「玉ねぎ」は北海道産が主流!「紫玉ねぎ」は海外産も人気
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まずは、「玉ねぎ」と「紫玉ねぎ」の産地に違いはあるのでしょうか?
「基本的には、どちらも日本全国で作られていますが、やはり一般的な玉ねぎの方が圧倒的に流通量が多く、産地も広範囲です。なかでも代表的な産地は、北海道、佐賀県、兵庫県(淡路島)などで、北海道は全国生産量の半分以上を占めています。
紫玉ねぎも同様の地域で栽培されていますが、生産量は限られていて、兵庫県の淡路島、和歌山県、有機農家の少量生産などが主流です。海外では、アメリカ、中国、オランダ、ニュージーランドなどから輸入されており、海外でもポピュラーな野菜なんですよ」(以下「」内、FUKAさん)
やはり、玉ねぎ王国は北海道! 紫玉ねぎは海外でも人気なのですね。
「玉ねぎ」は加熱で甘くなり、「紫玉ねぎ」は生でも甘い
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さらに、この2つは同じ玉ねぎでも味には結構差があるとのこと。
「普通の玉ねぎは辛味が強く、加熱することで甘味が引き立つのが特徴です。そのため、生で食べると辛く感じる人も多いと思います。
一方で、紫玉ねぎは辛味が少なく、ほんのりした甘味とさわやかさがあって、生食に向いた味わいです。加熱しても甘くなりますが、あえて生で食べることで、独特の食感や香りを楽しめます」
確かに普通の玉ねぎは、甘味を出すベースにもよく使われますが、その際はじっくり炒めることが必須ですね。生食する際は、水にさらすなどして辛味を抜く必要があります。
紫玉ねぎの栄養成分「アントシアニン」に注目!
null「玉ねぎ」と「紫玉ねぎ」の栄養素の違いはありますか?
「どちらもビタミンCやカリウム、硫化アリルなどの成分を含んでいて、血液サラサラ効果や抗酸化作用がある点は共通しています。

”アントシアニン”は紫色の野菜に共通する成分。
ただし、紫玉ねぎには“アントシアニン”という色素成分が含まれていて、抗酸化作用がより強いのが特徴です。アントシアニンは目の疲労回復をはじめ、血流の改善など、多くの健康効果が期待されています」
まさに2つの玉ねぎの色の違いは、このアントシアニンによるもの。アントシアニンはポリフェノールの一種で、ブルーベリーやなすなどの紫色も同様だそうです。
「アントシアニンは水に溶ける色素のため、酸性で赤色、アルカリ性で青色になる性質を持っています。そのため、酢やレモン汁など、酸性の食材と一緒に調理するとピンクっぽくなり、卵白やかんすいを含む中華麺など、アルカリ性の食材と反応すると青っぽく変化します。酢やレモン汁を使ったサラダやマリネにすると、より色が鮮やかに発色するのはそのためですね」
血液サラサラをはじめ、玉ねぎの栄養効果は有名ですが、紫玉ねぎのアントシアニンにも要注目ですね!
玉ねぎは「飴色玉ねぎ」に、紫玉ねぎは「酢玉ねぎ」に
nullそれぞれ調理法によって味が異なるので、ぜひ適した料理を知りたいです。どのように使うと美味しく使い分けできるのでしょうか?

じっくり炒めた飴色玉ねぎは極上の甘さ。
「普通の玉ねぎは加熱することで辛味が抜けて甘味が増すので、炒め物、煮物、スープ、カレー、オニオングラタンスープなどの加熱した料理が最も適しています。
特にじっくり炒めて甘味を引き出す“飴色玉ねぎ”は、旨味がギュッと凝縮されて、カレーやハンバーグのソースに欠かせません」

酢玉ねぎは使いやすく、保存にも便利。
一方、紫玉ねぎは辛味が少なく、食感もやわらかいので、彩りを活かすなら生食がおすすめとのこと。
「例えばサラダ、マリネ、ピクルス、バインミー(ベトナム風サンドイッチ)やサンドイッチの具材など。
軽く塩もみしてから水にさらすと、さらに食べやすくなります。もちろん、炒めたり焼いたりしても美味しいのですが、加熱すると色が抜けてしまうので、生食の方が見た目も鮮やかできれいですね」
ちなみに、FUKAさんは紫玉ねぎで作る「酢玉ねぎ」を常備しているそう。作り方はとっても簡単で、薄切りにした紫玉ねぎに、好みの酢とはちみつを加えるだけ。
冷蔵で2〜3週間保存でき、サラダにプラスすると栄養や食感も加わり、目にも華やかに。納豆に入れるのもおすすめだそうです。
玉ねぎは約1カ月長持ち。紫玉ねぎは冷蔵保存が必須!
nullちなみに、紫玉ねぎはスーパーなどでよく冷蔵の棚で売られていることが多いですが、保存法や保存期間に違いはあるのでしょうか?
「そうなんです。実は意外と違いがあります。
玉ねぎは水分が少なく、皮もしっかりしているため、風通しの良い冷暗所で常温保存が基本で、ネットに入れて吊るしておくのが理想的。正しい保存法なら、1カ月以上持つこともあります。
一方、紫玉ねぎは水分が多くて傷みやすく、皮も薄いため、冷蔵庫の野菜室で保存するのが必須です。そのためスーパーでも冷蔵スペースで販売されていることが多いですよね。保存期間は1週間〜10日と普通の玉ねぎよりも短めです。
カットした後は、どちらもラップや密閉容器に入れて冷蔵して、早めに使い切るようにしましょう」


同じ玉ねぎでも、保存法や保存期間には思った以上に差がありました。最近の日本の夏は30℃以上の日が多いので、常温でも高温になる場合は、普通の玉ねぎも夏場に限っては冷蔵保存の方が安心かもしれません。
収穫後すぐに出荷されているものが「新玉ねぎ」だった
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最後に、玉ねぎと紫玉ねぎに加えて、「新玉ねぎ」は何が違うのでしょうか?
「新玉ねぎは、通常の玉ねぎと同じ品種ですが、保管せず、収穫後すぐに出荷されています。
普通の玉ねぎは収穫後に1カ月ほど乾燥させてから出荷されますが、新玉ねぎはこの乾燥工程を省いているため、皮が薄くてやわらかく、水分が多くてみずみずしいのが特徴です。
そのため、辛味が少なく、生食に向いています。ただ、水分が多い分、日持ちは短く、目安は約1週間で、冷蔵保存が必須です。
日本では3〜5月に旬を迎え、春に店頭に出回ります。薄くスライスして水にさらし、かつおぶしとポン酢でシンプルに食べると絶品ですよ!」
新玉ねぎは品種ではなく、出荷工程の違いによるものだったのですね。
普段よく使う野菜の代表格である玉ねぎは、使い方のコツを知っておくと、賢く使い分けできそうですね! ぜひ、FUKAさんのアドバイスを参考に美味しく調理してみてください。
取材・文/岸綾香

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