらせて氷水に取る。きゅうりは薄い輪切りにして立て塩(3%濃度の塩水に放してしんなりさせる。塩水は水1カップに対して塩小さじ1を目安)にし、水気をかたく絞る。みょうが、にんじん、ねぎはそれぞれ冷水に放してシャキッとさせる。
(2)かつおは血合い(色の濃い、黒ずんだ部分)を丁寧に取り除く。まな板に皮目を下にして置き、金串を扇状に5本刺す。皮側からガスコンロの火にかざして炙り、軽く焼き目が付いたら裏返して身を炙る。身の色が白くなったら、たっぷりの氷水に取り、水の中で串を抜く。かつおの水気を布巾やキッチンペーパーでしっかり拭き取る。
(3)背の節は5〜6cm、腹の節は4〜5cmの引き造り(包丁を手前に引いて切ること)にする。
(4)レモンを半分に切り、汁をまんべんなくかつおに絞りかける。にんにくとしょうがは半量ずつ背と腹に指先でペタペタと貼るようにのせ、細ねぎをのせる。
(5)皿に水気を切った(1)を置いて青じそを敷き、(4)を盛る。しょうゆ、溶きがらしでいただく。
PROFILE
鈴木登紀子(すずきときこ)
日本料理研究家。1923年11月に青森県八戸市に生まれる。46才で料理研究家としてデビュー。東京・武蔵野市の自宅で料理教室を主宰するかたわら、テレビ、雑誌等で広く活躍。『きょうの料理』(NHK・Eテレ)への出演は、50年近くになる。『ばぁば92年目の隠し味』(小学館)はじめ著書多数。