子育て世代の「暮らしのくふう」を支えるWEBメディア

「バックパック」の正しい洗い方って?長く愛用するための5つのコツを、老舗バッグメーカーに聞きました

両手があいて動きやすく、たくさんの荷物を背負っても体が楽な「バックパック」。お子さんや子育て世代のお出かけに欠かせない存在ですが、お手入れしたことはありますか? せっかくなら、正しい使い方やお手入れ方法を知って、もっと長く愛用しましょう!

今回は、アメリカの老舗バッグメーカー『GREGORY(グレゴリー)』ブランドディレクター・中島健次郎さんに、バックパックをより長持ちさせる方法を教えていただきました。

コツ1:体にフィットさせて背負う

null

まずは、基本のキ。背負い方にも長く愛用するためのコツがあります。

「バックパックは、2本のショルダーベルトや、アイテムによっては腰にも重さを分散するウエストベルトがついています。これらを正しく背負うことで、体にもバックパックにも負担がない状態で使えるんですよ」(以下「」内、中島さん)

本格的なアウトドア用バックパックや、容量(中に入る量)が大きいものは、ウエストベルトがついている場合が多いです。

「おんぶをイメージしてみてください。おんぶされる人が、足もギュッと絡めてくれるのと、足をダラッと下ろしたままにするのとでは、重さの感じ方が違いますよね。

ショルダーベルトやウエストベルトは、自分の体にフィットするよう長さを調整し、バックルがある場合は留めましょう。また、ショルダーベルトは、ちゃんと2本で背負います。どちらか片方で背負うと、一カ所に荷重がかかり、ベルトへの思わぬ負担が増す原因になります」

コツ2:頻繁に使うなら定期的に休ませる。時々使う場合も定期的に点検する

null

通勤や通学に使う場合は特に、荷物を入れっぱなし。さらに、ずっとそのバックパックだけ使うという人が多いかもしれません(記者も、その一人!)。

「靴と同じで、バックパックも毎日使っていると、汚れや汗などでくたびれていきます。おすすめは、休日に中身を全て出し、汚れや傷みがないか点検。風通しのよい場所で陰干しして、汗や湿気を乾かし、別のバッグに荷物を入れ替えて休ませる使い方です」

夏場や子どもは、バックパックの背中が接する面(背面)が、気がつくと汗でびっしょりということも。

夏場などは背面が汗でびっしょり、梅雨時は雨でバッグ全体がしっとり……などということも。靴も3足くらいを代わる代わる履いたほうが長持ちするといいますが、バックパックも一緒なのです。

では、登山やキャンプなど、フィールドで使う本格的なバックパックの場合は?

「毎日使うものではありませんが、命を守る大切な道具です。荷物を全て出した後、汚れや傷みがないかすみずみまで点検。ちゃんとメンテナンスをしてから保管します。その上で、次に使うまでしまったままではなく、定期的に全体の様子を見て、必要があればメンテナンスをしてください」

コツ3:湿気は大敵!収納は「見せる」がベスト

null

長い期間使わない場合、クローゼットや押入れ、収納ボックスなどにしまうという方もいますよね。でもこれは、日本の住環境を考えると避けたほうがいいのだとか。

「四季のある日本は、気温差や湿度の変化などが大きく、どうしても湿気がこもりがちです。埃などがつくのを防ぐため、お手入れをした後でビニール袋に包むという方もいらっしゃいますが、これも湿気がこもり、生地が劣化したりカビの原因になるのでやめましょう」

収納ボックスにしまうなら、格子状になっている通気性のあるものへ。また、乾燥剤をバックパックの中に入れておくのもおすすめです。

「一番いいのは、直射日光の当たらない室内で、フックに掛けて吊るしておく見せる収納です。この場合も、定期的にバックパックを点検して、様子を見てくださいね」

コツ4:使った後はお手入れする

null

さてここからは、バックパックをお手入れしていきます。毎日使うものから本格的なアウトドア用まで、全てのバックパックに共通する方法はシンプル。

まずは、デイリーにできるケアからご紹介します。

【用意するもの】

お手入れに使うグッズは、100円均一でもそろいます。

・洋服用ブラシ(毛が柔らかいもの、100円均一のナイロン製のものでもOK)
・小さめのブラシ(歯ブラシでもOK)
・タオル
・洗濯用液体洗剤 ※洗う場合にのみ使用

【基本のお手入れ】

ポケットも全て開けて、中をチェック。小銭や食べかす、枝など思わぬものが入っていることも。

1)荷物を全て出し、全体を点検する。

「ポケットの中にものが入っていないか、汚れはないか、傷んでいる部分はないかなど、しっかり確認してください」

2)風通しのよい場所で陰干しをして乾かす。

「背面の汗や、土や泥汚れを乾かします。土や泥汚れはブラッシングで落とすのですが、湿ったままこすると生地に入り込んで落ちにくくなってしまいます」

生地の傷みにつながるのでゴシゴシこすったり、堅いブラシを使うのは控えましょう。

3)洋服用ブラシで優しくブラッシングする。

「土や泥汚れ、カビ、埃などがついている場合は、その箇所だけ優しくこすってください。強くこすると、表面の加工が落ちたり生地そのものが傷んでしまいます」

生地の縫い目にも案外汚れが。

(4)縫い目部分やジッパーの周りなどは、小さめのブラシでブラッシング。

「案外、埃などがたまっています」

(5)ブラッシングしてもとれない汚れは、ぬるま湯で濡らし固く絞ったタオルで拭く。拭いたあとは、もう一度陰干ししてしっかり乾かす。

「きちんと乾かすのが基本です。湿ったままだと生地の劣化につながります」

コツ5:正しく洗う  

null

生地の表面に撥水加工が施されていたり、いろいろな素材が組み合わさっているバックパック。実は、洗いすぎないほうが、長く愛用するにはいいそうです。でも、汗のにおいが気になったり、基本的なお手入れでは落ちない汚れなどは、正しく洗って解決しましょう。

【基本の洗い方】

こちらがバックル。

1Tips4の「基本のお手入れ」をしたら、ジッパーはすべて開け、バックルもすべて外す。

記者のバックパックは、内側に品質タグがありました。

(2)品質タグで、使ってよいものや方法を確認する。

「バックパックにも、洋服のように品質タグが付いています。洗う前は必ず確認してください」

全体をしっかり浸け込みます。

(3)バックパック全体が浸かるよう、浴槽やタライなどに2530度くらいのぬるま湯を張る。洗剤を使う場合は少量を溶かし、バックパックを浸す。

「洗剤は使わなくても構いません。汚れがひどい場合やにおいが気になるなら、少しだけ使いましょう」

何度か押すと、細かな汚れやごみが浮いてきました。

(4)優しく押し洗いをする。

「バックパックの中にはフレームと呼ばれる金属製のパーツが使われている場合もあります。また、生地の傷みや形崩れにつながるので、捻ったり絞ったりする洗い方は避けたほうがいいですね」

記者は5〜6回、すすぎを繰り返しました。

(5)水を入れ替え、洗剤や汚れがなくなるまでしっかりすすぐ。

絞ると生地が傷む原因になるため、乾いたタオルを押し当て、拭き取ります。

(6)水気を切ったら、乾いたタオルで水気をとる。

(7)形を整え、風通しのよい場所で陰干しをする。

「洗濯物を風呂場など室内で乾かすという方もいるかもしれませんが、風呂場は特にどうしても湿気が溜まりやすい場所なので、外干しがおすすめです」

「濡れた靴を乾かすときのように、中に丸めた新聞紙を入れるのもおすすめです」

ジッパー類はすべて開け、ポケットは裏返しておく。

こういう場合は、洗っていいの?

「グレゴリー」のカジュアルラインには、革の引き手がついています。

バックパックに革のパーツが使われている場合があります。そもそも革は、洗ってよいのでしょうか?

「取り外し可能な場合は外します。難しい場合は、見えにくい場所で濡らして試してみるのも手ですが、基本的に革は水に濡れると変色や変質の原因になります。日々のお手入れを、まずはしっかりしましょう」

記者の8年もののバックパックは、内側に加水分解が起こっていました。

また、長く愛用していると、生地の裏側に剥がれやベタつきが見られるケースもあるかもしれません。記者のバックパックがまさにそれで……中島さん、こういう場合は、洗っても大丈夫でしょうか?

「生地裏側のコーティングに劣化があっても、手洗いは可能です。ただし、こすり洗いするとコーティングが変に剝がれたりするので、必ず押し洗いしてください。

バックパックの生地は、出来上がった時点から、使っても使わなくても少しずつ劣化していきます。だからこそ、ちゃんとお手入れしてなるべく長く使っていただきたいですね」

バックパックを、さらに気持ちよく使うには?

null
一日陰干しして、すっかり乾いた記者のバックパック。

こちらが洗い終わったバックパックです。心なしか生地に張りが出て、ふっくら。気になるにおいもありません。

「きれいになった状態で生地の撥水加工が落ちている場合は、生地に合った撥水スプレーを振ってください。その場合、バックパックから20〜30cmほど距離をとって、ゆっくり往復させながら全体に満遍なくスプレーします」

レインカバーをつけたバックパック。こんなふうに地面に転がしても、汚れにくく濡れにくいというメリットも。

また、専用のアクセサリーを活用するのも手。

「登山ではおなじみのレインカバーを、タウンユースしている方もいますよ。雨の日はもちろん、混雑した交通機関でかけて、周囲の人にジッパーやバックルが引っかからないようにするという方もいます」

大事な道具だからこそ、長く愛用したいもの。ちょっとしたコツを押さえて、これからも気持ちよく使いましょう!

 


【取材協力】

『GREGORY(グレゴリー)』ブランドディレクター・中島健次郎さん

グレゴリー

ニイミユカ
ニイミユカ

朝ランが日課の編集者・ライター、女児の母。目標は「走れるおばあちゃん」。料理・暮らし・アウトドアなどの企画を編集・執筆しています。インスタグラム→@yuknote

pin はてなブックマーク facebook Twitter LINE
大特集・連載
大特集・連載