材料にはかならず「常緑樹」を使う
nullドイツ語で「壁飾り」を意味する「スワッグ」には、かならず常緑樹が使われています。これは、このままの姿でドライになる常緑樹で「永遠の命」を表しているからなのだとか。
「同じようにクリスマス飾りで『リース』もありますが、こちらにも常緑樹を使います。始まりも終わりもない一定方向に丸く常緑樹をあしらうことで、『永遠』を意味しているんですよ。
このほかにも、スワッグやリースに使う赤色は『イエス・キリストが流した血』。金色は『光』といった意味合いを持つともいわれています。ただ、赤色や金色は飾りなので、かならず入れなければならないわけではなく、自由に組み合わせればOKです」(以下「」内、松岡陽子さん)
つまり、常緑樹を使うことが唯一のルール。ここからは、松岡さんがおすすめする材料をご紹介します。
スワッグの材料
null常緑樹(モミ類)
ベースとなるモミ類は、何種類かを組み合わせることでボリュームや表情が出ます。このとき、服やメイクと同じように“イエベ(イエローベース)”か“ブルベ(ブルーベース)”か意識すると、まとまりが出るそうです。
「同じ緑色でも色のトーンがちがいます。イエベならイエベ同士、ブルベならブルベ同士を組み合わせると、ぐっとまとまりが出ます。ただ、あえてイエベとブルベを混ぜるのも今っぽいので、好みでたのしんでみてください。
花屋さんによっては、枝ものなら購入前に組み合わせられるところもあります。可能なら、気になるモミ類をあてがって印象をチェックするといいですね」
<イエベのモミ類>
「明るい印象のイエベのモミ類は、金色の飾りとの相性もよいです」
- シノブヒバ…クリスマスに欠かせないコニファー類。透け感のある葉が美しい。
- ヒムロスギ…シルバー味を帯びた、こんもりとした葉が特徴。クリスマスシーズンによく出回る。
<ブルベのモミ類>
「一年中出回っているユーカリや、紫の花をつけたリモニュームと組み合わせるのも素敵です」
- オレゴンモミ…氷点下にもなるオレゴンで育ったモミ類で、葉が散りにくい。
- ブルーアイス…もっとも香りの強いコニファー類ともいわれる。青緑色の葉が魅力的。
- ブルーバード…青緑色の葉の裏は灰白色で、シックで落ち着いた雰囲気。香りもよい。
飾り
スワッグの飾りは、花屋さんはもちろん、100円均一ショップや『HANDS(ハンズ)』、オンラインショップなどでも手に入ります。
「ベースとなる常緑樹との相性で、お好みのものを選んでください。ポイントは、長い期間飾るので、そのままの姿が保てるものを選ぶことです」
<定番のもの>
「“繁栄”の象徴でもある木の実は、ホリデーシーズンの伝統菓子でもよく登場します。中でも松ぼっくりは、スワッグやリースの定番ですね。
赤色は、クリスマスの定番カラー。金色は、南天や水引などと組み合わせれば、日本のお正月にもなじむスワッグに。紫の花をつけるリモニュームも、スワッグに取り入れやすい花材です」
- 木の実…スワッグのポイントになる木の実「松ぼっくり」。ワイヤーやボンドで固定する。
- 赤い実…乾燥するとかたくなる「サンキライ」は、赤色のアクセントを加えたいときに。
- 金色の葉…花屋さんやクリスマスシーズンの100円均一ショップなどでも見かける花材。
- リモニューム…そのままドライになるので、モミ類と一緒にベースに使っても。
<トレンド感が出るもの>
「今、フラワー界では“南半球の植物”がトレンド。ベースやポイントとなる飾りに使ってみるのもおすすめです」
- ユーカリ…モミ類とともにベースにも使える。通年、出回っているので、季節のスワッグづくりにもおすすめ。
- アーティチョーク…蕾の状態でドライになったアーティチョークは、松ぼっくりのような存在感のある花材。
資材と道具
縛ったり、固定したりするのに必要な資材と道具はこちら。
「スワッグは、根本がほどけないようにきつく縛ります。おすすめは、見えても気にならない麻ひもです。
リボン類は、縛った根本が見えないようにする役割と、最後のお化粧。赤色や金色は定番ですが、これにとらわれなくても大丈夫。リネンやコットンなどのナチュラル素材を選ぶと、今っぽいスワッグになりますよ」
- 麻ひも…スワッグの根本を縛り、引っ掛ける輪にする。太さはお好みでOKだが、細すぎないものを。ビニール紐やラフィアでも代用可能。
- リボン類…幅3〜4cmほどの太めのものがおすすめ。ワイヤーが入っていると形がつくりやすい。ラフィアをリボン代わりにすると、ナチュラルな印象に。
- ワイヤー…木の実を固定するために使う。100円均一ショップでも手に入る。
- オーナメント…ツリーに飾るオーナメントを取り入れても。お正月らしくしたければ、水引に。
- はさみ…かたい枝もすぱっと切れる花切りはさみがあると、作業しやすい。
