【ポイント1】包丁のサイズと手の大きさはあまり関係ありません
null今回お話を伺ったのは、貝印で包丁のスペシャリスト「包丁マイスター(R)」として活動されている林 泰彦さん!
―同じ包丁でも、サイズがいくつかある場合がありますよね。包丁の長さは手の大きさに合わせて選べばよいですか?
林さん:手の大きさというよりも、実は包丁の使い方や目的によって使いやすいサイズは変わります。
一般家庭で最も多く使われているのがオールマイティに使える「三徳包丁」。サイズ(刃の部分の長さ)は165mmが中心です。
一方、料理が好きな方に人気があるのがシェフズナイフとも呼ばれる「牛刀」。牛刀は刃の長さのバリエーションが幅広い包丁ですが、これは210mm。一般的な三徳包丁と比べると大きく感じるかもしれませんが、実は女性でも扱いやすいサイズです。
刃が長い包丁というのは、大きめのキャベツやかたまり肉、食パンなどもスッと一度で切れるので、慣れると調理がとても楽に感じられると思いますよ。
また、野菜の皮むきやちょっとした刻み物などに重宝するのがペティナイフ。これがサブとして1本あるととても便利なので、ぜひ一度試してみてほしいです!
―手が小さいから刃が短い包丁を、というわけではないんですね! 重さについてはどうですか?
林さん:高齢の方や女性など、重い包丁は疲れるから苦手という方には、軽くて小回りの利く「小三徳」と呼ばれる145mmサイズの包丁も人気です。
ただし、包丁は、重心の位置により、実際の重さと持って感じる重さが異なる場合があります。単純に軽いから楽というわけでもないんですね。購入の際は、できれば実際に手に持ってみて、しっくりくる重さや大きさ、重心の位置を探ってみてほしいです。
【ポイント2】切れ味が長く続く良い包丁は、1万円前後を目安に
null―価格の幅が広すぎて、どれを選べばいいのかわかりません!
林さん:包丁の価格を決めるのには、大きく分けて鋼材の品質と刃付け、作る工程での加工技術という要素があります。加工技術については刃付けや焼き入れなどの精度、刃とハンドルのつなぎ目の仕上げの美しさ、デザインなどを究めるほど高価になっていきます。
素材や焼き入れなどにこだわって作った良い包丁は、シンプルに切れ味が良い。また、その切れ味が長く続きます。切れ味が落ちてきたら研ぎますが、研いでからもまたしばらくは良く切れる。その繰り返しで、長く愛用できます。
安価な包丁は、しっかり研いだ直後なら確かに切れるようにはなりますが、その後切れ味が落ちるのが早いことが多い。そこが大きな違いなんです。
価格の目安としては1万円以上のものを選べば間違いないと言えるでしょう。それ以下でも、貝印では「青藤(7,000-8,000円台)」、「茜(4,000-5,000円台)」などのラインは毎日の料理には十分な品質を備えていて、おすすめできます!
【ポイント3】料理をする人が複数いる場合は1人1本が理想
null―共働き家庭など、家庭の中に料理担当が複数いる場合は、どちらかに合わせて包丁を選ぶべきでしょうか?
林さん:できればそれぞれが自分に合った包丁を使って欲しいですね。使い方のクセなどもありますし、マイ包丁を愛着を持って手入れしながら使っていってもらうのが理想です!
ちなみに、今市販されている両刃の洋包丁は一部を除き基本的に右利き、左利きどちらの人でも使えるようになっているので、共有する場合でもそこは気にしなくても大丈夫ですよ。
以上、包丁選びのイロハをじっくり伺いました。包丁のサイズ選びに手の大きさがあまり関係ないという点には一番驚きました! 確かに、板前さんなどは調理の工程に合わせてさまざまな包丁を使い分けています。手でなく食材や作業のしやすさで選ぶ包丁は変わるんですね。
次回は、せっかく買った包丁を長持ちさせるには? 日々の使い方で気を付けたい点やお手入れ方法について学びます。
撮影:田中 麻以(小学館)
【取材協力】
林 泰彦(はやし やすひこ)さん
貝印株式会社 マーケティング本部 マイスター推進部
包丁マイスター(R)。貝印の資格制度である「マイスター制度」に携わるとともに、国内はもとより海外でも包丁研ぎのセミナーやデモンストレーションに登壇、Twitterの包丁研ぎライブ動画では5.8万人の視聴者を獲得するなど、包丁研ぎ界の巨匠として活躍中。
「貝印の切れ味チャンネル」にて包丁の研ぎ方やメンテナンス方法などを、初心者や女性の方にも簡単に分かりやすく発信中。