ティーパーティーのマナーを覚えよう
null17世紀半ば頃、英国では王族や貴族たちの間で、紅茶を楽しむ習慣が始まりました。その中で発展していったのが、紅茶を主役にした「ティーパーティー」。貴族階級から、次第に中産階級へと広まっていき、今もその伝統は大人の社交場として受け継がれています。
貴婦人たちは、友人として親しくなる前に「どのようなご婦人なのか」「自分とは仲良くなれそうか」など、相手のことを知る第一歩として、ティーパーティーで紅茶と会話を楽しみながら見極めていたようです。
現代では、仲の良い友達同士でおしゃべりを楽しむ場として、さらにカジュアルにティーパーティーが催されています。難しいルールはありませんが、ちょっとしたマナーを身につけておくと、さらに楽しい会にすることができるはず。
今回は、みんなでお茶を楽しむ場「ティーパーティー」についてご紹介します。
「テーマ」を決めておもてなしをする
nullティーパーティーを楽しむには、その日の集まりに「テーマ」を決めるのが良いのだそう。
「たとえば、“桜”や“バレンタイン”など季節に関するものや、“不思議の国のアリス”や“赤毛のアン”など、好きな物語や人物をイメージするのもOK。“手作りのケーキを味わってもらう”、“おいしいお土産のスイーツをみんなでいただく”、などでもいいですね」
テーマを決めたら、その日のテーブルセッティングもぜひ、テーマに合わせたものに。招かれた側もテーマに合わせた装いで訪れるなどして、パーティーを楽しみましょう。
今回は、立川さんの大好きな「バラ」をテーマに、とても優雅な演出をしてくださいました。
「パーティーにお呼びする人数は4〜6人くらいがちょうどいいですね。何度も席を立ってお湯を沸かしたりお茶を足したり、主催者が忙しくしていては、お客様は落ち着きません。主催者はなるべく席を立たないのがマナーです。
あまり席を立たずに済むように、紅茶は多めに用意しておきましょう。少し大きめのポットを用意して、4人なら6人分、6人なら8人分など、おかわりに備えて2人分くらい多めに紅茶を淹れておきましょう」
テーマを決めたら、招待状やメールでお客様をお誘いします。来訪する側は、できるだけ早く、参加のお返事をしてくださいね。
準備に必要な4つのアイテム
null心を込めた演出をすれば、紅茶はより一層おいしくなり、会話も弾みます。ティーテーブルのセッティングのポイントは、「使いやすさ」「清潔感」「心地よさ」「季節感」。当日は、ティーポット、ソーサー、カップなど基本のものに加え、以下のものを準備しましょう。
(1)テーブルクロス
テーブルには清潔なクロスをかけます。バラがテーマならピンク色やバラ柄のクロスにするなど、テーマに合わせて色や柄を選ぶと、気の利いた素敵な演出ができますよ。
逆に、使用したい茶器が華やかな場合は、クロスは白や麻のレースなどあえてシンプルなものを選んで、茶器が目立つようにするといいですね。
(2)ティーナプキン
20〜25cm四方のレースや刺繍の施されたナプキンを用意します。三角形に折り畳んでケーキプレートの上に乗せたり、プレートの左側にセットしたりして使用します。布ナプキンがない場合は、きれいな紙ナプキンで代用してもOK。
(3)テーブルフラワー
季節感のある花で、紅茶の香りを邪魔しない、あまり香りの強くないものを選ぶようにしましょう。会話を遮らないよう低く生けて、どの席からも美しく見えるように飾るのがポイント。写真のように、陶器の花を飾るのもいいですね。
(4)お菓子類
紅茶に合うお菓子を用意します。主なメニューはスコーン、タルト、パイ、パウンドケーキ、ビスケットなど。その日に淹れる紅茶のフレーバーに合わせてチョイスしてみてください。
ティーパーティー当日は、参加者はあまり豪華な手土産は持っていかないほうが◎。
「お菓子は主催者が用意してくれているので、それよりも豪華なものを持参すると、主催者よりも目立ってしまいます。常温で保管できる賞味期限が長めの焼き菓子や、家の庭に咲いているお花など、相手が恐縮しない手土産のほうがスマートです」
勝手に紅茶を飲んじゃダメ!? おかわりする時はソーサーごと
null紅茶のサーブは、主催者がするのが基本。参加者が勝手にポットに手を伸ばすのはマナー違反です。
「紅茶は主催者がサーブします。好みの濃さを伺って調節したり、お菓子を取り分けたり、お客さまにゆったりと寛いでもらえる空間を演出しましょう。
主催者の右隣が主賓席なので、誕生日パーティーなどお祝いをする特別な方がいる場合は、主催者の右隣に座っていただきます。ティーパーティーでは、人の噂話や自慢話、政治、宗教などの話はタブー。普段よりも品のある会話を心がけて」
紅茶をいただく時は、ハイテーブルならカップだけを持って、ローテーブルの場合は、膝にナプキンを敷き、ソーサーごと持って飲みます。
「紅茶のおかわりをする際は、座席に座ったまま、ティーカップをソーサーごと主催者に渡しましょう。紅茶を注いでもらっている間は、手はテーブルの上に添えて待つのがいいですね。主催者と席が遠い場合は、ティーカップをソーサーごと隣の人に渡して、主催者まで送ってもらいましょう」
時間はティーパーティーなので、約3時間程度にしておきましょう。ダラダラとおしゃべりを続けて長時間過ごすよりも、おいしい紅茶と内容の濃い会話をしたほうが、優雅な時間を過ごせますね。
来訪者は紅茶の味やテーブルコーディネートのセンスの良さなど、感じたことを素直に主催者に伝えましょう。ヨーロッパでは、おもてなしをおもてなしで返すのがマナー。お礼の気持ちを込め、今度はあなたがティーパーティーを開催して、ご招待しましょう。
貴婦人の社交場であるティーパーティーの作法は、決して堅苦しいものではありません。紅茶とおしゃべりの時間をより楽しむためにあるものです。現代に通じる大人のマナーとして、ぜひ身につけておきたいですね。
次回は、これから暑くなる夏に備えて、おいしいアイスティーの淹れ方を紹介します!
【取材協力】
『Cha Tea 紅茶教室』
‘02年に開校。日暮里・谷中の代表講師・立川碧さんの自宅(英国輸入住宅)を開放してレッスンを開催。卒業生は2000人以上にのぼる。教室でのレッスンの他、早稲田大学オープンカレッジをはじめとする外部セミナー、紅茶講師養成、紅茶専門店のコンサルタントなど幅広く活動。著書に『図説 紅茶 世界のティータイム』(河出書房新社)、『紅茶のすべてがわかる事典』(ナツメ社)など多数。紅茶教室ホームページ http://tea-school.com/
撮影/横田紋子(小学館)
取材・文/岸綾香