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キャンプに、日々の食事に、おもてなしに!万能に使える「鉄鍋」をマスターしよう

“鉄鍋”と聞くと、料理上手が特別なときに使うとか、お手入れが大変などというイメージをもつ人もいるかもしれません。実は、その逆! 基本の使い方とお手入れをマスターすれば、長く、さまざまなシーンで活躍する優れものなんです。鉄鍋に詳しいフードコーディネーターのみなくちなほこさんに、選び方から活用方法まで聞きました。

まずは、この1台。鉄鍋の選び方

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扱いやすいサイズを手に入れ、鍋の特徴をマスターしてゆこう。写真は、みなくちさんも愛用する、アメリカの老舗メーカー『ロッジ』の「サービングポット」と「スキレット」。

鉄鍋をまず一つ選ぶなら、サイズは「8インチ(約20cm)」で「コーティングのないもの」がよいそうです。

「一般的な家庭のコンロで使うことも考えると、あまり大きいとスペースを取り、重くて扱うのも洗うのも大変です。おすすめは、2〜3人前が一度に作れる8インチ。

また、オーブンに鍋ごと入れたりキャンプでたき火にかけたりとマルチに使えるのは、コーティングのない鋳物です」(以下、「」内みなくちさん)

初めての鉄鍋におすすめの2台

「一つ手に入れるなら、両手鍋の『サービングポット』がおすすめです。直径が20cmほどのサイズなら500gの塊肉も調理でき、オーブンにそのまま入れやすい。しかも『ロッジ』のものは、同ブランドの8インチのスキレットに蓋がピッタリ。この2台を揃えれば、煮込み、揚げ物、蒸し料理、焼き物、炊飯と、さまざまな料理が作れますよ」

スキレットを蓋のようにかぶせても使える。

「ロッジ サービングポット 2QT」
9,680円(税込)

両手で安定して持ち運べ、蓋は「スキレット 8インチ」と共用できる。内径20cm2.88kgIH対応。

「サービングポット」の蓋がシンデレラフィット。

「ロッジ スキレット 8インチ」
3,960円(税込)

その厚みで、ステーキ、餃子、ハンバーグなど、さまざまな焼き料理に。内径20.2cm1.49kgIH対応。

使い方の5つの基本

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厚い鋳物で出来ている鉄鍋は、使うときにちょっとしたコツがあります。ここでは、その5つの基本をご紹介。

(1)温めてから使う

鉄鍋は、温まるのはじっくりだが、一度温まると蓄熱性が高いのも特徴。

鉄鍋は、まず中弱火でじっくり温めます。そして、手をかざして「温かい」と思ってから油を入れ、なじませましょう。このとき、底面だけでなく、両サイドにも油をゆき渡らせます。

「人のお肌と一緒。手のひらで温めながら化粧水をつけると肌がよく潤うと思います。鉄鍋を使うときも、大事なのは“まず温めること”と“油をよくなじませること”です」

(2)油と鉄鍋がなじんでから食材を入れる

食材を入れてもよい合図。

入れた油に、水たまりのような模様ができたら食材を入れる合図です

「食材を入れたら、お肉やお魚を焼く場合はジューッという音がするか確認してください。音がしない場合は、温めが弱いのかもしれません。しっかり温めてから食材を入れることで、食材がくっつきにくく、火の入りも速くなります」

(3)調理ツールは、耐熱性のものを使う

木製の場合も、目を離すと柄が焦げる場合があるので注意。

プラスチック製の調理ツールは溶けてしまうので、使わないこと。

「ガリガリ擦るのには強いので、金属製の調理ツールでもOKです。私は、耐熱性のシリコンのものや、木製のものなどを使っています」

(4)加熱中と加熱後に持つ場合は鍋つかみを忘れない

別売りのハンドルカバーなどもあるので、チェック。

蓄熱性の高い鉄鍋は、ハンドルや蓋などがとても熱くなります。

「鉄鍋は重いので“振る”という動作はありませんが、調理をするときに柄をつかみます。必ず、鍋つかみ、乾いたふきん、キャンプなら軍手を二重にするなど、素手で触らないよう気をつけてください

(5)テーブルに置くときは鍋敷きを

こちらはコルクで出来た鍋敷き。

底面も、同じくとても熱くなるので、鍋敷きも必須。

「そのまま食卓に出しても映える鉄鍋ですが、布や木製の鍋敷きは焦げることもあるほど熱くなります。テーブルに直接置かないように気をつけて」

鍋任せで完成!お手軽なのに豪勢なレシピ

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鉄鍋を使う準備が整ったら、さっそく調理してみましょう。今回は、ファミリーキャンプはもちろん、おもてなしでテーブルに出せば歓声が上がりそうな2品を教えていただきました。

鉄鍋料理のよいところは、鍋に任せれば出来て、完成したときに自分の実力以上の出来栄えになること。蓋をすれば、蓋も蓄熱してオーブンのように上からも加熱するので、火の入りが早く、旨みがギュッと詰まったおいしさに仕上がりますよ

サービングポットでつくる「ローストポーク」

お肉なら、鉄鍋はとくに塊肉の調理が得意なのだとか。

「煮るにも焼くにも、早く火が通るので薄切り肉やひき肉より塊肉を調理するのがおすすめです。豚肉に下味をつけて20分ほど焼いたら、にじみ出た脂で根菜類もジューシーに仕上げましょう。野菜は皮付きのまま使うので、よく洗ってくださいね」

お肉はおいしさを逃さずジューシーな仕上がりで、根菜類は甘みがグッと引き出されてホクホク!

<材料(3人分)>

  • 豚肩ロース肉 500g
  • 塩 小さじ1(肉の重さの約1%)
  • エルブ・ド・プロバンス 小さじ1/2
  • お好みの根菜類(今回は、ジャガイモ、サツマイモ、ニンジン) 各適量
  • オリーブオイル 大さじ1

<作り方>

  1. 豚肉は、塩とエルブ・ド・プロバンスをふり、全体によくすり込む。野菜は、ひと口大に切る。
    ※エルブ・ド・プロバンスはなくてもOK。
  2. サービングポットを熱し、オリーブオイルを入れてよくなじませる。
  3. 1の豚肉を入れ、全体に焼き色がつくように焼く。
  4. 蓋をして弱めの中火で20分加熱する。
  5. 1の野菜を肉の周りに並べ入れ、蓋をしてさらに20分焼く。
  6. 金串(または竹串)を豚肉に刺して抜き、透明な肉汁が出てきたら出来あがり。血の滲む汁なら、さらに5分ずつ焼いて様子を見る。

スキレットで「洋風炊き込みごはん」

ごはんも、ふっくらおいしく炊けます。蓋がない場合は、アルミホイルをぴったりとかぶせて加熱しましょう。

「具材のお肉をゴロゴロ大振りにすれば、ちょっとしたおかず感覚。鶏肉は、シーフードなどお好みの具材に変えても。また、冷凍のミックスベジタブルを使っても彩りよく出来あがります」

鶏肉は大振りにカットすると、食べ応えが出る。

<材料(スキレット 8インチ、3人分)>

  • 米 1.5合
  • 鶏もも肉 150g
  • パプリカ 1/4個
  • グリーンピース 大さじ1
  • 野菜ブイヨン 1パック(5g)※コンソメ1キューブでも可、その場合はよく砕いて加える
  • エルブ・ド・プロバンス 小さじ1/2(なくてもよい)
  • 塩 少々

<作り方>

  1. 米は洗って浸水する。鶏もも肉は2~3cm角に、パプリカはあられ切りにする。
  2. 米の水気をきってスキレットに入れ、1の鶏もも肉、パプリカ、他の材料全てを入れて蓋をする。
  3. 中火にかけ、蓋の隙間から湯気が出てきたら弱火にして約10分加熱する。
  4. 火を止めて5分ほど蒸らす。

基本のお手入れ

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おいしく食べたら、お手入れです。鉄鍋は、使うごとにこの5ステップを踏むだけ。

(1)汚れを拭き取る

拭き取るときはまだ鉄鍋が熱いので、やけどに注意しよう。

キャンプでは、洗い物をする前に、まず「拭き取る」。そうすることで、大量の水を使ったり洗剤をたっぷりつけて洗う必要がなくなります。

「地球環境を考えるという意味でも、汚れは不要な布などで拭き取りましょう。お鍋が、まだ温かいうちに拭くと取れやすいですよ」

(2)粗熱がとれてからタワシで擦る

タワシは、昔ながらの天然素材のものがおすすめ。

熱いうちに冷たい水をかけると鍋肌によくないため、荒熱がとれてから40度くらいのお湯で洗います。このとき、出来れば洗剤は使わず洗います

「鉄鍋は、程よい油分が残っているほうがよい状態を保てます。ですから、洗剤でピカピカにする必要はありません。大まかな汚れを拭き取ったら、食器洗いで使うぐらいの温水で、タワシで擦ります」

(3)軽く拭き取って、火にかけて水気を飛ばす

拭き取るのはふきんでもOK。

全体がきれいになったら、水気を拭き取ります。

「ゴシゴシ擦ると油膜が取れるので、軽く拭くのがポイントです。その後、火にかけて水気をしっかり飛ばしてください

(4)油を薄く塗る

このときの油は、あくまでお手入れ。バターやごま油など香りの強いものやクセのあるものは使わない。
鍋の裏側にも塗る。

鍋肌が触れられる程度の温かさになったら、不要な布やキッチンペーパーなどに油をしみ込ませて塗ります。

「これは、さび防止のお手入れです。温かくなったところに、鉄鍋の色が変わるぐらいの、ほんの少しの油をなじませます。使うのはサラダ油でOK

(5)10秒ほど火にかける

このステップは飛ばしてもよいが、火にかけることでより油がなじむ。

ほんの少し火にかけて、さらに油をなじませます。

「面倒なら余熱でもいいけれど、私は10秒ほど火にかけて、油をよりなじませます」

お手入れは、たったこれだけ。5分もあれば出来てしまいます。

長期間使用しない場合の「保管方法」と「さび」対策

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新聞紙のインクが気になる人は、荷物に入っていた緩衝材の紙で代用しても。

では、長期間使用しない場合は?

「水気を避けたいので、内側に丸めた新聞紙を入れて外側も新聞で包み、保管します。出来れば、風通しのよい場所にしまっておくのがベターです」

さびた部分を軽く擦る。

長期間使わず、さびさせてしまったという人もいるかもしれません。「さびても大丈夫。鉄鍋は、失敗をちゃんと許してくれる、心の広〜い鍋です」と、みなくちさん。

「さび=カサブタと思ってください。剥がしてお薬(油)を塗れば、鉄鍋はちゃんと復活してくれますよ。

乾いたタワシ、くしゃくしゃにしたアルミホイル、金属製のヘラなどで、さびを削り取ってください。そして、軽く水洗いして拭き取り、温めて水気を飛ばしたら油を薄く塗ってなじませます。このとき、一度に全部のさびが落ちなくても大丈夫。何度か繰り返せばきれいになりますよ」

煮込み、揚げ物、蒸し料理、焼き物、炊飯と、あらゆる料理に活躍する鉄鍋。使えば使うほど、使い慣れ、なじんでいきます。

「わが家では、毎日ごはんを炊いたりスープをつくったりと、あらゆる料理で活躍しています。厚い鋳物だからか、鉄鍋で炊くと同じごはんも、さらにピカピカおいしく炊けるんですよね。どうぞ気軽に鉄鍋のある暮らしを楽しんでみてください!」

 

【取材・レシピ協力】みなくちなほこ(キッチンボタン)

ニイミユカ
ニイミユカ

兵庫県出身、浅草在住。一児の母。主に食や体のことなど、生活にまつわる地に足のついた企画を、雑誌や書籍、WEBメディアなどで編集・執筆する

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