つゆをそば湯で割るときの黄金比は?
null皆さんは、お店で出された“そば湯”をどうやって飲みますか?
そば猪口に残ったつゆを、そば湯で割って飲むという人が多いかと思いますが、そば湯とつゆの黄金比はあるのでしょうか。
小幡さんに尋ねたところ、「特にありません。お客様のお好みで味わっていただくのがいちばんだと考えています」とのこと。
「そもそも、お店によってつゆの濃さも、そば湯の味わいも違います。つゆは、そばとの相性、お店のこだわり、お客様の好みなどにより、だしをとる食材、だしの取り方、調味料の選び方や火の入れ方など、店によって千差万別です」。
お店では、熟成した高級かつお節“本枯節”のみでとったかつおだしに、砂糖、みりん、醤油を合わせて2週間ほど熟成させた“かえし”を合わせてつゆを作っているそうです。
「そば湯で割って美味しく飲めることも、“美味しいつゆ”の条件だと思っています」と小幡さん。
各店の個性が光る“そばつゆ”。そば湯で割って、その味わいを堪能してみてはいかがでしょう?
いろいろな楽しみ方でそば湯を堪能
nullそばをいただいた後のつゆに、そば湯を注いで味わうと、人肌に温まったつゆから濃厚なかつおだしがふわりと香り、甘く香ばしいそばの香りをまといながら、まろやかな醤油の風味が引き出されました。
お店では、突き出し(お通し)の「揚げそば」を少し残しておき、そば湯で割ったつゆにクルトンのように浮かべて楽しむ常連客もいらっしゃるとか。
ちなみに小幡さんは、そばを食べるときにはわさびは使わず、最後につゆをそば湯で割るときに、わさびを溶き入れるのがお気に入りだそうです。
「うちの店では、うんちくなどは一切言いません。お客様の好きなように楽しんで、ハッピーになってもらえたらと思っています」と小幡さん。
そば湯だけで飲んでもいい?湯飲みを使って飲むのはOK?
null“そば湯”は、つゆを割っていただくものというイメージがありますが、“そば湯”だけをそのまま味わいたいときは、どうしたらいいのでしょうか?
「もちろん、それもお好みで。お申し付けくだされば、別にお猪口を用意しますし、お茶の湯飲みを使うのも、ご自由にどうぞ」とのことでした。
基本的に、そば湯は冷たいそばの食後に出されますが、かけそばなど温かいそばを注文したときにも、出してもらうことは可能なのでしょうか?
「はい。温かいそばのときでも、言ってくださればお出ししますし、そういうお客様もたくさんいらっしゃいます」とのこと。
今回、ご紹介したのは、「杉並まん月」さんのお話なので、なかには対応の異なるお店もあるかと思いますが、「おそばがとても美味しかったので、そば湯を味わってみたい」と気持ちを込めて、まずは気軽にお願いしてみようと思いました。
そば湯って家庭でも作れるの?
nullそばを茹でた湯が“そば湯”であるならば、お家でも気軽に楽しむことができそうですね。
ただし、その場合は、そばの選び方や茹で方で気を付けたいポイントがいくつかあるようです。
「市販されている乾麺には、まわりに馬鈴薯のデンプンが付いたものも多く、保存のために食塩も使われるのが一般的です。また、なかにはそうでないものもありますが、そば粉の割合よりも小麦粉の割合の多いものが主流です」とのこと。
「とはいえ、多少なりともそば粉は使われているので、“そば湯に皆さんが何を求めるか”次第だと思います」と小幡さん。
お店でいただくようなそば湯の味わいを求めるなら、そば粉を主体に、できるだけ純粋な原料で作られたものを選びたいところ。
年末に、専門店などから売り出される、打ち立ての手打ちそばに注目してみるのもおすすめです。
そばの美味しい茹で方は?
nullここで、もうひとつ気を付けたいポイントが、そばの茹で方です。
「厳密に言うと、家庭用の設備や鍋でそばを茹でることは難しいのですが、せっかくなので、ご家庭でも美味しく召し上がっていただこうと、店のホームページでは“上手なそばの茹で方”をご紹介しています」
それによると、できるだけ大きな鍋を使い、いちどにたくさんのそばを入れないこと。目安としては、2リットルの鍋なら、1人前ずつを茹でます。
そばが切れないよう優しくかき混ぜ、火加減に気を付けながら、茹で上がったそばを手付きのザルですくい、流水でしっかり洗った後、氷水で〆ます。
そばは茹でたてが肝心なので、茹であがったものを順次食べていきましょう。
最後に鍋に残った湯を“そば湯”として楽しむことができます。
いかがでしたか?
日本の伝統食を彩る習慣としての“そば湯”。店から客への“おもてなしの心”に感謝しつつ、自分好みの味わいを追求すれば、“二度目のご馳走”として、さらに楽しみが広がりそうですね。
そばの選び方や茹で方に気を付ければ、家庭でも味わうことができます。
もうすぐ新しい年がやってきます。美味しいそばと“そば湯”で、年越しを楽しんでみてはいかがでしょう?
写真撮影/辺見真也
ライター、J.S.A.ワインエキスパート。札幌の編集プロダクションに勤務し、北海道の食・旅・人を取材。夫の転勤で上京後、フリーでライティングや書籍の編集補助に携わる。小学生のころから料理、生活、インテリアの本が好きで、少ない小遣いで「憧れに近づく」ために工夫し、大学では芸術学を専攻。等身大の衣食住をいかに美しく快適に楽しむか、ずっと大切にしてきたテーマを執筆に生かしたいです。小学生のひとり息子は鉄道と歴史の大ファン。