手打ちそば店でお話を聞きました
nullもりそば(ざる、せいろと呼ぶことも)など冷たいおそばを注文すると、食事が終わったタイミングで“そば湯”を出してくれるお店が多いですよね。
そばを茹でた湯のことだとは知っていましたが、あのトロリとして、そばの甘味がほんのり感じられる“そば湯”の風味を出すためには、ある程度の量を茹でる必要があるそうです。
お話を伺ったのは、東京・杉並区に本店を構える人気そば店「杉並まん月」の店主、小幡紀善さん。
そば粉が8割、小麦粉などのつなぎが2割の“二八そば”を、毎日打ちたてで提供しています。
ランチタイムが落ち着いたころ、お店にお邪魔しました。
そば湯って、どうやって作るの?
nullお店で使っている45リットルのそば釜で、約30食分を茹でた状態を見せてもらいました。
色は白く濁って、底の方には粉が沈殿しているとのことです。これをよくかき混ぜて“そば湯”として提供します。
「そば湯は“作る”というよりも、そばを茹でる過程で自然と“できる”と言うほうが適切です。温かい“そば湯”を食後に飲んで、お客さんにちょっとハッピーになって帰っていただきたい、という気持ちで提供しています」と小幡さん。
通常、お店では効率化のため、ランチタイム終了後、保温ポットに小分けしておき、夜の営業でポットのまま提供しているそうです。ほかのお店でも、保温ポットでそば湯が出てくるのを見かけることがあります。
濃くなればなるほど美味しい?
nullちなみに、開店早々の時間帯だと、そば釜の湯はサラサラした状態なので、お湯にそば粉を溶いたものを“そば湯”として提供しているとのこと。
こういった対応は、お店によってそれぞれだと思われます。
また、何度もそばを茹で、湯が濃くなればなるほど美味しい“そば湯”になるかというと、そうではないらしいのです。
「濃くなりすぎると、底に沈殿した粉が焦げてきてしまいます。なので、昼の営業から夜の営業へ切り替えるタイミングで1日1回、大晦日などの繁忙期はさらに数回、釜の湯を入れ替えています」とのことでした。
そば湯はお店によって様々
null透明のガラス容器に移して、そば湯の色を見せてもらいました。
使用するそば粉や、茹でるそばの量などによって、そば湯の味わいは変わってくるので、当然ながら、お店によって個性が生まれます。
取材以外に訪れた専門店でも、そば湯によくよく注目してみると、乳白色のものから透明感のあるものまで色味も様々。口当たりも、サラッとしたものからトロトロのものまで、いろいろでした。
そば湯の栄養・効能が知りたい
null“そば湯”の口当たりがトロッとしているのは、おもに打ち粉が湯に溶け出したもので、そば自体から溶け出す量はわずかだといわれます。
ですが、多くの店では打ち粉にもそば粉を使っているので、そばの成分を摂取することが期待できます。
管理栄養士のFukaさんによると、「そばには必須アミノ酸のリジンやビタミンB群、ルチンなど、栄養が豊富に含まれており、疲労回復や美肌効果、腸内環境改善、抗酸化作用など体に嬉しい効果がたくさん期待できます。中でもビタミンB群は水溶性ビタミンなので、そば湯にもたくさん溶け出しているため、ぜひ飲んでおきたいですね」
美味しいそばを堪能したあと、“そば湯”でほっこり温まれば、満足感も倍増。健康にもいい効果があれば、なお嬉しいですね。
大晦日に食べる“年越しそば”、今年はそばとともに、“そば湯”もじっくり味わって、年の瀬を楽しんでみてはいかがでしょう?
次回は、「そば湯の味わい方、家庭での作り方」についてご紹介します。
写真撮影/辺見真也
ライター、J.S.A.ワインエキスパート。札幌の編集プロダクションに勤務し、北海道の食・旅・人を取材。夫の転勤で上京後、フリーでライティングや書籍の編集補助に携わる。小学生のころから料理、生活、インテリアの本が好きで、少ない小遣いで「憧れに近づく」ために工夫し、大学では芸術学を専攻。等身大の衣食住をいかに美しく快適に楽しむか、ずっと大切にしてきたテーマを執筆に生かしたいです。小学生のひとり息子は鉄道と歴史の大ファン。