暑い=「花がだめになりやすい」は間違い?
null私たち人間も、外を歩くだけでぐったりする夏場。花も暑さで「だめ」になってしまうのでは? しかし松岡さん曰く「暑さだけが原因ではありません」。
「猛暑の中、切り花を長時間持ち歩くと、くったりして元気がなくなったように見えるかもしれません。でも、ご自宅でちゃんとケアしていけてあげれば、夏の花もしっかり長く楽しむことができますよ」(以下「」内、松岡さん)
1:水と茎先の雑菌繁殖を防ぐ
null「花がだめになる原因の一つが、水と茎先に雑菌が繁殖して腐ること。それらを防げば大丈夫です」
毎日、花瓶の水を替える
うっかり花瓶の水を替えそびれて、あれ?この水は、何日め……?はNG。花も生き物です。毎日、新鮮できれいな水を吸わせるほうがよいですよね。
「花屋の仕事は、毎朝、すべての水を替え、バケツを洗うことにはじまります。それぐらい、水を替えるのは大事です。
出来れば毎日、花瓶の水を替えましょう。その際、花瓶の内側をブラシやスポンジで擦り洗いし、ヌルヌルしないように清潔を保ちます。一緒に茎先もやさしく洗うとよいでしょう」
花瓶の水はタプタプに入れない
水はたっぷりあげたほうがよいというのも、思い込み。
「花瓶にタプタプにすると、茎だけでなく葉も水に浸かり、腐る原因になります。花瓶に底から5cmくらいの適量の水を入れ、水に浸かりそうな下の方の葉は取ります」
葉を剪定する
切り花を長持ちさせるためには、水を吸い上げて蒸散させる葉をとるのは大切な作業。余分な葉は、きちんと剪定します。
「買って帰ったとき、飾るうち、茶色に枯れた葉があったら、ハサミや手で剪定してください。枯れた葉は花全体に悪影響を及ぼすので、取ったほうが長く楽しめるんですよ」
ちなみに夏の花の代表ともいえるヒマワリはとくに葉がだめになりやすいのだとか。「バランスもありますが、ヒマワリはいける時点で、全ての葉を取っても大丈夫です」。
水切りをする
茎の長さを調節する場合や、花に元気を取り戻すために行うのが「水切り」です。
「水切りとは、水に浸けた状態で茎を切ること。持ち帰ってきた花がくったりしていたり、毎日の水替えで茎先が茶色っぽくなってきたら、その部分を水切りします。カットする長さは、茎の元気のない部分を切り落とせばOK。この時、水をたっぷり吸い上げられるよう、斜めに切るのもポイントです」
ハサミも清潔に
茎や葉を剪定するハサミも、清潔を保ちましょう。
「野菜を切る包丁と同じように、花を切るとハサミに液がつき、放っておくとベタベタしてきます。雑菌が増殖したり、場合によってはハサミが傷む原因に。使う前にアルコールを含んだ除菌シートなどで拭くのがおすすめです」
また、ハサミは花バサミを使ったほうが花もちがよりよくなります。
「紙切バサミは刃が厚く、茎がつぶれて水の吸いあげが悪くなります。花バサミは茎にかかる圧を最小限に抑えてスパッと切れるよう、刃を薄くつくられているんです」
雑菌の繁殖を抑える薬を使う
花屋で花束を買うと、切り花が長持ちする液体をもらえます。これは意味があるのでしょうか?
「基本的には水を毎日入れ替えればよいですが、あれは水の雑菌が増えるのを防ぎ、養分も与えてくれます。使ってみてもよいですね。
水の雑菌の繁殖を防ぎたいなら、10円玉を入れるという昔ながらの知恵もありますよ」
2:飾る場所を選ぶ
null「花は愛でてこそですから、本来は好きな場所に飾ればよいというのが大前提。でも、切り花全般が苦手とする環境もあるので、知っておくとよいですね」
直射日光・高温・強風のあたる場所は避ける
切り花を買うと紙などに包んでもらえますが、これは急な温度変化や風にあたるのを防ぐという意味もあるそうです。
「植物は、葉や花から水分を蒸散して呼吸をしているので、気温が高いとその活動が高まり、疲れてしまうんです。だから、直射日光があたる場所、高温になる可能性がある冷暖房器具の近く、強風のあたる場所は避けましょう。夏場なら、エアコンの風があたる場所には置かないほうが花もちがよくなります」
また、火元の近いキッチンも、花を飾るにはあまり向いていないのだとか。
「飾りたくなる気持ちはわかりますが、温度変化という意味ではあまりおすすめできません」
さらに、TVやパソコンのモニターのそばも避けるべき場所。
「熱を発する家電のそばに置くと、花が弱りやすくなります」
3:花首がたれてきたら水あげをする
null花首がたれたら、茎の先端を斜めに切り“水あげ”します。
「花がぐったりする原因の一つが、水が十分に吸えずに起こる“水さがり”です。茎の切り口の状態が悪いと、花は水をちゃんと吸い上げられません。一方で、花や葉から水分の蒸散は進むので、水不足で弱ってしまうのです。
これに有効なのが水あげ。花に一気に水を吸わせる方法で、先ほどご紹介した“水切り”のほかに、“湯あげ”“氷水に浸ける”などがあります」
「湯あげ」の方法
「湯あげには、2つのメリットがあります。1つは、切り口の消毒。熱いお湯に茎を浸けることで、その部分のバクテリアを死滅させます。2つ目は、茎の中に入った空気を抜き、一気に水を吸いあげてくれる効果。これらによって、再び元気を取り戻すんです」
- 水に浸かる部分の葉を取り除き、新聞紙などで花と葉を守るように包む。
- 湯に浸ける直前に茎の先端を斜めにカットする。
- 沸騰した湯に切り口を浸け、茎の中の空気を抜く。
※湯に浸ける時間は、短時間でOK。茎が細く、やわらかい植物は数秒、そのほかの植物でも20〜40秒くらいまでが目安。
氷水に浸ける方法
「水温や室温が高くなりやすい夏場は、花瓶の中に氷を入れて水温を下げるのも1つの方法です。ただし、入れすぎは禁物。2〜3個入れて、そのまま溶かせば大丈夫です。水温が下がることで、バクテリアなどの雑菌も発生しづらくなります」
「湯あげは向いていない花もあるので、注意が必要です。夏の花なら、これらはお試しいただいてもよいかと思います」
<湯あげに向いている夏の花>
- 向日葵
- デルフィニウム
- ヒペリカム
- アンスリウム
- リシアンサス
- エリンジューム
- リモニューム
対処法を知っていれば、もっと楽しめる!
null今回ご紹介した方法を実践することで、夏場も4〜5日はきれいな姿を楽しめるとのこと。飾っている花が、どうも元気がないぞ?という場合は、どうぞ試してみてください。
撮影/小倉雄一郎(小学館)
【取材協力】
フラワーコーディネーター 松岡陽子さん
花のアトリエ「Arianna(アリアンナ)」主宰。イギリス最古のフラワースクール「コンスタンス・スプライ」元校長であるゲイルデリック氏を始め、フランスのメートル・ダール(人間国宝)、マルセル・ルブラノ・ギエ氏に師事。ディプロマ取得。
現在は、個人、企業向けアレンジメントレッスンを中心に活動。舞台の装花や、ブライダルの花も手がけている。上品でシックな色使いを得意とし、その質の高いアレンジメントが女性を中心に人気を集める。著書に『プリザーブドフラワーレッスン』(浩気社)。
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote