洋包丁は両刃、和包丁は片刃。切る食材で使い分けるべし!
null今回教えてくれたのは「包丁マイスター」の林泰彦さん。ホームセンターや百貨店などで包丁研ぎの実演を行い、研ぎのプロの育成に日々力を注いでいます。まず、林さんは包丁の種類について教えてくれました。
包丁の種類は大きく分けて、「洋包丁」と「和包丁」の2つ。その違いは、洋包丁は刃が両方付いているのに対し、和包丁は片方にしか付いていません。さらにそれぞれ、以下のように分類されます。
(1)洋包丁・・・主に両刃
・三徳包丁
一般家庭でよく使われる包丁はこちら。刃の幅が広く、肉、魚、野菜など万能に使えます。ただし、凍っているものや魚の骨など硬いものを切るのは苦手。
・牛刀包丁
三徳包丁よりも先端が尖っていて、刃が18〜30cmなど長いものが多い。先端が細くなっているので、肉がさばきやすく、肉や魚の薄切りにも適しています。特に刃渡りが長いものはプロがよく使います。
・ペティナイフ
三徳包丁よりも小さく、まな板の上で使うよりも、手に持った食材を切ったり、皮をむいたりするのに最適。
「一丁で何でも済ませようというのも分かりますが、三徳または牛刀とペティの組み合わせを揃えておくと料理の幅が広がって楽しく便利だと思います」(以下「」内、林さん)
(2)和包丁・・・主に片刃
・出刃包丁
魚を三枚におろしたり、さばく時に使います。先端は薄く、刃元は厚いのが特徴。洋包丁に比べると、やや重みがあります。
・刺身包丁(柳刃包丁)
出刃包丁に比べて細長く、物に対して引いて滑らせることで切れるので、長い刃のストロークを利用して、刺身のサクを切るのに適しています。刺身包丁で切ると切断面が美しく、角がキレイに立ちます。
「洋包丁に比べると、和包丁の方が切る目的が明確」と林さん。特に和包丁は和食の職人などプロが使うことが多いそう。自分はどんな風に使いたいのか、目的に合わせて選ぶことが大切ですね。
プロが選ぶのは、切れ味の良さが持続する包丁
nullさらに、林さんは「いい包丁とは一体何か?」と問いかけます。
「最近は100円ショップでも包丁を買うことができます。はじめは切れるかもしれませんが、でもすぐに切れ味が落ちてくる。包丁は切れ味が良くないと意味がありません。
切る時に包丁にダメージを与えているのは、実は食材ではなく、“まな板”なんです。食材を切る度に、刃先をまな板で潰していると思ってください。だから、使っていけば包丁の切れ味は必ずだんだん落ちていくもの。『研がなくていい包丁はないのですか?』と聞かれることがありますが、食材をまな板で切る限り、残念ながらそれは難しいんですね。
私が思う良い包丁は、刃持ちがいい包丁。刃先が潰れにくく、切れ味のよさが持続する。それが良い包丁だと思っています」
鋼よりもステンレスの方が錆びにくい!
nullさらに、「包丁は硬さと強さが大事!」と、林さんは包丁の材質についても教えてくれました。材質というと少し専門的な内容に感じますが、なぜ百貨店の包丁と100円ショップの包丁の切れ味が違うのか分かりますよ!
(1)鋼包丁
鉄に炭素が少量混ざっている状態で強度を増している鉄と炭素の合金。鉄と炭素が混ざっているだけでは強くならず、焼き入れをすることで、鉄の3〜4倍も硬くなります。ただし、強度はあるが錆びやすいのが難点。水に濡れたり汚れた状態では30分ほどで錆びてしまうこともあるため、扱いが難しい。
(2)ステンレス刃物鋼
元は鋼(鉄+炭素)で、さらにクロムを少量足して焼き入れをします。クロムを足すことで、グンと錆びに強くなります。
「ステンレスは切れない、研げないとおっしゃる方がいますが、全くそんなことはありません」
(3)特殊ステンレス刃物鋼
上記のステンレス刃物鋼に、さらに、バナジウム、タングステン、モリブデン、コバルトなどを足して焼き入れをしたもの。錆びにくいうえ、さらに強度が増します。
林さんは“刃物の3大要素”は、「1、材質がいいこと、2、焼き入れが上手にされていること、3、刃付けがいいこと」と話します。そのため、3つの要素を満たしている包丁は価格も高くなりますが、その分切れ味は抜群! 刃持ちもいいので、切れ味が落ちにくいんですね。
いかがでしたか? プロが教える包丁の専門知識を知っておくと、自分で選ぶ時にも役立ちそうですね。毎日使う道具だからこそ、切れ味の良い状態を長持ちさせたいもの。次回は「正しい包丁の研ぎ方」について教えてもらいます!
【取材協力】
林泰彦・・・『貝印』の包丁マイスター。2010年に入社し、包丁など刃物に関する知識や研ぎの技能が認められ、2017年4月より貝印の資格である「マイスター制度」の責任者になる。現在は国内はもとより海外でも包丁研ぎのセミナーやデモンストレーションを行い、Twitterの包丁研ぎ動画では5.8万人が視聴するなど、包丁研ぎ界の巨匠として活躍中。
取材・文/岸綾香