災害時の「レジリエンス」が大事です
null「レジリエンス」とは「抵抗力」や「回復力」のこと。つまり「起こりうる不測の事態に対応できる力」を指します。
「慌てず対応し、被災時も健やかに。そして、1日でも早く日常を取り戻せるように、災害時のレジリエンスを高めることが大事です」(以下「」内、旭化成ホームズ・山田恭司さん)
「レジリエンスを高めるカギは3つ。『防災』『減災』『復旧』です。『防災』は、災害が起こる前にやっておきたいこと。『減災』は発生前と発生時、そして発生後のそれぞれで出来ることがあります。そして『復旧』は、発生後に困らないために大切です。
今すぐできることとして、家を建てるときにも有効な、『防災』から始めましょう」
防災は災害の「想定」から始める
null防災にはさまざまな方法がありますが、大事なのは“対策”からではなく“想定”から始めること。過去の震災を教訓にするために、まずはどのような場所で、何が起こったのかを正しく知ります。そして、自分たちの住んでいる場所で地震が起きたら?と“想定”してから“対策”をします。
「気象庁震度データベースによると、2024年能登半島地震では、発生から6日間で震度5以上の地震が16回も起こったそうです。繰り返しの大きな揺れ、そして能登半島は古い木造の建物が相当数あり、建物被害が少なくありませんでした。また、地盤が崩れる、液状化で沈む。輪島では火災被害。避難所ではエコノミークラス症候群や、感染症、寒さのリスクなどもありましたね。このような実際の被害から想定できることを、ご自身の地域に当てはめていきます」
こうした想定による対策が、「減災」と「復旧」の早さにもつながるのだとか。
「土地」「家」「部屋」の3つで、今日からできる防災
null1:土地
【想定】地盤の崩れや液状化が起こるかも?「ハザードマップ」と「液状化マップ」を見よう
万が一の避難場所を家族と決めたり、避難グッズを買ったりする前に「この土地で何が起きるか?」を知ることが大事です。そのためにも今すぐ、WEBでチェックできるのが、ハザードマップと液状化マップ。
「お住まいの自治体で出しているものをチェックしてみましょう。国交省のホームページで公開している『重ねるハザードマップ』は、全国版で地域の絞り込みができ、洪水・内水、土砂災害、津波などからリスク情報を調べることができます」
【対策】家を建てる土地を決めるのにも役立つ!
「ハザードマップと液状化マップ、どちらも言えますが、これから家を建てたい人にとっては土地を決めるのに役立つでしょう。
また、すでに土地が決まっている場合でも、液状化マップで沈下や地盤崩壊の危険性を確認し、避難や災害後の生活に備えることをおすすめします」
2:家
【想定】建物崩壊の危険性は、築年数を確認
「地震の揺れによる建物倒壊を想定するには、『必要壁量』という水平力に対する強さを確認します。これは、建築確認申請年で異なり、1981年より前の木造建築は1981年以降より倒壊リスクが高くなります。古い家にお住まいの方は築年数を調べてみましょう」
【対策】耐震構造を検討する
地震で建物が「壊れない」「倒れない」とよくいいますが、ここにも大事なポイントがあります。
「建物を建てる際の基準をまとめた『建築基準法』では、震度5強程度で損傷がない、震度6強から7程度で倒壊しないことを最低限求めています。『壊れない』は文字通り、震災後も元のままであること。『倒れない』は、震災後に傾いたり耐震性が低下したりしても、人命が助かればよいというものです」
山田さんによると、2024年能登半島地震で起こった建物崩壊は、2007年や2023年に起きた震度6強を観測した地震の影響を受けた可能性があるとのこと。
「当時は倒れなかったものの、耐震性が低下していた建物が、複数回の力を受けて倒壊した可能性もあると考えられます。これから家を建てる予定の方は、共振や繰り返し地震に強い構造を検討することをおすすめします」
「共振」とは、地震の強さではなく、建物の揺れを増幅させる揺れのこと。東日本大震災では周期の長い大きな揺れで、都心の高層ビル上階がしなるように長時間揺れました。これも建物が一方に揺れて反対側に戻ってくるまでの時間である「固有周期」が関係していると考えられます。