スワッグの作り方
null好みの花材や資材をそろえたら、作っていきます。このとき、一つコツが。
「モミ類はヤニが出るので、素手でさわるとベタベタします。さわる前にハンドクリームを手のひらに塗っておくと、お湯で手を洗うだけでサッと落ちますよ。もしくは、メイク落とし用の石けんで洗うとよいでしょう」
事前にやっておこう<木の実へのワイヤーのかけ方>
- ワイヤーの両端の長さが均等になるように持ち、木の実の根本から3枚くらい上の葉の間に、ワイヤーを半周かける
- ワイヤーを木の実に沿わせながら根本にもっていく
- 実を一定方向にまわすとワイヤーがしまる。さらにワイヤーだけをまわすと、2本のワイヤーが1本にまとまる
作り方
1.モミ類の下葉を5cmくらいとる
「ハサミでカットしても、手でむしってもOKです。下葉はキレイにとります。何本かモミ類を組み合わせる場合、下葉をとる長さはそろえておくと仕上がりが美しいです」
2.ベースのモミ類を持つ
「壁やドアに飾るので、背中側がなるべく平らなものを選びます。枝の長さは長くても短くてもOK。今回のように長いと大人っぽい印象になりますね」
3.短いモミ類を重ねる
「同じ種類でもよいですが、ちがうモミ類を組み合わせると色味や形に変化が加わります。このときにユーカリを重ねても素敵に仕上がりますよ」
4.アクセントになるものを重ねる
「赤い実や金色の葉、リモニュームなど、アクセントになる花材を入れます。重ねるときは、長さやボリューム感などもチェックしながら試してみてください」
5.ポイントになるものをのせる
「木の実やアーティチョーク、オーナメントなど、ポイントになるモチーフをのせましょう。固定の仕方はワイヤーでもボンドでも、取れなければ大丈夫です」
6.麻ひもできつく縛る
「飾るうちに水分が抜けるので、縛った根本がなるべくゆるまないように、ぎゅっときつく縛ります。麻ひもはあらかじめ4重になるようにしておくと、何度も巻きつける手間が省けますよ。
この麻ひもは、壁にかけるためのループも兼ねています。余った麻ひもはカットしますが、間違えてループ側を切らないように注意してください」
7.リボンを結ぶ
「お好みのリボンを結んだらできあがりです。もっとクリスマス感を高めたければ、赤いリボンを選んでもかわいいですが、シックなチェック柄も暖かい冬のムードが出ます」
応用編
null「スワッグはクリスマスのもの、と捉われなくてOK。自由に季節のスワッグを楽しんでみてほしいです」と松岡さん。基本の作り方はそのままに、花材や資材を変えた2種類を作っていただきました。
トレンド感のあるナチュラルなスワッグ
ブルーアイスをベースに、ユーカリ、リモニューム、オレゴンモミと、ブルベでまとめたスワッグ。クリスマスにはもちろん、季節を問わず飾りたくなるデザインです。
「花材はもちろん、リボンの印象もあると思います。あえてナチュラルな素材感と色みのリボンを組み合わせたことで、一年中飾れるスワッグになりました」
一つで長く冬を楽しめるスワッグ
一つでも、飾りを変えるだけでクリスマスからお正月まで、洋も和も楽しめるスワッグができます。
こちらはシノブヒバにオレゴンモミを重ね、金色の葉、木の実をのせ、ナチュラル素材のラフィアで束ねたもの。そこに、クリスマスならクリスマスらしいオーナメントを。お正月なら赤い実を合わせています。
「オーナメントは、好きなもので楽しんでください。お気に入りのツリー用オーナメントでもいいですし、近頃だと100円均一もバリエーション豊富ですね。お正月には、赤い木の実を南天にしたり、小さな水引を合わせても」
わかりやすい動画で「作り方」をチェック!
スワッグの作り方を約60秒のリール動画でも紹介しています。ぜひご覧ください!
ホリデーシーズンになると、おしゃれな花屋や雑貨屋で見かけるスワッグ。コツさえ押さえれば、自分らしいデザインをたのしむことができます。花材や資材さえ決まれば、束ねるのはほんの10分ほどあれば出来上がり。
次の休日に、トライしてみませんか?
撮影/田中麻以 (小学館)
【取材協力】
フラワーコーディネーター 松岡陽子さん
花のアトリエ「Arianna(アリアンナ)」主宰。イギリス最古のフラワースクール「コンスタンス・スプライ」元校長であるゲイルデリック氏を始め、フランスのメートル・ダール(人間国宝)、マルセル・ルブラノ・ギエ氏に師事。ディプロマ取得。
現在は、個人、企業向けアレンジメントレッスンを中心に活動。舞台の装花や、ブライダルの花も手がけている。上品でシックな色使いを得意とし、その質の高いアレンジメントが女性を中心に人気を集める。著書に『プリザーブドフラワーレッスン』(浩気社)。
朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote