【ポイント1】包丁は硬いものは苦手です!
null前回に続き、『貝印』の包丁マイスター(R)である林 泰彦さんに、包丁の扱い方について教えてもらいました。
まずは包丁の各部分の呼び方をおさらいしておきましょう。
―調理で使う中で気を付ける点について教えてください。
林さん:出刃包丁や冷凍包丁など専用の包丁を除き、普段使い用の三徳包丁や牛刀で、凍った食品や、肉・魚の骨など、硬いものを切らないでください! 高い確率で刃が欠けたり、傷んで切れなくなってしまいます。
―分かっていてもついつい「ちょっとだけ!」と無理して切ってしまうこと、あります……。まな板はどんなものが良いですか?
林さん:一般的な木のまな板、樹脂製のものなどはどれでも問題ありません。ガラスなど硬い素材で、切ったときに「カンカン!」と音がするようなまな板がありますが、これは刃に負担がかかるのでおすすめしません。
また、切った食材を寄せるときには、刃の部分を使うと刃が傷むので、峰側で行うと良いでしょう。
【ポイント2】簡易シャープナーも上手に使おう!
null―切れ味が落ちたら研いで使用しますが、砥石を使うのはちょっとハードルが高い、という人も多いでしょう。やっぱり「簡易シャープナーより砥石」なんでしょうか?
林さん:新しいものであれば、簡易シャープナーでも問題なく使うことができますよ。角度調整も必要なく扱いが簡単なので、日常使いには大変便利です。
大切なのは、簡易シャープナーであっても正しい使い方で研ぐということです。シャープナーについている説明書をしっかり読んでから使用しましょう。
シャープナーの使い方でよくある失敗が、研ぎやすい真ん中の部分ばかりを研いでしまうこと。
研ぐときは、あごから切っ先にかけて全体をしっかり研ぐことを心掛けます。
また、シャープナーの砥石も使い続けているうちに摩耗してしまうので、切れ味が戻らなくなってきたな、と思ったら寿命かもしれません。シャープナーの買い替えを検討してみてくださいね。
―シャープナーの寿命については考えたことがありませんでした! 研ぐ頻度や回数についてはどうですか?
林さん:包丁はなるべく研ぐ回数を少なくした方がいいんです。前回お話ししたように、良い包丁は一度しっかり研ぐと良い切れ味が長く続くので、頻繁に研ぐ必要がない、よって長持ちするということになります。ですから、研ぐ頻度は包丁自体の品質の差や使い方により本当にさまざまです。
タイミングとしては、トマトの皮がスッと切れず、刃が皮に食い込むようになったときというのがひとつの目安。切れない包丁を使っていると、手に無駄な力が入ったりして危険ですから、そうなったらすぐに研ぐようにしてください。
【ポイント3】安全な包丁の洗い方・拭き方
null―洗うときにはどんな点に気を付ければいいですか?
林さん:食器と同じように、スポンジに食器用洗剤を付けて洗えばよいのですが、スポンジの硬い面でゴシゴシこするのは刃に良くありません。柔らかい方の面で洗うようにしてください。あごから切っ先に向けて一方向に動かすと良いでしょう。
また、安全面から、洗ったり拭いたりするときには、必ず手を刃の側からでなく峰の側から当てるようにします。スポンジや布は、包丁の刃で案外あっさり切れてしまうんですよ。
台の上に置いて洗うとより安定します。
また、塩素系の漂白剤はステンレスを傷めるので、除菌したいときはアルコールを使用することをおすすめします。ただし、ハンドルの素材によってはアルコールで劣化する場合があるので、注意してください。
林さんのお話を伺いながら、包丁って身近すぎて手入れが少し雑になっていたかも!と反省しました。ひとつひとつのポイントは小さなことでも、積み重ねが大切。料理の頼れる相棒として、より愛着の湧く道具になっていく過程をぜひ一緒に楽しんでいきましょう。
撮影:田中 麻以(小学館)
【取材協力】
林 泰彦(はやし やすひこ)さん
貝印株式会社 マーケティング本部 マイスター推進部
包丁マイスター(R)。貝印の資格制度である「マイスター制度」に携わるとともに、国内はもとより海外でも包丁研ぎのセミナーやデモンストレーションに登壇、Twitterの包丁研ぎライブ動画では5.8万人の視聴者を獲得するなど、包丁研ぎ界の巨匠として活躍中。
「貝印の切れ味チャンネル」にて包丁の研ぎ方やメンテナンス方法などを、初心者や女性の方にも簡単に分かりやすく発信中。