「共振は、地震の周期と建物の周期が一致したときに大きなダメージを受けます。戸建て住宅と高層ビルでは警戒する揺れが異なり、どちらが安全とは一概に言えません。
これから家を建てる方は、地震の力を吸収して耐える構造の『制振構造』を検討しましょう。地震の力を吸収して耐える構造で、共振と繰り返し地震に強い家に繋がります」
【対策】耐火性の強い壁にする
2024年能登半島地震でも甚大な被害を及ぼした火災被害。ポイントは「外から守る。内から出さない」こと。
「火が家の内側へまわると、燃えなかったとしてもススが出て、汚れやにおいの被害が大きくなり、復旧に時間がかかります。火に強い外壁材や高温で割れにくいガラスを使い、シャッターを下ろせれば下ろすこと。
また、地震直後は分電盤のブレーカーを切り、家の中も漏電火災などの心配がないよう掃除したり、燃えやすいものがあちこちにないよう整理整頓を心がけるとよいですね」
3:部屋
【想定】家具や家電などが倒れてこないか? 入り口を塞がないか?
部屋のインテリアや動線を考える場合にも“想定”を。
「過去の震災で、大きな家具の下敷きになって亡くなられたり、落下したものでケガをしたりといった被害が見られます。部屋の中で家具や大きな家電が人の上に倒れないか?万が一、倒れた時に出入り口を塞がないか?確認していきます」
【対策】家具や大きな家電は固定する
「家具の場合、金具で壁の下地に固定するか、面で突っ張るのがおすすめです。突っ張り棒タイプだと、天井下地の止め方や揺れ方によっては外れてしまう場合もあるので、注意が必要です。
このほか、キャスター付き家具が浮かないよう、着脱式移動防止ベルトをつける。家具の底に横から打ち込むストッパーをつけるなど。ホームセンターにはいろいろな対策グッズがありますので、ご家庭にあったものを選んでみてください」
【対策】ものの落下・散乱には収納の見直し
ものをしまう時は、落下することを前提に収納場所を決めます。
「重いもの、固いものは下に。軽いもの、柔らかいものは上に収納します。また、パントリーや押し入れなど、収納場所を絞り、集中収納を心がけることで、ケガのリスクも軽減します。万が一、地震が起こった場合も、片づけやすくなるでしょう」
リフォームやこれから家を建てる場合は、地震を感知して自動的に扉を開かなくする耐震ラッチや作り付け家具も一つの手。この機会に検討してみては?
【対策】避難グッズは1階、リビングに置く
ものが散乱した中でも、避難グッズをすばやく取り出し避難するには、どこへしまっておくのがよいのでしょうか?
「避難動線を考え、朝昼夜のいかなる時間に起こってもよいようにイメージしてみてください。おすすめは1階。中でもリビングや、避難経路として使う玄関などをおすすめします。
車の中に備えている方もいらっしゃるかもしれませんが、災害時、駐車している車に倒壊した塀や建物が損傷を与える場合もあるので、周りの状況を確認しましょう」
地震や水害など、災害は起こらないに越したことはありません。しかし、いつ何時起こるかわからないのが自然災害です。自分たちに何が起こりうるのかを“想定”できると、気持ちも行動も変わります。今日から、そしてこの3つの防災から、始めてみませんか?
【取材協力】
ヘーベルハウス
旭化成ホームズ株式会社の戸建住宅・注文住宅ブランド。地震などの災害に強い構造に定評があり、安心で快適な暮らしを長く続けるための家づくりに取り組む。
公式HP:https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/index.html/
トータルレジリエンス(総合防災力)|ヘーベルハウス:https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/lp/resilience/index.html/
公式Instagram:https://www.instagram.com/hebelhaus_official/
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote