「ベランダ菜園」で必ずそろえるものはコレ!
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園芸歴20年の佐藤健太さんは、お客様に園芸の楽しさを伝えることが何よりのよろこびなのだとか。
野菜や果実を育てるには、種から蒔く? それとも苗? 道具や資材は、どれだけそろえればいい? 筆者はよくわからず、お店をウロウロ徘徊したり、買い忘れて何度もお店に行くはめになったりした経験があります。
そこで、園芸のプロフェッショナルである『プロトリーフ』の佐藤健太さんに、ズバリ必要なものを聞くと……「ベランダ菜園を始めるにあたり、必須なのは次の5つです」(以下「」内、全て佐藤さん)。
1:苗

「土から発芽して、伸びて……と、生育の工程がイチから見られるのは種のおもしろさ。リーフレタスやバジルなどの葉野菜は、種を蒔いたほうがたくさん育てられて、コストパフォーマンスがいいかもしれません。
ただ、鉢植えでちょっと育てたいベランダ菜園の場合、根付きで売られている苗のほうが失敗が少ないです。とくに初心者の方は、まずは苗から育ててみるのがおすすめです」
2:鉢

鉢のサイズは1〜10号まであります。ミニトマトには10号(写真)の鉢が必要。
「ベランダ菜園では、1苗あたり10〜15Lの土が必要なので、8〜10号の丸型の鉢を買いましょう。1号は直径約3cmだから、約24〜30cmのものが必要ということです」
ミニトマトなら、最低でも10号の鉢。思っている以上に深くて大きなものが必要なことが分かり、筆者は驚きました。
「ミニトマト、ナス、キュウリ、ピーマン、オクラなど、上に伸びて実がなる野菜は、成長すると背丈が150cmくらいになるんです。高さが出る分、倒れないよう根も深くはります。だから深さも直径と同じように24〜30cmくらいある、大きな鉢が必要です」

2〜3株の苗を植えるのにおすすめのプランター(1,760円・税込)と、10号の鉢(880円・税込)。
複数の苗を同時に育てたい場合は、プランターでもOK。
「ただし、トマトのような上に伸びて実がなる野菜の場合は、根のことを考えて、苗同士の間を15~20cmほどあけたいです。その分、大きくて深いプランターが必要になります。こちらのプランターは幅70cm×深さ30cmほどあり、2〜3苗植えられます。
もし葉野菜だけ植えるなら、あまり根が深くならないので、100円均一などにもある浅めのプランターもアリです。苗同士の間隔は10〜15cmくらいあけてくださいね」
3:土

「初めにお伝えしたとおり、植える土壌が広いと根がしっかりはれて、収量も増えます。だからベランダ園芸でも、1苗あたり10〜15Lと、十分な量の土を用意してください。
土にもいろいろありますが、ベランダ菜園なら、ホームセンターや専門店で手に入る『花と野菜の有機培養土』(プロトリーフ)がおすすめ。この培養土は、いろいろな品種にマルチに使える便利な土です。あらかじめ、野菜や花、果実が育ちやすいように、土の成分や栄養分などが調整されています。近ごろでは、あらかじめ40~50日分の、初期育成に必要な肥料が含まれているものも増えていますよ」

「プロトリーフ カゴメ そのまま育てるトマトの土 15L」(オープン価格)は、鉢いらず。袋のままトマトが1苗育てられる優れものの土。別売りの支柱、苗を用意すればOKです。
ちなみに培養土メーカーで直営ガーデンセンターも運営している『プロトリーフ』では、袋が鉢代わりになる専用の土もあるのだとか。これは気軽!
「袋を開けて排水用の穴をあけたら、1苗植え、水をやるだけで育ちます。お子さんの自由研究にもおすすめですよ。トマトの他に、2〜3月から育て始めるのにぴったりなじゃがいも用(袋で育てるじゃがいもの土 「ポテトバッグ」)もあります」
4:鉢底石

「プロトリーフ 鉢底石 5L」(オープン価格)。軽くて崩れにくい、何度でも繰り返し使える硬質鉢底石。
鉢植えで育てるとき、水やりなどを繰り返すと鉢底の穴に土が詰まり、根腐れする場合もあるそうです。
「鉢底石を敷くと、排水性と通気性がアップします。土を入れる前に、鉢の高さに対して1/6ほどを敷いてください。10号の鉢なら2Lくらいでしょうか。
石のサイズは、あまり細かいものではなく、専用のゴロゴロしたものを使うことをおすすめします。一度で使い切らなくても、鉢底石は鉢植えに必ず使うので、買って損はありません」
5:肥料

肥料のパッケージには、成分の配合量が明記されています。
丈夫に育ち、収穫量をアップするためにも、肥料は欠かせません。
「そもそも植物が育つためには、窒素やリン酸、カリウムなどの栄養分が必要です。植物は土の中からこれらの養分を吸収していますが、土に含まれる養分には限りがあるので、放っておくと養分が足りなくなってしまいます。
そこで、肥料を使って養分を補います。これ追肥(ついひ)といって、成長や品種に合わせて与えます」
肥料に含まれる養分の役目
養分にはそれぞれ役目があり、肥料のパッケージにはその配合量が明記されています。「覚えておくと、肥料を買うときに選びやすいですよ」。
- 窒素(N):葉や茎など植物の体を大きくする養分。足りないと葉が黄色くなったりする。「観葉植物や葉野菜などは、窒素が多いといいです」。
- リン酸(P):花や果実にぴったりの養分。「トマトをたくさん実らせたいならコレ!」
- カリウム(K):根に最適な養分。「ジャガイモや大根、ニンジンなどを太らせたいときに」
化学肥料と有機肥料、それぞれのメリット・デメリット
また、肥料には「化成肥料」と「有機肥料」の、大きく分けて2種類あります。「それぞれメリットとデメリットがあるので、特徴を知って使い分けるのもアリです」。
- 化成肥料:空気中の窒素やリン鉱石、カリウム鉱石、一部の有機肥料など、自然界に由来する物質を、化学的に加工してつくられたもの。
メリット・・・有機肥料に比べて栄養価が高い。ニオイやカビの心配がない。
デメリット・・・長く使うと土壌の微生物がいなくなってしまい、土がカチカチになる。 - 有機肥料:動物や植物由来の自然のものを加工してつくられた肥料。
メリット・・・自然のものなので安心感がある。土壌が自然な状態でフカフカに保たれる。
デメリット・・・ニオイやカビが発生する場合もある。化成肥料に比べて効き目が穏やか。
イチオシは「顆粒状の化成肥料」

佐藤さんのおすすめは、しっかり効かせやすい化成肥料で、使いやすい顆粒状のもの。
「化成肥料には、希釈する液体、顆粒状のもの、アンプルに入ったものと、いろいろなタイプがあります。中でも初心者さんが使いやすいのは、顆粒状のものです。これは『コーティング肥料』とも呼ばれ、水がかかるとカプセルのお薬のようにジワッと溶けてゆきます。
ちなみに液体肥料は希釈する手間がかかるのと、アンプル状のものはなくなるのが速いというデメリットがあります」
必要に応じてそろえるもの
nullこれら5つのほかに、品種や状況に応じてそろえたほうがいいものもあります。
支柱

「ジョイントサポート支柱」880円(税込)。苗が小さい間はあまり必要性を感じませんが、ここから150cm近く伸びると考えると……。
「トマトやオクラなど、上に伸びて実がなる野菜が風雨で倒れないように支える道具を『支柱(しちゅう)』といいます。1本ずつバラバラのものと、リングで繋がったリング状のものがあり、初心者の方におすすめは使いやすいリング状。どちらも土に挿して使います。
最初は割り箸で代用してもよいですが、必ず必要になるので、苗や鉢などと同じタイミングで購入するとよいでしょう。
使い方は、茎や幹が倒れないように、天然素材の麻紐などで優しくくくります。ビニール紐など化学繊維の紐だと植物が傷つきやすいので避けてくださいね」
鉢底ネット
鉢底石がこぼれないように敷く鉢底ネットは、鉢底の穴の形状によっては購入を。
「もし穴が石よりも小さければ不要ですが、石がこぼれてしまいそうなら用意してください。ホームセンターや専門店なら、専用のものが数百円程度。100円均一でも見かけますよ」
スコップ

写真左「土入れ器」660円(税込)、右「移植ごて」770円(税込)。
鉢に土を入れたり、掘ったりする「スコップ」は、形状によって役目が違うそうです。また、土を鉢に入れるだけなら軍手をはめた手で入れてしまうのもありとのこと。
「左のような形は、土をしっかりすくって鉢へ入れるのに適しています。右のような尖った浅いタイプは、穴を掘るのに向いています。自分がどんなシチュエーションで使いたいのかをイメージして選んでくださいね」
害虫対策スプレー


おいしい野菜に寄ってくる害虫。早めに発見し、手でつまんで駆除すればOKですが、どうしても触りたくない!という方もいるでしょう。
「おすすめは、害虫がいないうちから予防的に天然由来のスプレーをかけておくこと。虫が苦手な酢などを使った食品由来のスプレーなら、かけてもすぐ収穫して食べることができますよ。
化学成分が入っているものは、効き目は高いですが、使用方法を必ず守ってください。かけて何日間かは食べてはだめです。
どうしても虫が苦手な方は、最初は食品由来のものから使ってみて、ステップアップするとよいでしょう」
100円均一も悪くない…けどね
nullもはや「ないものはない」と言っても過言ではない100円均一ショップ。鉢や支柱、さらに土や肥料も見かけますが……?
「必要な条件を満たしていればよいですが、とくに土質や肥料の効き目は値段に比例します。また、専門メーカーの肥料には独自に配合されている栄養素もあったりします。さらに、詳しいスタッフのアドバイスも仰げることを考えると、やはりホームセンターや専門店で購入されることをおすすめします」
う〜ん、確かに。ものは使いようですが、野菜がスクスク育つためにも、とくに土壌づくりにはちゃんとお金をかけたほうがよさそう。
さて、お待たせしました。次回は、今から育てると夏の食卓が大充実! おすすめの「夏野菜」を教えていただきます。
撮影/田中麻以(小学館)
【取材協力】
プロトリーフ

朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote