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大晦日に「年越しそば」を食べるのはなぜ?いつ食べるのが正解?【知っておきたい食の歳時記】

大晦日は、お店や家で「年越しそば」をいただく方が多いのではないでしょうか。年末の風物詩であり、なじみ深い習慣のひとつですね。でも、なぜ大晦日にそば? そばを食べる時間はいつが正しい? など、疑問に思ったことはありませんか。
知っているとちょっと楽しい「年越しそば」の由来や素朴な疑問について、料理研究家・時吉真由美さんに教えていただきました!

「年越しそば」の始まりはいつ?

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年越しそば 始まり

━━江戸時代には、庶民の間で大晦日にそばを食べることが定着したといわれていますが、そもそも、大晦日にそばを食べるようになったのはなぜなのでしょうか?

時吉真由美さん(以下、時吉):その由来は諸説あるようです。

1.“みそかそば”の習慣から

江戸時代、商人たちにとって締めとなる月末(晦日)は夜遅くまで忙しく、夜食にそばを食べる“みそかそば”という習慣があったことから、12月の晦日(=大晦日)も、そばが食されるようになったという説。

2.そばは財を集める「縁起物」だから

金箔師が、飛び散った金銀の粉を集めるために、そば粉を打って伸ばしたもので吸着させていたという話にちなみ、そばは「金銀を集めてくれる縁起物」となったとする説。

3.一年の「けがれ」を落とすため

そば殻を焼いた灰で、使い古した器を洗うと長年の汚れがよく落ちることなどから、旧年の「けがれを落とす」と考える説。

4.長寿祈願のため

そばは細長く、よく伸びることから、長寿を祈願して食べられるようになったという説。

5.災厄を断ち切るため

そばが切れやすいことから、一年の災厄を断ち切ると考えられている説。

6.そばの強い生命力にあやかるため

そばは生命力の強い植物で、風雨にさらされても日光を浴びると元気になります。この強さにあやかり、強く健康でいられるようにと願い食されるようになったという説。

 

こんなにさまざまな説があります。こうしてみると、縁起や験を担ぐものが多いですね。食べ物と人びとの願いが、いかに密接であるかが分かります。

食べる時間は決まってる?年越しそばは、いつ食べるのが正しい?

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年越しそば 時間

━━年越しそばは、縁起を担いで食べられるものだと分かりましたが、年越しそばを食べる時間って、決まっているのでしょうか?

時吉:明確な時間は決められていません。お昼にお店で食べる人、除夜の鐘の音を聞きながらご家庭でいただく人……それぞれお好きなところでお好きな時間にいただいていいと思います。

ただ、由来のひとつに「年越しそばを食べることで一年の災厄を落とす」とあることから、年をまたがないうちに食したほうがいいという考え方があります。年をまたぎながらだと厄を引きずってしまうんだそうです。

地域によっては、大晦日以外の日に年越しそばを食べる習慣もあるようですよ。

━━調べてみると、福島県・会津地方には、「餅蕎麦ごっつぉ(餅と蕎麦のご馳走)」という言葉があり、お餅と同様にそばもご馳走とされていて元日に食べるご家庭もあるようです。

そのほか、新潟県には114日にそばを食す「十四日そば」という風習があるそうです。かつては大晦日も農繁期だったため、115日の小正月を本正月とし、その前日の114 日を大晦日とみなしておそばを食べていたんですね。

時吉:そばそのものの扱いや、どこに一年の区切りを置くかによって食べる日が異なるのはおもしろいですね。

そばの代わりに“年越しうどん”でもOK?

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年越しそば うどん

━━一般的にはそばを食べるご家庭が多いかと思いますが、似た形状のうどんを使って「年越しうどん」にしてもいいのでしょうか?

時吉:「年越しうどん」でもOKだと思いますよ。

実際にうどん県で有名な香川県では、大晦日にうどんを食すご家庭も多いようです。

大切なのは、その日に食べることにどのような意味があるかを意識することです。

前述の年越しそばの由来だけでなく、のせる具を見ても、縁起を担いでいるものが多いんですよ。例えばお稲荷さんが好きな油揚げは商売繁盛を、天ぷらやかき揚げなどに使われる海老は腰が曲がるまで……と長寿を願う、縁起のいい食材だといわれています。

我が家の「年越しそば」には、エビの天ぷらや青菜のほか、 “なると”をトッピングしています。赤色は正月にお迎えする年神様の目印になると教わりました。以来、年越しそばには必ず入れている食材です。

━━赤色は、年神様がやってくる時の目印となる色なんですね! 我が家でも赤色の具材を積極的に入れていきたいと思います。

 

「年越しそば」には、次の年が健やかに過ごせるようにと、様々な“願い”が込められていたんですね。

2020年は、予測のつかない事も多く、イレギュラーな対応を迫られたストレスの多い一年だった方も多いはず。改めて、来年がよい年となるよう願いながら、ゆっくりと年越しそばを食べてみませんか。


【取材協力】

料理研究家 時吉真由美

(株)Clocca代表取締役 cooking Clocca代表
土井勝料理学校をはじめ各地の料理教室講師のほか、「ZIPMOCO’Sキッチン」(放送終了)「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」などTV・出版物等のフードコーディネートや、料理、レシピ制作などで幅広く活躍中。

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