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お正月に「おせち」を食べるのはなぜ?その由来と意味って…【知っておきたい食の歳時記】

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新年を迎えて食べる正月料理と言えば「おせち」。最近では洋風や中華風などさまざまなバリエーションのおせちも登場していますが、いずれも手の込んだ料理が何品も詰められた豪華なものです。ではその由来や食材の意味は……?料理研究家・時吉真由美さんに教えていただきました。

「おせち」ってそもそも何でしょう。その意味と由来は…

━━なぜお正月におせちを食べるのか、そもそもおせちとは一体何なのか、その意味についてご存じでしょうか。今さら人にはちょっと聞きにくい「おせちの由来」について、料理研究家・時吉真由美さんに詳しく聞いてみると……。

時吉真由美さん(以下、時吉):おせちは漢字で「御節」と書きます。その起源は古く、奈良時代からとも平安時代からともいわれていて、じつに1000年以上もの歴史があるんですね。

「節」とは、一年の節目となる日の「節句」のことです。宮中では、元日などの節日に「節会(せちえ)」という儀式を催し、「節供(せちく)」と呼ばれる料理を神に供える風習がありました。

江戸時代になると、幕府は次の5日を「五節句」として公式な式日と定めました。

17日=人日(じんじつ)

33日=上巳(じょうし)

55日=端午(たんご)

77日=七夕(しちせき)

99日=重陽(ちょうよう)

五節句はもともと中国から伝わった考え方なのですが、「端午の節句」なんて言葉は今でもよく聞かれますよね。

人びとの暮らしが少し豊かになった江戸時代後期には、庶民の間に五節句が広まり、節句の日には豪華な料理をふるまってお祝いするようになりました。のちに、新年の節句が1年で最も大切なことから、正月料理のみを「おせち」と言い習わすようになった、と考えられています。

━━その起源をさかのぼると、おせちは1000年以上もの長きにわたって受け継がれているんですね。

「おせち料理」をお正月に食べる理由

━━家庭でお正月におせちを用意するのはどうしてですか?

時吉:毎年、家に年神様(としがみさま)をお迎えするためといわれています。

年神様とは、正月の間に訪れるとされる神様で、豊作の守り神、祖霊と考えられています。

正月を迎えるにあたって、松飾りや鏡餅などを用意しますよね。それも、年神様を迎えるための準備なんです。

おせちはこれらに連なるもので、年神様にお供えするための大切な料理なのです。

古来、日本には神様にお供えしたものを人が食べることで神の恩恵をいただく「神人共食(しんじんきょうしょく)」という考えがあります。年神様にお供えしたおせちを家族で分け合って食べることで、その年が豊作であるように、そして健康でいられるように……と願っていたんですね。

━━単に新年を迎えておめでたいからというわけではなく、神様へのお供えとして作る意味があったんですね!

時吉:そして、おせち料理をいただくときに忘れてならないのが「祝い箸」です。

神聖な木とされる柳の木から作られ、両端ともに細くなっていることから、“柳箸”“俵箸”“両口箸”などとも呼ばれます。

よく紙の箸袋に入っているものが売られていますよね。箸袋に家族それぞれの名前を書いてお使いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

祝い箸の両端が細くなっているのは、一方は年神様が使い、もう一方を人が使う「神人共食」を表しているからと言われています。なので、決して、逆さにして取り箸などに使ってはいけないんです。

━━両端が細くなっているのは、神様と人が一緒に食事するという意味があったんですね。おせちの由来や意味を知ると、普段使っている箸ではなく、特別な「祝い箸」でいただきたいなと思いました。

おせち料理が、作り置き可能なのはなぜ?

━━おせちにはさまざまな料理が詰められますが、作り置きできる料理が多いのはなぜでしょうか?

時吉:日本には古くから、あらゆるものには神が宿るとする考えがあります。台所にはかまど神が宿ると考えられていて、正月の間はかまど神もお休みいただくために、煮炊きを控えると、いうことですね。

ほかにも、普段忙しい主婦の方が、正月の間くらいは水仕事をせずに済むように……という説もよく聞かれます。いずれにしても火の使用を控えるわけですから、日持ちさせるために煮たり酢でしめた料理などが中心となっているんです。

中でも、おせちに欠かせない「煮しめ」は、煮汁がなくなるまで時間をかけて煮込んでいくお料理です。

いろいろな食材をまとめて煮込む方もいらっしゃるかと思いますが、食材ごとに、それぞれ別々に煮ることで、濁りのない美しい色合いの仕上がりとなりますよ。

━━手間はかかるけれど、おせちは年神様に食べていただくもの……と思うと、そのひと手間を惜しまずに作ってみたいなと思います。

時吉:筑前地方(福岡県の北西部)の郷土料理「筑前煮」のように、煮しめだけがすべてではありませんし、ご家庭ごとに味付けも異なります。

もちろん今は、デパートなどで購入する方もいらっしゃるでしょう。ご家族の人数や生活スタイルによって自由に楽しめるのがおせちです。なによりも、神を敬い、家族が健やかに過ごせるよう願う気持ちを大切にしてくださいね。

 

今回は、時吉真由美さんにおせちの由来について教えていただきました。おせちは、私たちと年神様とをつなぐ大切な食事であり、神を敬う心の表れでもあるんですね。“お正月といえばおせち”と当たり前のように食べがちですが、その由来や意味を知ることで、より味わい深くいただけるような気がします。

次回は、いざとなると悩ましい重箱への詰め方や、食材の意味などをご紹介します! こちらもぜひご覧ください。


【取材協力】

料理研究家 時吉真由美

(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIPMOCO’Sキッチン」「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍中。

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